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日記

m_nukazawaの日記: 夏コミ合同誌参加と一行感想

日記 by m_nukazawa

寄稿原稿の小説においては、難度が高いと判断して百武照のリバースエンジニアリングを避けましたが、参加当初の目的はワインバーグ先生の「わからないテーマがあれば、それについて本を書くと良い」(書くことで理解が進む)でした。書くことで百武照を理解とか昇華したかった。現実の実装は真名もわからないまま怪異を力づくで石棺に封印するみたいなことになりましたが。

2019年夏のコミケットに出展した、『ステラのまほう「百武照合同」』(サークルUmbrellahead様)に小説で参加しました。
この文章は、(合同原稿について吐き出しておきたかったことが文量の多くを占めますが)参加後記と一行感想とその他です。
ステラのまほうについてはPixiv大百科あたりをどうぞ。
https://dic.pixiv.net/a/ステラのまほう

電子書籍版が出る(出ている)はずです。
https://umbrellahead.booth.pm/

で、「参加することに意義が在る」感だったこともあり、テーマ上読まないほうが精神衛生上良い気もしていたのですが、そこはそれ。読みました。
そして、読んだからには一行感想くらいは書いておこう、と思った次第。
人の感想を読んで自分の感じたことが影響を受ける前に残しておく意図もあります。
当然ネタバレです。

ずるい、つらい、ひどい、等の褒め言葉が字面だと褒めているように見えないように思ったので、ほとんどの部分は「すごい」に置換されています。
だから「すごい」の出現頻度がすごいです。

感想について『〜みたい』がNGの人はブラウザバックしてください。駄目な人もいるそうで、避けようかとも思ったのですが自分の感想なんだしと思って諦めました。
(語彙力? これは感想であって小説ではありません。)

## 各作品感想

表紙・タイトル
好き。

イラスト:Martin (@martinreaction)
目が「こういうふうに死んでいる」絵を見たことがなかったので新鮮でした。

イラスト:めめ (@Milktea900ml)
仮面を持った指が真っ直ぐに立っているのが印象的。

イラスト『Marionette in The Mirror』:染井本夜 (@Biblio1719)
絵でないとできない素直な直喩です。小説参加としては羨ましい。

イラスト:A歌羽.zip (@Utha_art)
憂い顔、美術館とかで見るやつで漫画絵では珍しいと思うのですが、めちゃくちゃキャラクタと合同趣旨(?)に合っているためすごいなと思います。

ゲーム『ゆめみてるながれぼし』:〜しょしぃる (@taksaro / プログラム)、ゴートリング (@goat_ling / ドッター)、RuluMochi (@Rumoi_Mochi / サウンド)
(macosxのWINEで動かなかったためゲーム本体の感想はなし。ゲームはしない人なので、最近プレイしたのは「クッキクリッカー」と「ことのはアムリラート」くらいです。)
照先輩は人を導くことには向いている気がするので、責任感みたいなものをなんとかすれば、そっち方向では幸せになれそうな気がする。

漫画『無題』:閑咲婀萠 (@ametie_k3ki_)
恋愛相談と、「がんばるぞい」をこんなふうに使うなんてすごい。

漫画『照照坊主』:閑咲婀萠 (@ametie_k3ki_)
キャラを坊主にするのは怖くて私にはできない...。

小説『2番目に楽しかった場所』:すばるん (@subarun0415)
この謎団体を「なんか不思議だったなー」で済ませる照先輩に「楽しい」気持ちを届けるのは大変そうです。

考察『Undefined Mirage』:A11 (@a11urrorg)
寄稿原稿を書く前に読みたかった。

小説『シュワルツシルト』:坂西原貴 (@hirune101)
オチ、というか読後感に成功した小説でした。

小説+挿絵『わるいゆめ』:神原ハヤオ (@kanbara_s)
照先輩が苦しんでいるのは、彼女は自分の中に『光』についてのイメージを持っており、それを自分では作ったり手に入れられないと思うからなのかも。

小説『人間関係』:星見秋 (@himonohsm)
「食べ物を粗末にする」ことの不快感を相乗して、照先輩の「本人にとってさえ手に負えない」様が描かれていてすごかったです。

小説『アーティファクトの亡霊』:くすく (@xfiveone)
藤川さんにとって「ギターが弾けない」はもしかして弾かないという願掛けなのかな、という連想をしました。

漫画『楽園追放』:草薙さんく (@sankuroraido)
周囲を気遣ったり自省する瞬間がなければ、照先輩はこうやって楽しいのかも知れない。

小説『Psilanthropy』:らむだきー (@s6jrmany)
クレタ人のパラドクスと言うか、「わたしを心遣わないで」と言われた時の対処のなさと言うか(心遣わないこと自体が心遣いになってしまうジレンマ)。
extra. テッド・チャンの「理解」を読んだ時と同じ救いのなさを感じました。あちらは理解でこちらは孤独でしたが。

小説『Stella Not Satisfied』:堅魚 (@kengyo7)
素敵です。
extra. 個人的なベストオブ読まなければ良かった。やっぱり私は藤川さん好きなんだなー、と思いました。

小説『サラウンド・アイ』:nora1 (@pripin789)
後の奇行に繋がりそうなエピソード。
extra. 読み返してみれば拙作『宇宙人の日』と鏡合わせな部分があります。宇宙人にとっては地球人が宇宙人。子供はいずれ親が他人だと気づきますが、照先輩にとって自分の肉親である母親が宇宙人だったと気づいた時の気持ちは、いくばくだったか。

