kuremaの日記: ヘイトスピーチを禁じる国ではアファーマティブアクションを行うべきではない? 3
現代、多くの国で「言論の自由は尊重されるべき」との主張は受け入れられています。
しかし、一方で中国や他の独裁国家はもちろん、西側諸国であるヨーロッパ各国(ホロコースト否定の禁止等)・或いは韓国(死者名誉毀損罪を用いたもの)等でも言論の自由が大きく制限されています。
或いは人種差別撤廃条約を口実とした言論制限も多くの国で行われています(なおこの条約は国籍による差別を対象としません)。
各国各々の理由でそれを正当化し、かつ現状それらの言論制限下で行われた議論は有効な物として取り扱われています。
仮定の話として、極めて深刻な人種差別が存在し、私的な虐殺が広範に行われている様な場合等そのような言論制限は許容されるべきです。
即ち、言論の自由を制限されるべきと考えられる状況は想定し得ます。かつ、その場合当該国を処罰するのは妥当ではありません。
結果として、妥当性さえ証明できれば各国の恣意を持って言論の自由を制限できる、かつそのペナルティーは受けない、という結論となります。
妥当性のない言論制限は罰せられるべきとされていますが、逆に言えば国際的な非難さえ許容できれば言論の自由を任意に制限でき、その結果の言論を自国世論として示すことができます。
これが現状です。
この方法は幾つか問題が有ります。
一つは、「妥当性」の恣意性です。例えば現状、人種差別に関する表現の自由はかなり広範に制限を受けて良いとされています。その根拠はホロコースト他の反省だけで妥当しうるのか。
二つは、言論制限により誘導された世論が世論として受け入れられる事です。例えば反日教育と言論制限の結果国民が反日的になったとして、世論としての意味があるのか、という事です。
言論制限はそれ自体としてあらゆる場合にも望ましくないものです。それだけでなく、それが与える影響が広範にわたるというのも顕著な特徴としてあります。
私の提案は以下のものです。
言論の自由が制限された議論の結論は、その自由が制限された議題に関し、例外なく妥当と認められない。
これは国家による明確な言論制限のみならず、社会的圧力によるもの、議論における明文・暗黙のルール、名誉毀損や侮辱罪の様な正当とされるもの、或いはどんな些細な制限に関してもです。
また妥当と認めるべきでないとは、まず国際社会に於いて議論の前提等として用いる事が出来ない(「我が国世論が沸き立っています」「貴国は日本に対する態度に言論制限が行われている為何の意味もありません」)他、国内法の制定事由にできない、(学術的な目的に於いて認められるとしても)学問領域に於いて妥当と認められない、等の結果を伴います。
これは罪と罰の理論でなされる懲罰ではなく、不当行為による効果の取り消し、正しい現状認識に基づく適正化としての物です。
それらを受け入れる余地のある場合に於いては言論制限が認められます。なお、その悪用を行う場合は他国における議論の援用等がペナルティーとなるでしょう。
具体的には以下のような結論を認めるべきでしょう。
- ドイツ、フランス、イスラエルに於いてホロコーストの存在は認められていない。その為、当該国に於いてホロコースト賠償請求及び賠償行為は行うべきではない。
- 中国・北朝鮮・韓国に於いて日本による支配や侵略の不当性は認められていない。その為、当該国に於いて日本に対する謝罪や賠償・反省の請求は行うべきではない。
- 人種差別言論の禁止を行う各国に於いて、国家政策としての人種差別が妥当かどうかは結論が出ていない。その為、暫定的にはあらゆる人種政策は行うべきではない。
卑近な例として昨今のヘイトスピーチに関する議論を持ち出しましょう。
初めに、現行憲法を超えた議論として、国家によるヘイトスピーチ規制が行うべき状況が有りうるか、については先に述べた議論で有りうる、と考えます。
次に、単純な現状認識として現状深刻な事態に陥っているかについて、※1を無視し在特会の行為を人種差別的言動と認めた場合についてもそれほど深刻な事態ではない、と結論します。特に街宣右翼は長くこの国に存在したが言論制限は行われなかった事が一つの基準になるでしょう。
