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ゲーム

minetの日記: プリンセスクラウンに見るメタフィクションとメタファーについての一考察。

日記 by minet

以前の日記以来、じっくりプレイ中のプリンセスクラウン。

このゲームは、おばあちゃんが孫娘(?)の女の子に本を読み聞かせていて、ゲームのストーリーは本の中の物語であるという、メタフィクション構造になっています。
そして、ゲームをスタート・コンティニューするには、まず女の子を操作して本をおばあちゃんに手渡す事から始めるというメタファーになっています。

これだけなら、単にゲームの入り口をそういうUIにしただけとも言えるのですが、それに加えて巧いな、と思わせたのが、ゲームオーバー時の演出。

ゲーム中で主人公が敵と戦って破れてしまった時、画面が暗転してゲームオーバーとなるのですが、その時表示されるメッセージが、
FALL DOWN FROM BOOKWORLD
つまり、本の世界から転げ落ちた、となっていて、主人公の行動が本の物語から外れて、進めなくなってしまった事を示しています。
プレイヤーであるあなたが負けて死んでしまいました、という事ではなく、本の物語は依然として存在し、ただその物語から外れてしまった、と言っているのです。

ここで気になるのは、本の世界から転げ落ちたのは誰か、という事。
主人公であるグラドリエルではない。つまりは、プレイヤーという事になる。
プレイヤーの意識が、世界から落ちてしまった。それでゲームオーバー。
そうなると、本の世界から落ちたのは、おばあちゃんのお話を聞いていた女の子という事になりますが、では、なぜ女の子は落ちてしまったか。
メタファーの構造的には、お話をしていたのはおばあちゃんなのだから、物語から外れるとは考えにくいからです。

…と、考えて。
真っ暗になってFALL DOWN … 落ちる…… 寝落ち

そう、おばあちゃんが女の子に読み聞かせをしているのは「夜」という設定でした。
女の子は、おばあちゃんの話を聞くうちに、いつの間にか寝入ってしまっていたのでしょう。
そしておそらくは、夢の中でグラドリエルとなって、物語の中にいたのでしょう。
しかし、物語中の難敵を打ち破って先に進むことはできない。なぜなら、グラドリエルがどうやって敵に勝ったのか、続きのお話はまだ、おばあちゃんから聞かされていないのだから!

そして女の子はまた明くる日に、続きのお話を早く読んで欲しいとおばあちゃんにせがみに行くのです。
この時、ゲームをコンティニューしようとするプレイヤーの行動と、女の子の行動は完全にシンクロしています。
まさにロールプレイング!
プレイヤーが演じていたのはやはり、グラドリエルではなく、イントロダクションの女の子だったのですね。

さて、このように空想をふくらませていると、ゲームオーバーではない通常のゲームの終了・コンティニュー方法、すなわち、セーブポイントによる中断も、メタファー性を帯びてきます。
夜におばあちゃんの読み語りを聞くうちに、眠くなってしまった女の子を見て、おばあちゃんは物語をこう紡ぐに違いありません。
「こうしてグラドリエルは、旅の疲れを癒すために町の宿屋に泊まったのです。さあ、あなたも今夜はお休み。」

このゲームのセーブポイントが回復場所の宿屋である理由も、こう考えると納得です。
おばあちゃんは本のストーリーをなぞるだけでなく、物語の一部を作り出していたのですね。

# などという妄想を、最近ちょっと寝覚めのよろしくない頭で考えていた。

# もちろんゲームデザイン的には、セーブポイントと回復ポイントを同じにするのは、ハマリ状態に陥るリスクを軽減するため。

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犯人はmoriwaka -- Anonymous Coward

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