漫画『クローノンを歩く』:藤秋すばる (@f_subal)
なんとなく本当は許されないような気がする救いとか。状況的にはともかく感情的には巻き込まれていない本田さんの立場が、ずるいという気持ちが自分の中に湧いたのは驚きでした。

小説『宇宙人の日』:MNukazawa (@MNukazawa)
拙作。

小説『ボーダーライン』:いたちか (@nkmkinak)
一時的な救いを仮初のものとして唾棄してしまう照先輩は自分の中の本物と永遠にこだわっており、だから生命が有限であることの絶望を起点としている、のかななどと。

小説『hysteresis』:asakusa (@asakuso1919)
人が救われないまでも自分なりの幸せに向かっていく様子を照先輩の視点から見ることは、それだけでお話になるし照先輩の立ち位置を明らかにしている気がします。

## 全体感想
昔、『ニーチェがルサンチマンと超人について書いている本の中で、ギリシア悲劇はゲラゲラ笑って鑑賞したら、物語より愉快な自分の人生に戻るというのが(一つの正しい)楽しみ方なのだって書いてあった』みたいな言説を、どこかの本で読んだ覚えがあります。原典をさらっていないので本当かどうかはわかりませんが、メランコリィを月曜の通学時まで引きずるよりは、少なくとも健康的な気はします。
百武照合同について。いろいろな感想があり、人によっては読んだり書いたりが「ゲラゲラと笑える」方向らしいのですが、少なくとも自分にとっては読んでも書いても「ゲラゲラ笑う」という感じにはなりませんでした(楽しかったですが)。
城平京「名探偵に薔薇を」で、あとがきで筆者が「人によってはゲラゲラと笑いが止まらないかも知れません」と書いてあって、意図はわかるがゲラゲラと笑いはしなかったので、そういうものかもしれません(とても面白かったです)。

照先輩の問題は照先輩の問題である、というのはわりと多くの作品で共通していたように思います。外部の何かが照先輩を害して苛んでいるわけではありません。ステラのまほう自体が、基本的に「自分自身の内側から来る問題」を多く扱っているからかもしれません。それは救いであると同時に救いのなさでもあり、解決を容易かつ困難なものとしています。
これは、私の個人的な創作物に対するテーマでもあります。百武照合同に惹かれたのは、それが理由かも知れません。
照先輩は共感なんてしたら嫌がるよ、というのは卑怯な言い回しです。共感するも反発するも本人の自由です。嫌がられたくないかどうかも自由。
ただまあ、願わくば、百武照合同を読み書きした方が各々楽しまれたようなら幸いに思います。

## 拙作「宇宙人の日」について
本編とあとがき以上のことはないので、細かいオマージュなど。
「煮詰まっているねー」はどちらとも取れるように意図して曖昧に使っています。照先輩の教養レベルは筆者ではなく読者が決めるというズルです。ただ後から、こういうの誤使用が気になる人には没入感を削いで良くないかも、と気にしています。
「なんにも進展しない」は過去エピソード二次創作、つまり本作自身を含む、ある種のお約束です。この場合、現代のエピソードに美しく繋げられる”小さな”エピソードが尊ばれることになります。逆に、いかにも本編につながら無さそうなインパクトの在る内容から上手くやって、戦国自衛隊みたいに(?)私達の知っている結末へ歴史を繋げられると、画面のド派手さと曲芸の繊細さに拍手喝采。
駅前と罰金は涼宮ハルヒシリーズ。照先輩知っててやりそう、という感じになっていれば大成功。
片道切符、最近は存在を知らない方が増えているそうで、ポケベルみたいな時代描写をやってしまったかもしれません。森博嗣に習って時代を特定する描写は避けているつもりなのですが、難しいものです。
シチュエーションや情景は、子供の頃見たいくつかの演奏ホールの印象と、昭島公民館(そんなに大きくないしホールに入ったことない)とユーフォの悪魔合体です。
ホワイトボードはシンゴジから持ってきました(本当か?)。
担当楽器の組み上げを繰り返す生徒は、終戦のローレライに出てきた「航空機で運ばれている2時間以上のあいだずっと”付着していない”靴底の泥を銃剣の切っ先で落とそうとし続ける中年歩兵」のオマージュです。音楽部員は自分の演奏力で運命を決められるようにも見えます。航空機で運ばれるあいだの歩兵は(たとえ歴戦の勇士であろうとも)自分の運命を実力でどうこうしようもなく、何かに委ねるしかありません。
照先輩の寝相ってもしかして悪いんですか? そうだとしたら困ったな...。
一年後描写、藤川さんがまだ照先輩が「レールに乗ってる」と思っているタイミングなのがこだわりです。
ラスト、藤川さんは心配していますが、照先輩(しんのすがた)と覚醒後本田さん(Lv99)のバトルが見られるかどうかが、『ステラのまほう』今後の楽しみのうちの一つだと思っています。はてさて。

最後に。本作におけるタイトルおよび「宇宙人」は、『よくわかる現代魔法 4 jini遣い』より。All you need is kill 2 は早く決着付けていただければ嬉しく思います。

## おわりに
というわけで照先輩の闇は「なんどでもゆめみてる」という名前と実体を与えられたことで調伏されました(個人的には。たとえ完璧でなく一時的な封印であれ、大筋として)(合同誌という石棺から百武照第五形態の手足が飛び出してどこか楽しげにバタバタしている気もしますが)。

次ですが、冬コミに向けて「どうびじゅ合同」の原稿をやろうと思います。美術X室にまつわる明るく楽しい青春ミステリィです。よろしくおねがいします。

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身近な人の偉大さは半減する -- あるアレゲ人

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