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日記

ken_non_sumの日記： 幾清掃 4

日記 by ken_non_sum

今の家に住んで4年になる。
4年という歳月は短いようで長い。その間に星々は四巡し、赤子が足で歩いてことばを語るようになり、中学生が高校生になり、賃貸契約が2度更新され、未視聴の BD ボックスが16箱増える程度には。

*

この数ヶ月、床におがくずのような薄黄色のザラザラしたホコリが積もるのでずっと悩んでいた。ひどいときにはパルメザンチーズを盛ったような塊になっている。
そして、拭いても拭いても、拭いたそばから積もってゆく。
本当につい今しがた拭き取って、感触が消えたのを確認してからですら、数分後に戻るとまたザラザラしているという有様だった。
幾ら拭いても拭いてもきりがない。どれだけ掃除しろというのか。

家具を食らう虫が居ついてしまい、そいつがおがくずを撒き散らしている。考えられるとしたらそんなところだろうか。

しかし妙なところもある。
ボクは白蟻の巣食う家にお邪魔したことがあるが、あからさまに柱に穴が空き粉を噴いていた。虫にもいろいろあるかもしれないが、今の家の柱や梁、鴨居にも桟にも、そういう兆候はまったくない。元凶と思しき虫を目にすることもない。

ただ、拭き掃除をした直後に、清掃前と同じくらいザラザラ積もってしまうほど空気中にホコリが漂っていたら、喉をやられそうなものだが、室内の空気は澄んでいる。床はすぐザラザラになるのに机やベッドはほとんど汚れていない。このことから考えると、やはり、虫が床を這い回ることで床にのみおがくずが積もる、ということのような気がする。

なんにせよ、燻浄のような根本的対策は追って大家さんに相談するとして、さしあたっては、床に置いた物が木屑まみれになるのはたまらないので、床拭きをこまめにやるしかない。

我が家には掃除機はないので以下の道具立てで手清掃である。
今日の掃除では、これまで拭き取ったつもりで取れていなかっただけかもしれないと思い、いつも以上に入念に成果を確認した。

・コロコロ：もっとも多用する。しかし貼り付きがいまいち。
・モップ(「ワイパー」などと呼ばれるシート式)：ホコリの粒が重いからか吸着がやはりいまいち。
・雑巾：しっかり拭えば取れる。こまめにゆすぐ。

面倒だったが雑巾で床を水拭きする。やはりこれしかないかと、根気よく通り一遍拭ききった。しかし、はじめの場所に戻ってくると、あるではないか、山盛りになったおがくずが。それも柱のそばでも家具の脇でもない、床の真ん中である。

拭きもらしたか。いやそんなことはない。見落とせる量ではない。
では今噴いて出たのか。いったいどこから。床板の隙間からか。水拭きされて虫の奴がもぞもぞと起きだしたのか。
しかしついさっきまでずっとここに屈みこんで拭いていたのだぞ。足を置いた真下に潜んでいたとでもいうのか。

ん、待てよ、足。
自分の足を見る。足には、この家に来た次の日に近所の荒物屋で購入したスリッパが履かれている。最近底が剥がれかかっていたのでガムテープで貼り付けたばかりだ。

スリッパを脱いで、その剥がれかかった底の剥がれ目を少し開いてみる。

バサっと黄色い粉が宙に舞った。

*

4年という歳月は短いようで長い。その間に400万円の家賃が支払われ、乳飲み子がお子様ランチを喰らうようになり、幼稚園児が小学生になり、大学生が社会人になり、「俺の嫁」が32人増える程度には。そしてスリッパの中綿が加水分解する程度には。

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