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日記

phasonの日記: やわらかタッチパネル(すごく伸びる) 1

日記 by phason

"Higly strechable, transparent ionic touch panel"
C.-C. Kim, H.-H. Lee, K. H. Oh and J.-Y. Sun, Science, 353, 682-687 (2016).

タッチパネルは現在では実にさまざまな場所で利用されているデバイスである.今後さらに利用は拡大すると考えられているが,例えば人体埋め込みやら皮膚や衣類の表面への貼り付け的な用途を目指したフレキシブルなタッチパネルの開発も盛んに行われている.今回報告されたデバイスもそのようなものの一つであるが,特徴はとんでもなく伸びることと透明度が高いことだ.

どのようなものかというのは,とりあえずまあSupplementary Materialsのムービーでも見ていただきたい.ほぼ出オチというかこれが全てなのであるが,まあ,こういうものである.

こいつの構造を簡単に説明すると,まずタッチパネル本体は単なるヒドロゲル(保水性のあるゲル.要するに紙おむつの中身のようなもの)に塩化リチウムを溶かし込んであるだけの物体だ.一応,塩の水溶液と同じようにイオン伝導があるので,交流なら流すことができる.この四角形の「タッチパネル」(という名のゲルの板)の頂点4箇所に電極を付け,全ての電極に正電圧を印加する.すると電極の表面には負イオンが貼り付き,いわゆる電気二重層が構成される.このため最初は微量の電流が流れるが,貼り付いたイオンによる電場が印加した電圧による電場を打ち消したところでそれ以上イオンの移動が無くなり,電流もゼロになる.なお,負極はアース(人体に貼り付けて使う場合には人体)にでも貼り付けておく.
ここでタッチパネルのどこかを指で触ったとしよう.指(人体)はアースに繋がっているので,これは指を介して新たなコンデンサが生み出されることに相当する.
つまり今までは回路図で書けば
電極---||(電気二重層によるコンデンサ)-----抵抗-----アース
だったものが,
電極---||(電気二重層によるコンデンサ)-----抵抗------||(指によるコンデンサ)----抵抗----アース
と,いきなりコンデンサが挿入された事に対応する.このため指で触れた瞬間に,四隅の電極には電流が流れる.この時,四隅の電極のどこにどれだけの電流が流れるかは指のポジションに依存するので(指に近いところの方が良く流れる),これを利用してタッチされた位置を検出することができる.
……というかまあ,この原理自体は,ヒドロゲルを使っている点を除けば静電容量式のタッチパネルそのものである.

では今回のこのデバイス,既存のものに比べた売りはなんなのだろうか?
まず,材質がヒドロゲル(とその中に溶け込んでいるイオン)であるため,伸縮自在である.ムービーでも出てきたように,10倍に引き延ばした状態でも正常に動作する.伸び縮み自在でフレキシブルなタッチパネルだ.
そしてもう一つ,透明度が高いと言う点も挙げられている.何せ基本構造部分はタダの水溶液とほぼ変わらない.そのため光の透過率は98%を超える.また,ヒドロゲルと塩水みたいなものなので,生体に対する親和性も高い.

とは言え,これを何に使うんだというと疑問があるのも確かである.面白いっちゃあ面白いが,使えるかどうかとなると,うーむ……

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  • by Anonymous Coward on 2016年08月22日 4時30分 (#3067383)

    コレの上に圧縮できる素材の層と伝導性のあるアースの層を重ねて、
    更に上に皮膚っぽい見た目のシリコン重ねてアンドロイドの触覚付き人工皮膚とか出来ないかな。

    ……伸縮性と組成が水に近いって事以外何にも活かせてないか……

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