mik_narutoのコメント: キーワードは「複製権」 (スコア 5, 参考になる) 89
個人で頼まれて結婚式余興ビデオとかを作っていた時に調べました。以下は「結婚式用に、有名J-POPのCD音源をそのまま使いたい」という、最もありがちな状況が前提です。
権利を持っている団体が2種類あり、別々に考える必要があります。
(1)作詞・作曲・編曲者の権利 = 著作権: ほぼ一括して「JASRAC」担当
(2)演奏者・歌唱者の権利 = 著作隣接権: それぞれの「レコード会社」担当
また、許諾を要する行為にも2種類あり、別々に考える必要があります。
(a)会場内で曲を流す権利(演奏権): JASRACのみ関与
(b)市販音源を複製する権利(複製権): JASRACとレコード会社両方が関与
(1-a) について。式場で管理楽曲を流すことに関して、まともな式場は包括的にJASRACと契約して許諾を得ており、個々の手続きは不要です。
(2-a) について。レコード会社はCDの再生自体に関して何の権利もないので、どこで何万回市販CDを再生しても1円も請求できません。(参考URL http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n48098 )
ここまで何の問題もありませんが、(b)が厄介です。「複製」とは、参加者にCD-Rで曲を配ることに限りません。式場で上映するプロフィールビデオのBGMに使えば必然的に複製。披露宴をビデオに撮影してBGMとして音源が入り込むと複製。CDを入れ替えないで済むよう使用順に曲を入れたCD-Rを焼くのすら、私的利用の範疇外の複製行為であり、許諾を得るべきと、レコード協会は主張しています。(このURLのQ6参照 http://www.riaj.or.jp/copyright/music/qa_copy.html )
(1-b) について。まだ、JASRACは楽です。決まったルールの下で窓口が一元化されており、まず拒否されることはなく、値段は一定で、払える値段です。
(2-b) の組み合わせが地獄です。各々のレコード会社の法務に連絡して許諾を貰うのがまっとうな手段のはずですが、個人レベルだったりブライダルビデオだったりする時点で門前払いされて詰むのが普通です。avexはWebで案内と料金の目安を載せています(ビデオだと3万円~)が、これは良心的な方です。値段も会社側の自由なので、1回で数十万円請求されることもあるとか。これ系ビデオ製作を業務でやってる会社の対応は、特定少数の楽曲に関して正式に著作隣接権許諾を得ている会社、市販音源使用を一律拒否する会社、非常に高額な手数料を請求する会社、客側が権利処理し全責任を負うという契約を結んでやりたい放題の会社(いいのか?)、と、バラバラでした。
ISUMという団体の意義は、ほぼこの(2-b)部分です。著作隣接権の問題をクリアにし、金さえ払うならアーティスト音源を使った自作CDやDVDを参加者に正々堂々と配ることすらできそうです。
なお、「じゃあ、複製さえしなけりゃいいの?」と思った方がいると思いますが、はいその通り。市販CDを、CD-RやMP3を経由せず流す。プロフィールビデオ自体は無音にしておき、タイミングよくCDを流す。これでISUMにビタ1文払わずに市販音源を利用できます。
しっかし……。著作隣接権分の料金設定、「用途に関わらず1曲1複製ごと2000円」は、乱暴すぎやしませんかね。CDシングルを直接枚数分買うより高いです。プロフィールビデオのマスターDVDを1枚焼いて上映するなら、何百人が見ようと1曲2000円で済むので割安ですが、参加者に数十枚とか配布するのは現実的価格ではないし、当日のみ使う10曲入りまとめCD-Rを作る行為が2万円とされるのは流石に理不尽と感じる人が殆どでしょう。