live-gonの日記: アイホン - IT観察
記述開始2010-12-21T23:35:39+09:00
やるせない気分だった。行くところがなくなりそうだ京都行こうと思ったが金もないので吉祥寺に行くことにした。
体が悪いということもないので自転車で行った。夏のギラギラした日差しが挑戦的で、私は意味もなく好戦的な気分になった。
休日の吉祥寺というのは人混みが異常だ。新宿や渋谷はもっとすごいのだろうが、吉祥寺だって充分だ。真っ直ぐ歩くこともできなければ自分のペースで歩くことさえできない。それどころか歩けずに完全に停止してしまうこともしばしばである。
道の反対側のソフトバンクの店が呼び込みをしていた。ノースリーブでヘソまで出した女性が、服飾の定義を示すかのようなミニスカートを穿いている。あれより短いとミニスカートではなくなるだろう。パンツを見せる装置か何かだ。
私は人だらけの歩道から車道に出てそのまま渡った。彼女に向かって真っ直ぐ進む。
いらっしゃいませと声をかけられた。服の生地が思いのほか安っぽく、これを着て真夏日に立ち続けるのは汗を吸わないために大変なのではなかろうかと思った。
iPhone が置いてあった。
おおそうかこれが iPhone か。
ソフトバンクの店は庇が大きく張り出しているために、目が慣れるまで暗かった。クーラーはすこぶる強烈。すげえな。
汗が引くのを待ちながら料金プランを聞く。ケータイショップというのは好ましい場所だ。店員は暇であるためか、寄った客であれば私のような人間にも熱心に説明してくれる。iPhone の料金にややこしいところは一つもないのだが、なぜこの料金なのかという背景まで説明する。
私の相手をしてくれたのはさきほどの女性ではなくて、二十代前半とも後半とも思われる、バイトとも社員とも思われる男性であった。髪は短く、染めていない。顔中にニキビの跡があった。接客は苦手ではないようだ。とくに物怖じせずに私の目を見て話す。私の方が目を逸らすことになった。
なぜこの料金なのかなどどうでもいいのである。私は iPhone に触った。ちゃんと動く iPhone にさわれた。メニューを左右に動かして見せられた。
ふうむなるほどなどと頷いてみせた。買える金などない。どうもありがとう。検討します。
ありがとうございました。男が頭を下げた。
こちらこそ。丁寧な応対だけで気分がよくなった。
えー、これよくなーい。あー、これ欲しい。
突然のカップルの声。ケータイショップはこれがある。油断ならない。男の方の手は常に女の腰に触れている。暑いはずだ。不自然な高さに腕を上げるのは大変なはずだ。私はそこに性的な意味と、男のせせこましい自己顕示欲を感じて憂鬱になる。
ビラの貼ってある小さなテーブルの真ん中に iPhone を置く。目でズレが確認できないほど正確な中央に置くと、それは完璧な配置に見えた。
これをこのまま置いて帰ろうと思った。それはいい思い付きだったが、よく考えると買ってないので置いていくのは当然なのだった。
私はソフトバンクのショップをあとにした。
記述終了2010-12-22T00:19:24+09:00
注:これは完全なフィクションである。梶井基次郎さんとそのファンの人、ごめんなさい。
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