mukk_hosoの日記: 知っていても損をしない豆知識(5)
◆知っていても損をしない豆知識(5)『信用取引』の残高って何?(その2)
前回の「豆知識」シリーズでは「信用取引の残高」について、主に「信用取引」を利用して買った場合の説明をしましたので今回は、「空売り」についてお話しようと思います。ただし、本題に入る前に「用語」の整理をしておきたいと思います。
◇「信用取引」で知っておきたい用語
買い方 「信用取引」を利用して買っている投資家。
売り方 「信用取引」を利用して売っている(空売りしている)投資家。
空売り 保有していない銘柄を「信用取引」を使って売ること。証券会社から株券を借りて行ないます。
委託証拠金 「信用取引」で売買をする際に納める担保。証券会社によって誤差があるが、「最低30万円で約定代金の30%(委託証拠金率)以上」としているところが多い。現金、もしくは株券などの代用有価証券で納めます。
掛け目 「委託証拠金」を代用有価証券で納める際に、その担保価値を決めるために決められたもの。上場株式を担保とする場合は、時価の80%とされていますので、例えば100万円の委託証拠金が必要な場合、時価で125万円分の株が必要となります。
買い残 「信用取引」で新規に買われた株数のうち、まだ売却(精算、返済)されていないもの。株数、もしくは金額で表わします。将来の「売り要因」となります。
売り残 「信用取引」で新規に売られた株数のうち、まだ買い戻されて(精算、返済)いないもの。株数、もしくは金額で表わします。将来の「買い要因」となります。
期日 「信用取引」で新規に買いつけ(または売りつけ)をした際に、反対売買(精算、返済)しなければならない期限で一般的には6ヶ月と定められています。
金利 「信用取引」で買う場合、約定代金から委託証拠金を差し引いた残りの金額(通常、約定代金の70%)は証券会社から借り入れることになります。その借入額に対しては金利が発生し、買い方が負担します。日歩とも言います。
品貸し料 「信用取引」で売る場合、株券を証券会社から借りなければなりません。その借り入れ手数料のことで、売り方が負担します。通常品貸し料が発生することは少ないですが、「空売り」する投資家が増加するなどで、貸し出せる株券が不足すると発生しやすくなります。逆日歩とも言います。
追加証拠金
(追い証) 「信用取引」で新規に売買し、まだ返済していない投資家は、その信用取引を維持するために必要な最低委託証拠金率(20%としていることが多い)を維持しなければなりません。「信用取引」で買った(売った)銘柄が下落(上昇)して評価損が出たり、担保として差し入れた株が値下がりして担保価値が減ることで最低委託証拠金率を割り込むことがあり、この場合、追加の委託証拠金を差し入れなければなりません。追加証拠金の差し入れ期限は、それが発生した翌営業日の正午までとなっています。
実際に「信用取引」を行なう場合は、もっと細かく知る必要があります。今回は、レポートをお読みいただく際の用語ということで、あまり詰め込みすぎても消化不良となりますので、大雑把にわかっていただければよいと思います。
◇「空売り」の注意点は?
「現物取引」の場合、始めに買い付けて、その後に売るという取引に限定されます。しかし「信用取引」では、株価が上がったタイミングで「将来値下がりするとの判断」から『先』に売っておいて、『後で』買い戻す「空売り」を行なうことができますので、投資の幅を広げることができます。
ただ、信用取引で「売り」から始める「空売り」では、同じ信用取引でも「買い」から始める「買い付け」以上に注意する点があります。そのあたりを踏まえながら具体例で説明していきます。
投資家Aさんは、株式投資歴15年のベテランで「信用取引」による売買も10年以上行なっています。ただ、「空売り」はしたことがなく、相場全体も上昇後のもみ合いを続けていることから、「空売り」に挑戦しようと「空売り候補銘柄」を探しているところです。
ある日、B株が急騰するのを見て「上がった後は下がるかもしれない」と考えました。その後、B株は3日続伸となり4日目はもみ合いとなりました。B株の業績は、前期と比べて小幅減益で、これといった材料が見当たりませんでした。移動平均線との乖離もかなり大きくなり、そろそろ「上げすぎによる調整がある」と判断したAさんは900円で5000株の「空売り」をしました。
このときの委託証拠金は、約定代金である450万円の30%で良いので、135万円を現金で納めました。
その日のB株は880円で終わり、Aさんは「儲かるかもしれない」と自分の取引に少し自信を持ちました。Aさんと同じように「B株が今後下落するのでは」と判断した投資家は他にもたくさんいたようで、「売り残」も増加していました。
次の日、B株は20円高の900円で終わりました。Aさんは、少し待てば下げ始めるとの判断で、放っておくことにしました。ここから大変なことが始まります。
あくる日、B株は朝から買い気配が付き、値幅制限一杯のストップ高1000円となりました。Aさんは、あいにく出張でこのことを知ったのは場が引けた後でした。証券会社から連絡が入り、「追い証(追加証拠金)」を差し入れて欲しいと言われ、翌日正午までに5万円を差し入れなければならなくなりました。
