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14010186 journal
日本

mujiの日記: 秀山祭九月大歌舞伎・幕見

日記 by muji

偶数日12日目。
即ち布施物、じゃねーよw即ち偶数日楽日。

最後までいいたいことがいろいろあった富樫だけど、
まずは12日間大過なくつとめられたことを喜びたい。
お疲れさまでした。
そして早く次を見せろとあらゆる意味で熱望してしまう富樫をありがとうございました(皮肉か←
 #そりゃあ南座ほどのリヴェンジ希望ってんじゃないけどあまりにもムラがありすぎて…
 #1日おきって案外タイヘンなんだろうけどだからといって25日間だと今度はまたry

と、そうなんだよね、大過なくといいつつも何しろ出来不出来がかなりはっきりしていて。
そこは幸四郎に一日の長だよなあ、というか、3日間代役までこなしてヲタから盛んに心配されている回遊マグロ状態にも関わらず、この1か月間で幸四郎の地力がどーんと増したかと。伊達に4番を打つべくして育ってきてないってヤツで。富樫は2回しか観てないが、弁慶は当然12回観た訳で(いや、正確にいうと、12回ほぼ「聴いてた」訳で←)、もうあの声質だけはどうにもならんのだろうなとある意味我慢大会になりつつもその発声でもってあれだけ押し切ってしまうんだから大したもんだなと。勿論9日目みたいに双方へろへろで、なんてときもあったが、概ね一定水準以上はキープしていたし。
富樫も初日はもう仁左衛門弁慶について行くのが精一杯でこりゃタイヘンだー(他人事)なんて観てたのが昨日の能吏振りだもんねあの声質だけど(大事なことなので2回ry)。今日、錦之助の山伏問答を改めて聴いていて、よく通る声であっても、本人精一杯詰問しているつもりでも、幸四郎の怜悧な切れ味には全然敵わないなあと。そこはそれ身内に弁慶も富樫もがっつり出来る先達が2人もいるんだからそりゃあいい切れ味にもなりましょうて。

ヲタだからいうんじゃないが、っていってるけど(どっちや)、そういう先達が身内にいない、どころか、2歳で親に別れ、一門の長は歌舞伎から離れ、一番近しい身内は4歳違いで庇護云々の話どころではなく、等々、梨園においてはかなり不利な立場にありながら、それでも紆余曲折を経てここまで、隔日であっても歌舞伎座で富樫をつとめられるまでになった、それがどれほどのことか。
息子が今年の浅草歌舞伎特集の別冊カドカワで、萬屋の立役系統は父が一代で築いたもの、みたいな発言をしていて、いやあなたそれはいくら何でも播磨屋に復したとはいえ歌六・又五郎兄弟に失礼でしょ…と意味なくあせったりもしたんだがw、今となってはまあ、実質そうなんだろうなあ、と。といって萬太郎が参考にしている気配は全くといっていいほどないんだが←
それはともかく、兄と同じ女方に進むのがイヤで(身も蓋もないw)立役選んで、ニンにない役ばかりやらされて(ってのは若干語弊があるが)、それでも自分に出来ることを積み重ねてきて、そして今がある、と。その間の諸々を思うと(まあ結構ええ加減だったところもあるらしいけどねw)、加えて南座のことを思うと、今月のこれだけの富樫を魅せてもらえたのは本当に忝く有難く、なんだよね……

でもいいたいことはいっとく←
自分が最後の出番だからって力んだな、と丸判りの名乗りの出だし。がたがたっと来なかっただけ学習したか←そこのトーンは一昨日のトーンがほしいなあやっぱり。がたがたっと来なかったにせよどこか引っかかりがあるっぽくて不発。富樫楽日でこれかぃ、とため息。
そこからどこまで持ち直すか、で、観ていると最初のやり取りから位置が若干弁慶寄り。おやそこまでパーソナルスペース広げてる? 弁慶遠慮してる? と思いつつの勧進帳読み上げは普通の位置。
 #今月ずーっと気になってた「最愛の夫人に別れ」、「ふにん」っていってたけど「ぶにん」じゃないかなあ…
 #とか思ってたら奇数日弁慶が「ふじん」といってて、ほえ? とw
 #奇数日弁慶は「御名を聖武皇帝と」で「みな」じゃなくて「おんな」読みにしてたし。どこまで変わってるんだか。
幸四郎も随分調子を戻してその分ただの大声になりかけてるなあ、と聴いてからの山伏問答。これが今日はかなり序盤から富樫が熱くなっていて、そこでもうそのたたみかけ具合? てな。総力戦テニスラリーの結果は富樫が勝ってるしw僅差じゃなくて目立つくらい弁慶側に来てた、なんて、もうホント南座を思うと信じられないくらい。あんなに遠慮していた富樫だったのに!w
さあそしてそもそも。ここは確かにはっきりと一旦間を取る。幸四郎はほぼ間なしで次につなげてたなあ。

九字の真言とはいかなる儀にや事のついでに問い申さん

!!! と小さくガッツポーズした次の瞬間のササ、何と、何とがへろっへろで握り拳をどうしようかとorzああもう何でひとつ出来たらひとつ出来なくなっちゃうかなあ!!!orzorzorz
 #しかもこのあとは現代劇寄りの九字の真言が待ってるから余計げんなり…
納得させられて座に戻る富樫、今日の一瞥はそれほど鋭くはなかった。ちら、って程度。
それで。
富樫楽日だけあって、今日はそこからが凄かった。まさに怒濤。
中啓取り落としからの呼び止め、甲への上げ方はギリ許容範囲。ああただ極まった姿勢での左裾がちょっと。ここに限らず、やはり裾の取り回しはよろしくない箇所が多いかと、と、それはさておき、そこで弁慶とやり取りしている時点で既に表情が大分変わっていて、台詞も抜ける危険のある箇所は慎重にかつしっかりと出していて、ヤァ如何様に陳ずるとも、通すこと、\まかりならぬ/からの表情が未だかつて観たことのない壮絶なまでの厳しさ。
端整な顔立ちの優が頭に血を上らせるとここまで恐ろしくなるのかと。夜叉、という単語が脳裏に浮かんだくらい。
そこまでして通さない意思を全身から迸らせていた富樫があってこそ、弁慶も全力で嘘を突き通し、それが判ったからこその富樫のはやまり給うな、の絶唱。全力で通すまいとした分全力で弁慶の嘘に嘘で応えて全身で涙を堪える。
12日間変わらず、硬く握り締められた右手に、伏せられた眼に、月後半は殊に泣けた。泣かされた。
延年の舞の最中の嗚咽を堪えていると見える表情は見間違いではなかったと思う。ここまでの富樫、ちょっといないんじゃないかな。錦之助ならではの、錦之助にしか成し得ない富樫。

まあ、なので更に役をしっかり固めてもらってw、遠くないうちに必ずやまたその勇姿を。
幕切れ直前、弁慶の合図待ちのときの横顔が何よりも端正でね。

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UNIXはただ死んだだけでなく、本当にひどい臭いを放ち始めている -- あるソフトウェアエンジニア

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