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1093903 journal
日記

phasonの日記: 天の光はすべて星(ただし準矮星や惑星も含む) 1

日記 by phason

"A compact system of small planets around a former red-giant star"
S. Charpinet et al., Nature, 480, 496-499 (2011).

タイトルには特に意味はないが,何となくフレドリック・ブラウンな気分だったもので.

表のトピックでは地球サイズの惑星が出ているが,こちらも地球サイズの惑星に関する話題.ただしその状況は大きく異なる.

さて,準矮星という存在がある.これは主系列星(まあ,いわゆる通常の恒星)と同じようなスペクトル(=温度)を持つにもかかわらず,明るさが数分の一と暗い存在だ.同等のスペクトルを持つ主系列星を元に例えばB型準矮星(B型の主系列星と同じ温度だが,明るさがかなり低い)などと名付けられる.
今回報告されているのは,高温準矮星に分類されるB型準矮星の観測で,準矮星に非常に近接した軌道を持つ惑星が2つ見つかった,というものだ.

高温準矮星の元になるのは,赤色巨星であると考えられている.恒星はまず水素を燃料として核融合を起こしヘリウムが蓄積,水素が減少してくると中心核を支えきれず,中心部が重力で収縮を始める.これに伴い位置エネルギーが解放され外殻が加熱,全体としてはどんどんふくらんでいく.これが赤色巨星だ.この後中心核が十分縮むと今度はヘリウムが核融合を起こし始めるのだが,その前に何らかの影響により外層が吹き飛ばされると,コンパクトで重い核だけが燃焼を続けるため高い温度と低い輝度を併せ持つ高温準矮星となると考えられている.この外層がどうやって吹き飛ばされるのか?という部分は未解明なのだが,例えば連星系でのもう一つの恒星により引きはがしなどが想定されている.

今回報告されている系は,KIC05807616と名付けられている系であるが,その観測結果を詳細に分析すると,B型準矮星に一般的な輝度変化(恒星音波振動による輝度変化)に加え,微弱な振動が発見された.著者らは,この小さな振動に関し,2つの惑星が恒星のごく近傍を周回していると考えるときれいに観測データを説明できることを示した.
得られたパラメータと主星に関するデータをまとめると(なお,以下の「太陽」は我々の恒星系の太陽を指す),

主星
温度:約28000 K
質量:太陽質量の半分程度
半径:太陽半径の2割程度

惑星1
推定表面温度:約9000K
推定半径:地球半径の0.76程度
推定質量:地球質量の0.44程度
公転半径:0.0060天文単位(太陽半径の1.3倍)

惑星2
推定表面温度:約8000K
推定半径:地球半径の0.867程度
推定質量:地球質量の0.655程度
公転半径:0.0076天文単位(太陽半径の1.6倍)

つまり,地球と似たようなサイズの惑星二つが,主星の極近傍を高速にぐるぐると回転している事となる.
ここで注目するべきは,その主星への近さである.この公転半径,主星である準矮星がかつて赤色巨星であった時代を考えると,明らかに表層内となる.つまりこれらの惑星は,一度恒星に飲み込まれていたわけだ.これまで,赤色巨星化した恒星に飲み込まれた惑星はおそらく破壊されると考えられてきたが,今回の発見はこれに対し疑問を投げかけるものとなる.
ただし惑星がそのまま生き残ったとは考えにくく,著者らも,今回発見された2惑星は元々巨大惑星だったものが,飲み込まれた際に外側は吹き飛ばされ核部分のみが残存したのではないか,と推測している.
また面白い仮説として,この赤色巨星内部に一度吸い込まれた惑星が赤色巨星外部を吹き飛ばすプロセスを引き起こし,主星の準矮星化を引き起こした可能性を指摘している.これら2つの惑星は当初はもっと離れた位置にあったと考えられるが,主星の膨張に伴い外層のガスと重力により相互作用し,ガスに角運動量を与えるかわりに自らは減速,ガスは遠くに放り出され,逆に惑星は天文学的スケールでは「つい先日」にあたる1800万年ほど前に恒星内部にまで落ち込んできたと考えるわけだ.そうして十分なガスが引きはがされると重くてコンパクトな恒星本体のみが残り,内側から生き残っていた惑星の核(2つ)が姿を現し現在に至る.

まあ何にせよ,宇宙はずいぶんとダイナミックなことが起こっているものである.

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  •  連星系でないB型準矮星(sdB)の生成メカニズムがよく分かっていなかったところで、面白い説が出てきたものです。

     今のところは提案レベルであまり詳細な検討はされていなさそうではありますが、従来の「小型の白色矮星の連星系が合体」という説よりも高い頻度で起きていそうな印象ではあります。

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あつくて寝られない時はhackしろ! 386BSD(98)はそうやってつくられましたよ? -- あるハッカー

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