ここで、補足ですが、「追加証拠金」の計算方法は次のとおりになります。
最低委託証拠金率は20%ですので、約定代金450万円の20%である90万円が最低維持しなければならない委託証拠金となります。Aさんは900円で5000株の空売りをしていますので、B株が1000円になった時の評価損は、50万円となります。実際に差し入れた委託証拠金は、135万円ですので、そこから50万円を差し引いた85万円が、現在の委託証拠金の評価となります。これが最低90万円なければなりませんので、不足分5万円が「追加証拠金」として徴収されます。
Aさんは5万円くらいなら仕方がないと判断して追い証を支払い、「今後上昇したらさらに空売りをしよう」と考えて、追い証とは別に200万円納めることにしました。
その後、B株はもみ合いとなり、そろそろ本当に下落するのではと考えたAさんは、1000円でさらに3000株を「空売り」しました。
そして、その次の日、突然の業績上方修正が発表されB株は急上昇、150円高の1150円となり、Aさんはもしかしたら本当にまずいことになるのでは(このまま上昇し続ける)という考えが頭をもたげ始めました。しかし、明日は少し押し目をつける場面があるだろうとの判断で、その日は様子を見ることにし、明日、下がったところで損失を覚悟で買い戻そうということにしました。
そして、次の日、朝起きたときから嫌な予感はしていたのですが、NYダウが大幅高となっていました。Aさんはこれは大変なことになると思い、とにかくいくらでも良いから買い戻そうということで、「空売り」している8000株全てを成り行きで買い戻す注文を入れました。
しかし、Aさんと同じように「空売り」をしている他の投資家も同じように買戻しの注文を入れ、NYダウの上昇から相場全体の動きも非常に強いため新規の買い注文も入ってきます。B株は売り注文に対して買い注文が非常に多く、気配だけが上昇し、1350円のストップ高でようやく買い戻すことができました。
この取引における損失は、最初の900円で売った5000株の分で225万円、1000円で売った3000株の分で105万円、合計330万円となってしまいました。
最後の1350円まで行った過程は、いわゆる「踏み上げ」と言われるもので、「売り方」が買戻しをせざるを得ず、そこに新規の買い注文も入ってきて、「買戻し」が「新規買い」を呼び、「新規買い」がさらに「買戻し」を呼ぶもので、株価は理論上、無限に上昇する(数字の上限は無限ですので)という売り方のパニックから来るものです。
ここで言いたいのは、「空売り」は怖いからやめた方が良いということではなく、買いでも売りでもルールを作ってそれを確実に実行するということです。
Aさんは何度かやってはならない過ちを犯しました。
例えば、
・900円から1000円に上昇した時に「損切りの買戻し」をしなかったこと
・さらなる損失を重ねることとなる追加の「空売り」をしたこと(「買い」で言えばナンピン)
・業績の上方修正にもかかわらずその日のうちに買い戻さなかったこと(「負け」を認める決断をしなかったこと)
・そもそも「売り残」が増加している銘柄を「空売り」したこと
ケンミレでは、ロスカットルールを作って実行することを推奨していますが、これは「現物取引」でも「信用取引」でも同じです。株式投資において、絶対はありません。ですから、自分の予想に反した動きをした場合には、大きな損失となる前に手仕舞いをするということが重要です。少額でも損失したときの気分は悪いものですが、株式相場が終わってしまうわけではなく、現金を持っていれば次のチャンスで取り返すことも可能です。
そして、「売り残」が増加している銘柄については原則「空売り」を避けた方が良いということもあります。正確には、「貸借倍率」というものと「売り残」の増加傾向を見ていきます。
詳しくはまたの機会にお話ししたいと思いますが、「貸借倍率」は「買い残」÷「売り残」で計算され、将来の「売り要因」と「買い要因」の比率を表わしています。
基本的に株式投資は「買ってから売る」ものですから通常は買い残の方が多く、したがって「貸借倍率」は1倍より大きくなっており、2桁以上の倍率になっているものも見られます。「貸借倍率」が小さい銘柄は、「貸借倍率」が大きい銘柄と比べて強弱感が拮抗していると言うこともでき、何かのきっかけで株価が一方向に振れやすくなっているとも言えます。
ですから、「貸借倍率」が小さくて、かつ「信用残」そのものが多く、しかも直近で増加傾向にある銘柄は、リスクを排除するという点から見れば、上下どちらかに大きく動く可能性が高いため「売り」「買い」の別なく投資対象からはずすことが無難だと言えます。
今回、「信用取引」についての基本的なことを取り上げさせていただきましたが、「信用取引」はその仕組みと注意点を十分理解した上で行なえば、有効な投資方法になり得ます。
また、前回も申し上げましたが、「信用取引」が存在する以上、これを行なわない投資家も「信用取引」が市場に与える影響を「知らないよりは知っていた方が良い」のは当然です。