maiaの日記: 光に反応する分子「ターアリーレン」ないし「光センサー分子」 1
日記 by
maia
よく分からないが、奈良先端科学技術大学院大の河合壮教授らの研究。NHKの報道によれば、光に反応して変色する「ターアリーレン」という分子の改良で、応用して記録媒体を作れば、ブルーレイディスクの、少なくとも5~10倍の記録が可能になるとのこと。
朝日新聞の記事によれば、「光センサー分子」が開発され、これで録画用ディスクを作ると、地上デジタル放送が6時間録画できる現在のブルーレイ(おそらく50GB)の100倍以上の記録が可能で、書き込みに必要な電力は100分の1以下という。読み書きの速さも10倍以上になり、理論的には100層を重ねて使うことができる。また、光でつく接着剤や高密度な半導体の製造にも応用できるという。
光異性化です (スコア:1)
九大の入江先生の代表的な仕事で,ジアリールエテンの光異性化というものがあります.
(と言うか入江先生はこればっかりやってます.でも物質系をあれだけ固定し,しかも光異性化にこだわりながら全く違うテーマやら結果やらが出続けるところはさすがですが)
光異性化は文字通り光で構造が変わる(二重結合が回転したり,結合が出来たり切れたりする)ものですが,通常は構造変化が大きくなかなか進まないとか,結晶中ではそんなスペースがないから進まないとかがほとんどでした.
ところがこのジアリールエテン系は,検索していただければいろいろ図が出てきますが,結合が出来る(切れる)前後で構造がほとんど変わらないため,非常に迅速に光異性化が進んだり,結晶を保ったまま異性化が進んだりする特異な系です.しかも反応は可逆で,二波長を使うことで自在に構造をコントロールできます.またこの物質は結合が出来るとπ電子系が広くつながるため,光異性化の前後で色が大きく変わります(広がったπ系ほど,エネルギーギャップが小さい).いわゆるフォトクロミック分子(光で色が変わる分子)ですね.
でもって今回の論文(多分これ [wiley.com])を出している河合先生は九大時代に入江先生と一緒に仕事をしたりしていまして,その流れで今もジアリールエテン系分子を扱っています(どちらが最初にやり出したのかは知りませんが).今回の発表は,そのジアリールエテン系分子の一種で,溶液中での光異性化反応において驚異的に高い量子収率(光を吸収した際に,どの程度の割合で構造が変化するか)が実現したよ,と言うものです.まあ確かに微弱な光(少量の光子)で構造変化(とそれに伴う色の変化)を引き起こせるので高密度記録につながらないとまでは言えませんが,そもそも溶液の実験であることや,記録媒体としては量子収率が高いだけでは駄目な点などから,これで即記録密度が上がるとかそういうわけではありません.
実用云々よりむしろ,化学の基礎面から面白いんですけどね.高い量子収率が何に由来するのか,他の失活過程(構造変化以外にエネルギーが逃げて言ってしまう過程)がどう抑制されているのか,とかそのあたりで.