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日本

mujiの日記: 渋谷・コクーン歌舞伎

日記 by muji

コクーン歌舞伎としては3回目の四谷怪談。ただし今回は外題そのものが「四谷怪談」。「東海道四谷怪談」ではない。
ので、創作四谷怪談なんだよなと覚悟して行ったら。

昨年来の四谷怪談ブーム(ブームかよ)の中で、最もインパクトの薄い四谷怪談として終わってしまったのはどういうことか。
10年前の北番を観ておいた自分を褒めたいが(ぉ)、その10年前の(私には合わなかったが)パワーと猥雑さは最早望むべくもないのか。幕切れの、地獄の業火へ落ちていく人々とそこから逃れようと梯子を登る伊右衛門という構図は概ね同じだが、10年前はそれに椎名林檎が大音響で被さってうるさくて仕方なかった、そのうるさささえ今となっては懐かしいというか。

いやね、不必要に絶叫させないうたわせない思い入れさせない、というのは、むしろ現在の歌舞伎の演じ方へのアンチテーゼということで却ってよかったのではないかと。歌舞伎というより演劇全般か。何でもかんでもすぐ絶叫させるのはホントにうんざりだし、そのおかげで新歌舞伎はほぼ死に体だし、思い入れもやたらと入れまくって無駄に上演時間を長引かせてる感すらあるし。
そこで「ハラ」が出てくる訳で、今はハラがあるかどうか自信がないから逆に思い入れが長引くんじゃないかとも思えるんだが(戦後の名優達は別として!)、今日観ていた限りでは残念ながらアンチテーゼがアンチテーゼとして生きてきていなかったかなと。スピードにとらわれて流されて終わったような。もしやそれすらも演出の意図のひとつなのかと勘繰りたくなるくらい。
あれだけ原作通りに出すもの出して(国立でも前進座でも出なかった、浪宅で於岩様が死んだ直後にネコが出てきて、そのネコがでかいネズミにくわえられて、ってのにはやるな! と思ったし、大詰で源四郎が巡礼姿で出てきたのにも目を見張ったし)、それで幕間とカーテンコール込みでおおよそ3時間にまとめたんだから当然のように全員早口になるのはやむを得ない。とはいえ浪宅の於岩様にほぼ語らせなかったのはいかがなものかと。無声映画みたいに字幕出すってそれ扇雀の負担減らしたつもりなのかと(ぉ)ただ、繰り返しになるが、ここで通常の演出だと恐らくは扇雀絶叫しまくりだっただろうから、「これが私の顔かいな」(あ、ここは現行演出の「わたし」にしちゃってるね。これを原作通り「わし」で出した前進座流石だ)をあのトーンでいわせるようにしたのはよかったのではないかと。まーその前後はまるでいただけなかったけどね國太郎以上に弱ってない動きのいい於岩様だったし髪梳きも雑だったし!

雑といえば直助権兵衛。んー、何を目指そうとしているのか。従来の直助権兵衛像とは一線を画したいのは判るがそれにしても雑というか軽すぎる。コクーン歌舞伎の演じ方だからその軽さでもいいのかもしれんがそれにしても(ry)結果、むしろ直助権兵衛像が見えなくなってしまった感。三角屋敷の最後だけ重くされてもねぇ。
軽いといえば伊右衛門の存在感の軽さ。というか、伊右衛門に限らず、於岩様も直助権兵衛も、誰も彼もが存在感がなくてね…あの宅悦ですらいつもの宅悦ではない薄さ。今回の演出意図がそういう方向、日常の中での出来事のひとつ、ということであればまあ判らなくもないが、演じる側がスピードに負けているんだとしたらちょっとね。
存在感の軽さ、とは少し違うが、配役の意味がまるで掴めなかったのが小平内の又之丞、というか首藤康之。登場したときに左耳下にインカムが見えたがPA通している風には聞こえなかった、というか通してればぼそぼそ台詞ももう少し明瞭に聞こえたはず。いや、これ、それこそ国立で小平内出したのに対するアンチテーゼでしょ、と思わざるを得なかったというか。バレエダンサーに又之丞やらせてしかも足が立つところまでは出さない。おまけにこの場での主だった登場人物はほぼ歌舞伎役者以外。どんだけ皮肉?
 #バレエダンサーと聞いてそれこそ足が立った途端に見事なステップを披露してくれるものと期待してたのに←

以下おぼえとして。

  • 幕開きに登場人物ほぼ全員モブで出す。今回の四谷怪談が日常の中での出来事のひとつ、と思った理由のひとつ。
  • 音楽は下座なし生演奏。前回の北番と同じやり方。つか今回の感想ぱらぱら見ている中で誰もホーミー(ホーメイ)の使い手がいるって指摘してなかったじゃん! とぞくぞくして聴いてたらどうも前回も出演していた模様。イギル(馬頭琴の元となったといわれる楽器、前回二胡みたいなと書いてたのはこれだったか)担当の尾引浩志。主に伊右衛門登場時のBGMとして使われていたのは演出意図があってのことだろうが、さて。
  • 隠亡堀は前回も仮装大賞かってな波衣勢だったが今回は更に開き直ったかモブ達をそのままの衣装で寝っ転がせるという怪挙に出た。戸板返しは戸板を運ばせもせず舞台下から出してきてCG投写で舞台後ろから扇雀と国生に声つけさせるという。こういうところは10年前からの機材の進歩がなせる技というか。
  • 小平内、又之丞を載せた一畳台を質屋だの何だのが取り囲んでぐるぐる回しているうちにいつの間にか勘之丞の赤垣伝蔵が紛れ込んでたのにはびっくりwここだけはやられたと思ったよw
  • 夢の場は火の見櫓みたいなのに伊右衛門と於岩様の人形据えて、下で何やら操り棒使って動かすのかと思いきや派手な動きも特になく。冒頭でも出てきてたから夢の場で何か仕掛けがあるかと期待してたが何もなかった。隠亡堀のモブといい実は経費削減?
  • 蛇山庵室もさしたる盛り上がりもなく伊右衛門が梯子登って、あっ! というところで暗転でおしまい。
    で、よかったと思うよ今回は。日常の全てが無に帰す、で終わって。そこでカーテンコールはいらなかったんでないかな。コクーンだからカテコ付、でなくてもいいんでないかと。
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クラックを法規制強化で止められると思ってる奴は頭がおかしい -- あるアレゲ人

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