numaの日記: ジョン・ブラナー著「原始惑星への脱出」(久保書店)
ジョン・ブラナー著・村田靖子訳「原始惑星への脱出」(原題: "Polymath" by John Brunner) を読んだ.久保書店の「SFノベルス」の一作であり, 今年に入って読み通した最初の SF である. 一時期はもっとたくさん読んでいたものだが,最近は歴史物・時代物に流れてしまったせいで,SF 読書量はだいぶ減ってしまった. この本も,別に最近買ったものではなく,数年前に入手して,ずっと前から積んであったものである.さらに言えば,奥付には1979年初版とある,その第1刷である.
内容は,帯やカバーの紹介文がだいぶ出鱈目なので,書き直してみると,こんな感じだろうか:
超光速航法が開発され,他星系に進出し居住可能な惑星に植民することが一般化した未来,そんな植民惑星のひとつである惑星ツァラの主星が超新星爆発を起こした. 惑星の昼の側は瞬時にして壊滅し,夜の側も数時間後には同じ運命をたどることがわかり,生き残った住民はかき集められるだけの人と物資を宇宙船に載せて脱出した. 脱出した方向が未探査星域だったため,とりあえず居住可能な惑星を見つけ,そこに不時着した.そこは母星から60光年,未知の生物が棲息する謎の惑星だった….
もっとも,この小説が描いているのは,パニックものとして面白そうな脱出劇や,サバイバルものとして描けそうな不時着直後ではなく,不時着から数ヶ月後から始まる,寄せ集めの難民たちの,生存のための自然や対立グループとの戦いである.中心テーマになっているのは,生き残りの中でどうやって主導権を確立するか,という点であり (ネタばらしになるので詳細は避けるが,眉村卓の「司政官」シリーズを思わせるところもある),その点はカバー絵や惹句がどうも外しているところである.大傑作とはいわないが,そこそこの佳作であるこの作品が,売れなかったのも無理はない.(蛇足: 訳文中,「グランド・リーヴ」という謎のカタカナ語が出てくるが,これはたぶん「上陸休暇」のこと.「アキュムレータ」という用語もあるが,これは何だろう.序盤では酸素ボンベの充填,中盤ではレーザー銃の充電で出てくるが,両方できる機械というのも考えにくいし.)
まあ,早川書房と東京創元社以外のすべての出版社が,SF ものシリーズを始めては敗退しているのだから,しょうがない.この本も,もう入手困難だろうし…と思ったら,まだ売っていた.
久保書店の在庫に, まだ残っているようである.おお,チャンドラーの「宇宙の海賊島」(銀河辺境シリーズの一編で,「夢見る者が死んだとき,その者が見ていた夢はどうなるのか」という名文句がある.)や,グリンネルの「時間の果て」(どんな作品かもう忘れているが,結末の清々しい感じが印象に残っている) もあるぞ.70年代当時の,中堅どころの作家の,オーソドックスな作品が並んでいる.まあ,とびぬけた傑作や問題作もなかったろうけれど,これだけ並べば,そこそこいけたような気もするが.
久保書店は今やエロ漫画の専門出版社と化しているが,なんということだ. ダーティ・松本やケン月影を売りながら,こういうのもずっと売っていたのか. うーむ.こうなったら他のも片っ端から買いまくろうか.
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