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日記

nabetaの日記: フクシマ・ゲーム

日記 by nabeta

トキコと夏祭りの縁日に出かけたときのこと、トキコは友人のフミエを縁日の雑踏で見つけてフミエの連れの男と4人で喫茶店に入る。トキコとフミエは中学からの友人だからいいものの、オレはトキコと知り合ったのは数ヶ月前だし、フミエも初対面なら相手の男はなんか年上っぽいし、全然話題を見つけようもなくて困っていた。
それでも夜更けにアベックで夏祭りを歩いているのって無用心だし、四人だったら心強いよね、とかフミエが言い出すのを、トキコが「だねー」とか同意してしまうものだから、状況の不明な男は唯々諾々としている。そんな会話も弾むはずもない雰囲気のなか、喫茶店で花火の打ち上げが始まるのをケータイなんかをいじって時間をつぶしをしていると、トキコはだしぬけに『フクシマ・ゲーム』をやらない?とか言い出す。
なんか名前から嫌な予感のオレを置き去りに、あとの3人はやる気満々、ちょっとまてよ、オレそのゲーム知らねーし、なんなんだよ、と不貞腐れてみせるとフミエが、その『フクシマ・ゲーム』の説明を始まる。
内容的には女子高生のあの娘とあっちの彼が付き合ったりしたら、お似合いだよねー、えーっそれってありえなーいみたいな意味の無い会話を増殖させるためのゲームのパターンらしい。
つまり、もし近所にすむ友人が原子力発電所の関係者で、原子力発電所の周囲に深刻な危険が迫っているときに、その事実を友人は自分たちに伝えて避難を勧めてくれるか、それとも周囲の混乱や、非難が自分に向けられることを恐れて隠し通そうとしたり、知らなかったとして自分も被害者であると主張するか、とか。もし自分の叔父が町役場の職員で原子力発電所に危険状況の情報を持っているとき、彼は自分に避難を勧めてくれるだろうか、職務や人間関係上避難することができない状況に彼がいるとき、自分以外が故郷を捨てて安全な場所に去ってしまうことに何らかの葛藤を覚えて、避難することを止めたり、勝手に逃げて言った人達を罵倒するような態度を取るか、とか、そして、自分の恋人は原子力発電所に危機を明確に認識したときに、正しく自分たちを守る行動に出てくれるだろうか。近所付き合いや職場の人間関係から非難することを躊躇ったり、もし自分ひとりが取り残されるような状況でも相手を守るために積極的に行動してくれるか、をお互いに発表しあうゲームなのだった。
まあそんなことなら簡単だ、オレ避難するの面倒だから逃げねーし、とか簡単に答えると、トキコにアンタがどう考えるかなんて関係ないのよ、と小突かれた。
要するに誰それは、こうなんじゃない、そうかもー、みたいに好き勝手に批評推測するのがゲームの基本なので、こちらか側から能動的に働きかけるのはダメらしい、つーか、オレそういう少女趣味ついていけないんだけどな、帰っていいすか状態のオレをよそに、三人はそれぞれの話の内容にかなり盛り上がっている。フミエの連れの男はこういう話に如才無く乗るのがうまいらしくチキンだけど熱愛の純情君という評価になり、オレはバカなので逃げないし、逃げた連中を罵倒するサイテー男という評価に落ちつたらしい。それから花火が始まって、喫茶店からでたので話はそれっきり。あれからトキコとも会っていない。

※この話はフィクションです
新潮2012-08世界同時文学を読む【第十三回】 都甲幸治「ユダヤ人とはなにか」ネイサン・イングランダー『アンネ・フランクについて語るときに我々の語ること』で思いついた断片

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アレゲはアレゲを呼ぶ -- ある傍観者

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