phasonの日記: 自爆攻撃には老い衰えた労働者が最適!(ただしシロアリ) 9
"Explosive Backpacks in Old Termite Workers"
J. Šobotník et al., Science, 337, 436 (2012).
蟻の社会では,巣の防衛などにあたる個体の中には多くの老齢の働きアリが含まれることが知られているらしい.老化により能力が低下した労働者なので,使い捨ての駒として使用した場合にも巣全体への損害は少なく,コスト的に有利なためだと考えられる.
さて,蟻では無いが,シロアリにおいても働きアリが戦闘に加わる種がいることが知られている.一部のシロアリの種においては,戦闘の主役である兵アリに加え,一部の働きアリがいわば自爆攻撃とでも言うような手法で戦闘を援護する.敵との戦闘中に背中部分が裂け内部に蓄積された粘液質の毒液を放出,敵を撃退するのだ.しかし当然のことながら,働きアリの仕事は多岐にわたり,このようないわば副業である自爆攻撃のための器官は他の仕事の効率を落とすはずだ.前述のアリの例を念頭に置けば,このシロアリの例においても老齢の働きアリが優先的にこの自爆攻撃に割り当てられるのでは無いか?というのは自然な発想である.
著者らが調査したのは,Neocapritermes taracuaと呼ばれる新熱帯区(中南米の熱帯域)に生息するシロアリだ.
この種の働きアリをよく観察すると,働きアリには異なる外観の2種類が存在することがわかった.1つは特に特徴の無い働きアリ(本文中では,White Workerと称される)で,もう一つは胸-腹の境界部分に2本の青い帯が浮き出ている働きアリ(同,Blue Workerと称される)である.
この見た目の異なる働きアリは,敵(他のシロアリ)に会った際の行動にも大きな違いが存在した.Blue Workerの方がより激しく敵に噛みつき,それで駄目なときには裂けて毒液を放出するのだ.
さてこの青い帯,結晶質のタンパク質の蓄積に由来しており,そのタンパクを分泌している(と考えられる)線はBlue WorkerのみならずWhite Workerも持っている.さらに詳しく調査すると,この青いタンパク質の蓄積量と,働きアリの顎の劣化には非常に良い相間が見受けられた.シロアリの顎は成熟後には劣化していく一方なのだが(人間の永久歯と似たようなものである),より顎が劣化しているほど,つまりより年をとった働きアリほど青色のタンパク質の蓄積が多いことになる.そしてこのタンパク質の量が多いほど,裂けたときに放出される毒液の毒性が高い.ただし,青色のタンパク質部分をWhite Workerに移植しても,(元のWhite Workerよりは毒性が上がるものの)老年労働者である根っからのBlue Workerに比べればその毒性は低かった.つまり,毒性はこのタンパク質にさらにプラスアルファで,老齢の働きアリが出す何らかの分泌物が重要となるらしい.
さてまとめると,このシロアリにおいては,働き続けて体のあちこちにガタが来て労働者としての能力が落ちてきた働きアリは,体内で毒物を生成して敵と戦う際の自爆攻撃要員に仕立て上げているらしい.まあ確かに,体の衰えにより若者に比べて仕事が出来ない労働者を使い潰した方がコストパフォーマンス面では非常に有利で納得がいくわけではあるが,さんざん働いた後は自爆かと思うと何ともこう.
色が (スコア:1)
出向 (スコア:0)
あーなるほど。
散々頑張ってきて40歳くらいになったら子会社に出向して、
そのまま子会社ごと倒産させたりする、あの感じですね。
世知辛い世の中じゃ。
ミッシングリング (スコア:0)
> より年をとった働きアリほど青色のタンパク質の蓄積が多いことになる
ブルーとホワイトで種類が違うわけではないのだとすると少し疑問が。
ホワイトからブルーへ変化するのなら、中間状態のライトブルーはどこへ。
青色タンパクが閾値をこえるとブルーに変化するのだろうか。
謎ですね。
Re:ミッシングリング (スコア:1)
話をわかりやすくするためにあたかも二極化してるように書いちゃいましたが,実を言うと途中のやつもいるんですよ.
まあそういう意味では今回の日記はミスリーディングな書き方をあえてしてしまいました.
#論文中で(恐らくわざと)付けられたBlue WorkerとWhite Workerの名前の対比が面白かったもので.
Re: (スコア:0)
コメ元ACです。
そうでしたか。わたくし見事に釣られてしまいました。
示唆に富むシロアリの話ですが、
現代日本のようなブラックがないだけまだマシなのかも。
#働きアリが嫌なのでキリギリスになろうと思う ヾ(ーー )ォィ
ほう、これは… (スコア:0)
.ではなく。を使ってもらえれば読みやすい
でも面白い話です。一般企業でも積極的に使えそうな手ですね。
Re:ほう、これは… (スコア:1)
学術系の文章って「,.」の組み合わせが結構多くて,それに慣れてるためFEPの設定自体でこれにしちゃってるんですよ.ご勘弁を.
#その手の書類もこれで書いてます.
しかし実は,句読点に関する最後の文部省通達(だと思う)によれば横書きでは「,。」を使えとなっているんで,政府方針から見ると「.」は邪道なんですが.
>一般企業でも積極的に使えそうな手ですね。
いや,まあ,使えそうだとは思うんですが……使って良いのかと言われると躊躇してしまうと言うか.ある種のブラック企業ですよね.
#普通のブラック企業では若手が死ぬが.
FEP(オフトピ) (スコア:1)
FEPなんぞという古い用語(しかも今では全く正確ではない)を使ってしまった……
油断してると未だにFEPとか書いてしまう.三つ子の魂というやつですかね.
Re: (スコア:0)
若手には体力を使いつつ知力を培ってもらい、
長老たちには体力を使わず知恵を使ってもらう、
そのために年功序列がある……はずなのじゃがのう。