numaの日記: 「進化の設計者」(林譲治著)
林譲治著「進化の設計者」を読んだ。同著者の近未来SFとしては「記憶汚染」以来の長編である。もっとも、共通するのはユビキタス・コンピューティングの発達した30年くらい先の近未来日本が舞台となっているということだけで、設定にも登場人物にも共通点はない。 「記憶汚染」の場合、ユビキタス社会の状況や登場するAIの説明が長すぎて(いや、話に全然絡まないというわけではないのだが)、なかなか本題が進まないところがあったけれど、この作品ではそのあたりは、ごくあっさりと済まされている。
帯には「人類は、神によってデザインされたのか?」というあおり文句が書いてあり、山本弘著「神は沈黙せず」みたいな方向の話かと思ったが、さすがに全然違っていた。だいたい、インテリジェント・デザイン説を主張する宗教団体は登場するけれど、登場人物一同、そんな戯言に耳を貸さないので、そういう方向を期待しても無駄である。
問題の宗教団体はアクション場面を作るためのネタという感じで、お話は、化石から現在進行中の事態に至るまでの幅広い「進化」(というのか、環境変化に対する適応というのか)が扱われていて、ちょっと地味ではあるが、楽しめた。
登場人物の名前が日本海軍の艦艇から命名されているのには笑いました。なんせ、名前の出てくる日本人が、どれもこれも全部艦の名前だもんね。中には、姓名ともに艦名の人物までいるし。さすが仮想戦記作家。
以下余談。
なぜか引き合いに出してしまうのが「記憶汚染」。この小説、去年の今頃読んだのですが、実は伝奇SFだった、というのが一番のトリックでございました。仮想戦記作家が伝奇小説書くのは反則ですよねえ。なんせ伝奇小説というのは、大雑把にいってしまえば、「我々の知っている歴史の裏では、こんな連中やあんな連中が、こんなことやあんなことをやっていたのだ!」という話だけれど、仮想戦記は、その表の歴史自体をさらっと変えてしまって、「このお話の中では、歴史はこうなんだもんね!」と主張するわけだから。
ところで、著者の日記を見ると、SF作品以外は書名が出てこないので、仮想戦記やガンダム小説や軍事解説はいったいいつ書いているのだろう、と疑問に思ってしまいます。まあ、猫写真サイトだと思えばいいんですが。 最近は近所の野良ちゃんじゃなくて、室内の白い子ばかり出てくるところを見ると、ついに自宅で飼いはじめたのか。
実はこの著者、私と誕生日が同じだったりする。
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