oruseの日記： 新しく古い資本主義 1
古い概念に「資本家と労働者」という考え方がある。資本家は資金を用意して働く環境を用意し、労働者は言われたとおりに労働し対価として賃金を得る。
これは現代では成り立ちにくい。利潤を得るには資本力があるだけではダメで、新しい価値を生むビジネスモデルの創造が必要になる。このビジネスモデルの創造は誰にでもできるものではない。一部の才能と意欲を持った偉才によって生み出され、凡才はそのビジネスモデルに従って労働力を提供して賃金を得るしかない。すべての者に新しい価値を生むビジネスモデルの創造を求めても詮無きこととしか言いようがないのだが、それを求め「お前は無能だ」と言ってしまったら社会は崩壊する。仮にそれを言う者にもそれができない場合はお笑いにしか思えないのだが、現実の社会では、古い時代の役職の付き方と今必要とされる能力に不一致が生じており、十分にあり得るから恐ろしい。それほどに新しい価値を創造するのは難しく、極々一部の偉才にしかできない。古い時代には新しい技術とそれを活かすビジネスモデルは主に米国から導入してきており、その時代に必要とされた技能は英語力とコミュニケーション能力であった。これらは今でも有用な技能ではあるが創造力ではない。その時代のビジネスを主導してきた者たちの多くはそもそも新しいものを自分では創造してはいない場合が多いのだ。
時代は変わり、古い資本主義は成り立たなくなったが、その基本である資本を投じ創造する者と労働する者の二者の構図は変わらない。昔と違うのは、与えられたビジネスモデルを遂行するにも、単純な労働ではなく、高度な技能が必要になる場合がある点であろうか。ただ、技能は凡才であっても学習すれば得られるものであり、その難易度により、報酬の差異が生じることはある。新しい価値を生むビジネスモデルの創造を凡才に求めること自体が無理筋というものであるが、それができなくとも、偉才の創造したそれを遂行できるだけの技能があれば十分に暮らしていけるだけの報酬が得られ、豊かに暮らせる世でなければその国は衰退していくだけとなる。主流をなす中間層を含み社会全体を豊かにするためには、創造する者と労働する者の両者が必要であり、それぞれに適した境遇が必要になる。残念ながらそのどちらの育み方も処遇も芳しくないようである。必要とされる技能の取得もおぼつかない場合もあり、その場合は下層となる危険性を残す。リスキリングはよいと思う。だが、リスキリングにより得られるのは技能であり、創造ができるわけではなく、精々下層を抜け出せるだけである。リスキリングでDXを実現……はほぼないだろう。大部分を占める凡才たる一般の労働者が安心して暮らせ、将来に不安がない社会でなければ国の衰退は避けられない。下層はある程度は生じるものだが、比率としては低い必要がある。そうでなければ中間層が支えきれない。
おそらく……創造者は生まれず、ごく僅少に生れ出た偉才は周囲の無理解によって潰される一方中間層に必要な技能は高度化され、ついていけないものが続出し年齢を重ねるにつれ技能の習得も困難になり次第に下層となっていく。その結果下層の比率は上がり国力が低下して社会構造としてのセーフティネットも機能不全となる。創造のできない技能の優れたものだけがとりあえずの成功者となり、社会を支える主力となるが、この層こそ新たに生れ出て変化をもたらすであろう創造ができる偉才を潰すのだ。古い時代に米国の新しい技術を真似ただけの成功体験も持つ凡才は、往々にしてそうなる傾向が強かったように思う。
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古い概念に「資本家と労働者」という考え方がある。資本家は資金を用意して働く環境を用意し、労働者は言われたとおりに労働し対価として賃金を得る。
これは現代では成り立ちにくい。利潤を得るには資本力があるだけではダメで、新しい価値を生むビジネスモデルの創造が必要になる。このビジネスモデルの創造は誰にでもできるものではない
もうこの時点でおかしいでしょう。資本家が提供するのは資本（資金）です。「新しい価値を生むビジネスモデル」とか発明等を創造して資金調達を行い、社長とか CEO とかになって働くのは「資本家と労働者」の括りで言えば（経営層の）労働者です。
資本を提供するものの代表は株主ですが、株主がビジネスモデルを創造したりはしません。発達した資本主義社会においては株主と経営者は分離されています。