larsの日記: さらば「落ちぶれた王者」IBM
始めにことわっておくと、個人的にはIBMは信頼のできる企業の一つであった。
どのメーカーもWindowsへの対応は明確にしていても、Linuxに対しては概して逃げ腰だ。しかしLinux対応をいち早く明確にしたところや公約通りIBM製のデスクトップを手に入れれば、大抵のLinuxは苦労せずに動くことが、ボクにとっては「さすがに王者」という好感を持てる点だった。
しかし、ここのところどうだろう?PC部門を中国メーカーに身売りし、この日記を書いている今、Appleとの契約も切れる寸前と噂される今、何となくその将来に翳りが見えてきたように思う。
IBMは少数生産ビジネスの採算性へ疑問からPC関連からをほぼ全面的に手を引こうとしているらしい。変わりに、Microsoft、ニンテンドウ、Sonyなどが(おそらく中国辺りを意識した)ゲーム機が将来多くのPowerPCを使うことで大きな利益を得るとみこんでいるようだが、ボクはこれは大変な失策だと思う。
確かにゲーム機の生産台数はMacよりずっと多いし、チップが沢山売れなきゃはじまらんといいたいのは分かる。しかし問題点もかなりあると思うのだ。
まず、PowerPCは昔から供給不足がいわれることがしばしばあった。intelとは違い、チップ専門メーカーというわけではないので、工場を大幅に拡張しなければ今後も供給が追いつかないということに悩まされるだろう。ただチップの製造工場というのはとても大規模な資金が必要となる。PC部門の売却もおそらくそのせいかと思われるが、工場の維持管理というのは一定のシェアをどれだけ持っているかに大きく関わるのでとても難しいはず。
また、ゲーム機というのは、出荷の多い時期が決まっていて、そこは特に需要が集中する。クリスマスシーズンや、春休み、夏休みといったあたりだ。この需要のムラはいってみれば真夏の電気代のような物だ。まずは全てをピーク期にあわせて考えなければならない。生産が一度遅れれば、それは利益が減るどころか大変な損失につながる可能性もあるからだ。しかし、閑散期も必ず来る。そしてこの落差をどう維持するかが大きな課題となるはずである。
次に、主力がゲーム機になるということ。IBMがMicrosoftに負けたのはOS/2やOS/9でのソフト戦略のせいだと思うが、ここでも過去の反省が生かされていないのではないかと思う。
ゲーム機はどこまで行ってもゲーム機なのだからゲームソフト業界に異変が起きたらあっという間に総崩れだ。ゲームソフト業界というのはPCソフト業界といった、具体的に何を指すかはっきりしていない業界ではない。PCソフト業界はビジネスソフトがダメでも、エンターテイメントソフトや、ホビーソフトがいいかもしれない。しかしゲームソフト業界はゲームがダメならそれで全てだろう。高性能なゲーム機のせいで、ソフト業界はソフトの制作費でつぶされそうだ。しかも制作費の割には製品単価は上げられないので、いい物ができても回収できない。また、バージョンアップという方法で過去の成果を資産に変えた上で継承するのが非常に難しい。よほどヒット作でも作らない限り、その2,その3は作っても売れない。加えて違法ソフトも今後増えるであろう。ソフトメーカは多様性が無くなり、だんだん下火になりつつある。
いいソフトがなければ、ゲーム機だって売れない。
「中国に行けばゲームソフトだって安く作れるさ」なんて思っているんだろう。確かに労働賃金は安い。しかし、プログラミングこそがゲームづくりの要ではない。大事なのは「シナリオ」だ。その点、日本はマンガ・アニメ文化で培ったストーリー作成能力がとても強い武器になっている。中国にはそれがない。そういう点では中国のゲームソフトメーカーは、エンジンのない車みたいなもんだ。こういう点で、ゲーム機を中心にしたビジネスモデルは破局に弱いと思う。
ThinkPadというノート機種がある。これは昔から大和研究所という日本の企業が開発していてそれをIBMが売っている。ThinkPadは大変いいデザインと性能を誇るが、「IBM製」というブランドに対する信頼が売上促進に力を貸したことは間違いないだろう。Lenovoという中国のサプライヤーが今後販売するが、中身が変わっていなくても、すでに購買意欲が低下するから不思議だ。IBMは自身のブランド力を良く理解していないに違いない。競合が増えたのは確かがだ、強大なブランド力はまだまだ自身の底辺を支えている。
これを自ら捨てようというのは、大変な危険を伴うだろう。
個人的にはIBMとAppleは数あるPC関連ブランドの中でも大変信頼のおけるブランドだったために残念だ。AppleからのPowerPCの開発要求を袖に振った影響は、おそらく長く尾を引くだろう。