skimsrの日記: ashi.com ノーベル賞特集 5
日記 by
skimsr
asahi.comのノーベル賞特集です。
小柴さん・田中さんのノーベル賞受賞理由となった研究の説明が,FLASHアニメーションで見られます。過去の受賞者の特集もあります。
asahi.comのノーベル賞特集です。
小柴さん・田中さんのノーベル賞受賞理由となった研究の説明が,FLASHアニメーションで見られます。過去の受賞者の特集もあります。
目玉の数さえ十分あれば、どんなバグも深刻ではない -- Eric Raymond
一般向けじゃあ仕方ないけど (スコア:1)
「田中さんの方法」として説明しているのは、現在僕なんかも使っているMALDI-TOF/MS。Hillenkampが考案したイオン化手法MALDIと、すでにこれらのMS以前に考案され「従来の方法」であるEI(electric ionization)-MS.CI(chemical ionization)-MSの装置にも採用されていたTOF(time of flight:飛行時間)型のイオン質量測定法を組み合わせたものです。
現在、使われている装置の原理としての説明としてはいいのですが、これだとまさに僕が危惧してたように田中さんがMALDI-TOF/MSの考案者、という誤解を免れないような。
それと「熱による分解」はあまり正しくない。イオン化させるために使うレーザー光のエネルギー自体が大きいので低分子量イオンに分解されてしまうだけで。熱も多少はあるでしょうけど、電磁波による励起が主なわけです。そしてマトリクスの役割というか、なぜそれを混ぜると安定な高分子イオンが飛ぶかという機構は、実はまだ判ってないのです。
Re:一般向けじゃあ仕方ないけど (スコア:1)
実は,私もその辺の違いはよく分かっていなのです(情けなや)。田中さんの成果は,イオン化する所でたんぱく質分子が分解されないようにした,と認識しています。これで正しいんでしょうか。
週刊ポスト誌で連載している「メタルカラーの時代」で,ちょうと田中さんへのインタビューが掲載されています。今週号と来週号です。田中さんの発見のくだり(間違えてグリセリンを混ぜた)については,来週号に掲載されるようです。
Re:一般向けじゃあ仕方ないけど (スコア:2, 参考になる)
その認識で正しいです。
ですが田中さんの方法はそのためにマトリクスとして金属粒子を用いていて、この点が有機化合物をマトリクスとして使っている現在のMALDIとは決定的に違う点です。
MALDIの開発者はHillenkampですが、彼がそのために田中さんのSLDを参考にしたかどうかは判らない、田中さんの研究とはindependに開発していた可能性は十分に考えられて、発表時期(それも田中さんのはその時点でローカルな、日中ジョイントなので国際学会とは言いがたい、学会発表の要旨集に載っただけだった)だけで遅れをとったんじゃないかと思う人も多いようです。
だから、本当に現在のMALDIの発展に田中さんの研究が不可欠だったのかということについて疑問を持つ科学者も多いです。実際、一部の科学者が田中さんの受賞に抗議しているという報道もあって、これがマスコミの曲解から逆に誤解を受けそうで怖いのですが、彼等の多くは田中さんが受賞したことに抗議しているのではなくて、田中さんだけが受賞し、Hillenkampが受賞しなかったということに疑問を持っています。国内でもきちんとMSの研究をしている理研(播磨)の谷口先生なども、この受賞の解説記事(「細胞工学」誌12月号)でHillenkampも受賞すべきだったのではないか、と述べてますし、僕も同意見です。
Re:一般向けじゃあ仕方ないけど (スコア:2, すばらしい洞察)
>ですが田中さんの方法はそのためにマトリクスとして金属粒子を用いていて、この点が有機化合物をマトリクスとして使っている現在のMALDIとは決定的に違う点です。
なるほど。同じ原理をもつ別の手法を先に発見したのが田中さんで,でも現在実用化されている手法とは異なる,という事ですね。
ノーベル賞の選考に関しては,原理の「第一発見者」である事が重要視された [asahi.com]ようです。
誰に賞を与えるのか,線引きは難しいと思います。手法の実用化に多大な貢献をした科学者に与えるのも正しいですし,『第一発見者』に与えるのも正しいと思います。両方に与えられれば一番良いのでしょうけど…。
「ノーベル賞」という言葉のインパクトが大きすぎて,田中さんの研究内容が報道の焦点にならないのは残念ですね。
Re:一般向けじゃあ仕方ないけど (スコア:1)
ところでノーベル賞の場合はインパクトも大きいだけに選考結果が論議を招くことも結構ありましたよね。
パルサーの発見のとき、本当の第一発見者だったベルではなくて、そのボスのヒューイッシュが受賞したこととか、DNA2重螺旋構造のワトソン&クリックもダークホースに近かったし、しかも本当ならもっと評価されてしかるべきだった、DNAのX線解析を行ったフランクリンが(女性研究者に対する偏見も加わって)全く評価を受けなかったこと、などなど。
で、今回の受賞に関して言うならば、ESIのFennに1/2, MALDI,SLDの田中氏、Hillenkampに1/4ずつ、なんてのだったらよかったのになあ、と思ってたりします。これは今回1/2を受賞した、NMRによるタンパク構造解析のWuthrichを過小評価しているのではなくて、来年に単独で受賞させてもよかったんじゃないかと思うからです。
などとまあ、こんなところでこんな奴が言ってても仕方ないことですけどね(^^;
まぁ個人的興味から言うと、RNAi(遺伝子の発現を抑制するための画期的手法)がいつ受賞するか、あたりが来年以降の楽しみだったり。