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日記

mfukudaの日記: JIS X0213の誤字「𥿔」(ヒキヅナ、U+25FD4)は、「𥾣」(糸+支、U+25FA3)とすべきである証拠を見つけた 2

日記 by mfukuda

昔に「ヒキヅナ」という漢字というのを書いた。JIS X0213の「𥿔」(糸部5画、ヒキヅナ、U+25FD4)は誤翻刻で、実際には存在しない文字で、本来「𥾣」(糸部4画、糸+支、U+25FA3)と翻刻すべき漢字だと昔から主張していたのだが、0.1%ほど自信がなかった。というのも、典拠となる「芝居番付」が1枚しかなく(同じものが9枚*、4館の図書館に収蔵されている)、別字体での用例が見出せなかったため。

しかし、ようやくこの画像のように、「糸+支」で書いた例を発見できた。これは「歌舞伎絵尽し」(関東だと絵本番付と呼ばれる)というもの。このページを含めた8ページが、「須磨都源平躑躅」と「高瀬川恋𥾣」の2演目の「歌舞伎絵尽し」になっており、このページはその表紙(合羽刷とよばれる多色版画)で、上部に横書きで「高瀬川恋𥾣」と記載されている。6,7ページに「切狂言 たかせがわ」と記載されて、役名とセリフが記載されている。この「高瀬川恋𥾣」の「歌舞伎絵尽し」は桜楓社『歌舞伎絵尽し年表』に存在が記載されていたが、国会図書館で、その前のページに普通の「芝居番付」が載っていたため10年以上見逃していたもの。自分の無能さが情けない。

東京大学国文学研究室所蔵 芝居番付目録〈本篇〉』でこの画像を東京大学国文学研究室が「𥿔」と誤翻刻したものを、そのままJIS X0213で収録し、Unicodeにも収録された、という結論で100%間違いない。調査にずいぶん時間がかかってしまった。

*9枚:今は以下のように、すべてオンラインで画像を閲覧できる。昔は図書館行ってマイクロフィルム見るしかなかったのに…いい時代だ。
国立国会図書館 847-112 芝居番附集第二(戯場聚会譚)26冊目-12点目、847-115 芝居番附集第五(俳優扮名録)8冊目-58点目、847-116 芝居番附集第六(芝居栞)1冊目-16点目
国立音楽大学附属図書館 竹内道敬寄託文庫 M5-096、43-001043-0011
早稲田大学演劇博物館 ロ21-00005-248、249、250
東京大学国文学研究室 22.6-13-308B

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
  • by Anonymous Coward on 2021年03月17日 7時47分 (#3995470)

    U+25FA3はJソースがないので、Windowsの標準では中国語のフォントが選ばれて糸偏のデザインが中華風になりますね。もっともそっちのほうが手書きである絵本番付の典拠画像のデザインに近いみたいですけど。

    文字情報基盤のIVSがつかなかった文字についてHorizontal Extensionを提案する [ipa.go.jp]という話はどこへ行ったのやら。あと文字情報基盤整備事業成果物を文字情報技術促進協議会へ移管してからこの議事録が(これに限らず制定過程を追うための貴重な資料が)直リンクでしかアクセスできなくなったのもどうかと思う。

    • by mfukuda (15975) on 2021年03月17日 12時22分 (#3995610) 日記
      デザインといえば、Windowsのメイリオの「𥿔」が酷い。「綾𥿔」と並べるとわかるが、「綾」の糸と土を残して、乂を足してるので、バランスが変になっている。MS明朝とかは、規格票の平成明朝での字体のバランスを維持してるので、「この字のつくりは支の誤記かな?」って予想できるのに。

      また、「紻」の入管正字の第2候補 [glyphwiki.org]として「𥿔」が使えることも分かった。入管正字の置換候補はムチャなのは知られているけど、「かんむりのひも」が「ふねのひきなわ」になるのは気の毒。でも、X0213の漢字とはいえ、本来この世界に存在しない漢字を日本で法的に通用する名前の文字として使えるのは、ちょっとうらやましい。
      親コメント
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