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203538 journal

kahoの日記: 現世代シーケンサー雑感

日記 by kaho

後でもう少しまとめるつもりだが、覚え書き程度に。
2010年になって、第3世代と言われるシーケンサー(DNA解読機)の動向にも以前よりいろいろと変化がある。
現在の状況を簡単に言えばチャンピオンであるIlluminaに対してABが巻き返しを図り、Helicosが局地戦を仕掛けていると言えるだろうか。
Illuminaは最新のHiSeq2000でGenome Analyzerで築いた基盤をより強化している。余談だが成功したシリーズの名前を受け継いでGA IIIといった名称にしなかったのは、この分野が単なるゲノム解読にとどまらずに様々な応用分野を持つようになったためだと思われる。
これに対してApplied BiosystemsはSOLiD 4の導入でこれに対抗しようとしている。特にABが強調するのが解読した配列の精度が高いということで、疾患解析など精度が要求される分野での優位性を強調することで足場を築こうとしている。
また、Helicosはその手法(対象とする配列を増幅しない1分子解読)のため、エラーは原理的に多いのだが、PCRによる増幅を行わないためバイアスが入る余地が少なく、定量性が高いことを強調し、mRNAの観測などでの利点を主張することで生き残りを図っている。
また、pyrosequencingの先駆けであった454 Life Sciencesは、他の手法が20-70塩基の短い配列しか出力できないことに対して200-400塩基単位での解読ができることから、そのような性能が必要な分野では用いられるものの、他の陣営との正面切った競争はできない状況にある。

これとは別に、まだ製品となっていないPacBioのシーケンサーは、原理は誰もが感心するもののモノがいつまでもでてこない。また、全く違う原理を使ったnanoporeによるシーケンサーは、多くの人に応援されているにもかかわらず当初の発想にこだわりすぎて製品化に必要なブレークスルーが果たせないまま危うい状況にある。

個人的な感想を言えば、このままではIlluminaの独走状態が加速しそうな気がする。
ABがSOLiDに対してスループットを上げるために行うことのできる改善点はIlluminaの手法にそのまま適用できるから、両者の差はなかなか埋まらないし、あまり強調されないことなのだが、一定数の断片を読んだときにゲノム上の位置を特定するための計算コストがIllumina>AB>>Helicosだから、出力配列が増えれば増えるほど他陣営はコンピューター資源の方にも投資した上でシーケンサーにより高額のコンピューターをつけて販売しないと対抗ができない。
機械の販売台数がそう多くない特定分野ではスケールメリットが非常に強く働き、下手をすると独占状態にもなりかねない。
この状況があと1-2年でどうなるかは分からない(特にABが開発中の1分子シーケンサーがどうなるか)が、今のトレンドはIlluminaに強い追い風となっている。

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