仮にヘイトスピーチ規制を行う場合、先の議論に基づき日本国内のアファーマティブアクションを撤廃しなくてはなりません。日本におけるアファーマティブアクションは特別永住権、その他各種の「在日特権」が当たります。存在を疑われている「在日特権」に関しては仮に実在する場合はそもそも取り消されるべきものでしょう。
つまりヘイトスピーチ規制を行う場合はその随伴的な規制として在特会の要求を満たし、そもそも規制を行う根拠が失われる、という皮肉な事態に陥るでしょう。
なお、ヘイトスピーチが言論の自由にあたるか、という議論についてです。
これは、あらゆる言論は言論の自由の対象である、という私の主張からすれば無論当たる、となります。これでは話にならないので一歩後退し以下のような態度を前提とします。
ヘイトスピーチと指摘されている言論と同意義であると表現者が信じられるヘイトスピーチに当たらないと言論がある場合、後者を用いれば実質的な言論を担保出来るので前者を規制しうる。
この立場に基づいて当該表現がヘイトスピーチにあたるかは議論しません。しかしこのような表現がある場合は、ヘイトスピーチ批判の方法論はその規制を要請するのではなくまず代替表現の提案という形を取るべきでしょう。
提案した結果を表現者が受け入れなければ話は終わりです。別の表現を探してください。受け入れた結果、敢えて傷つける表現を用い続けるならばそこで初めて規制議論が起きうるでしょう。
また、このような(国籍による差別)主張自体が言論の自由に当らない、という主張に関してです。
これは笑止ですが、仮に対象国で日本人が多数虐殺された、さらに日本国内に多数のスパイやテロリストが潜伏している、といった国籍による差別の主張が正当な状況を想定しうる事から、国籍を民族や人種に変えても少なくとも一般には正しいとは言えない事は明白です。
対象国における日本人差別や財産の侵害、スパイの存在までは程度の差が有れ認められていますから、後は主張者の事実認識次第となり、認められるべき言論とするべきでしょう。
最後に、単純な私個人の意見として在特会の様な行為の一部は、日本国民の怒りの表現としても望ましくないという態度を示しておきます。
注意点
※1 在特会は在日外国人を対象としている事から国籍による差別政策を主張するもので、帰化人を攻撃しない限り人種差別撤廃条約の対象となる、或いは一般的な人種差別の対象ではありませんが、今回はそれを無視し、ヘイトスピーチ関連の議論として扱います。
※2 私は差別と区別を区別せず、どちらも差別と呼んでいます。これは語用による政治的主張は議論の混乱を招きうるからです。
※3 民主主義国家であり、実質的な民主主義であるべき、という事を前提としています。
目には目を、歯には歯を (スコア:0)
最低限完全相互主義で良いのでは。
無論、相手国や相手国民によるヘイトスピーチやヘイトアクションの実行から、当方がそれに制限を加えるまでのタイムラグが10年が妥当か、20年・半世紀・一世紀が妥当の議論は必要でしょうが。
個人的には著作権と同じく、ヘイトスピーチやヘイトアクションのをして良いと教育を受けた者が社会の一線から引退し始める、半世紀以上が妥当だと思うが。
Re: (スコア:0)
そうそう、ヘイトスピーチを禁止しろ!と要求してる方たちにも、最低限そういうんなら日本→韓国、だけじゃなくて逆も当然同時に禁止でいいんだな?さらにそれを韓国にも求めていいんだな?ということだけは、念押ししたいです。
っていうか、在特会の主張は「日本人が差別されている。韓国人が日本人の権利を侵害している。」なので、結果的に日本→韓国だけを禁止しろ、という要求になってしまうと、彼らは「ほら俺たちの言っているとおりじゃないか!」となってしまうので・・・逆効果以外の何物でもありません。
相手と同じレベルに落ちてどうする (スコア:0)
昨日だったか今日だったか定かではないが、ニュースに出ていたデモの様子をみてこう思った。