taggaの日記: えーと、何だ、これ
大西 泰斗, McVay, P.C. 2011. 『一億人の英文法』 東進ブックス. http://www.amazon.co.jp/dp/4890855270/
読みとばすつもりだったのに、 説明にツッコミどころが多過ぎて時間が掛かった。 つーか、何、この「詐欺」なやり口。 恣意的なデータ選択、規則の過度な適用、 循環論法をごまかす概念もどきの使用。 初級の説明だと、ある程度そういうのが必要なのは分かるけど、 大学の英語学の先生にやって欲しくない。
最初の方で、ほとんどの人が見たことがないような、 sit の他動詞の例をかまして、びっくりさせる。
He sat the glass on the table. [p.82]
これ母語話者向けの頻出文法問題にあるやつ。 僕たち外国人が目にするようなものだと、エディタが set に書き直すから。 普通に使われるけど、規範形じゃない。 この本の中では、場所場所の都合に合わせて、普通に使うか、規範かどうか、 このどちらかを選んでいる。
この例などを使って、NP1 V と NP2 V NP1 (The dog walked と I walked the dog) の対応関係を教えこんで、 stand の"我慢する"の意味もこれから出そうとする。 けど、これは少なくとも歴史的には誤り。 自動詞と他動詞の対応には NP1 V と NP1 V NP2 (They lunched [her favorite dish])のパターンもあって、 "立ちはだかる" > "我慢する" という意味変化。
この本の最大の問題は《前から限定、後から説明》という意味不明の道具。 このうちの「説明」は、補語、前置詞を介した目的語、状況の副詞/前置詞句、 後置される修飾語句を集めたもの。それっぽい話をしてても、 結局は、前にあるので限定、後にあるので説明からという循環になっている。 例えば、p.370 で前置詞句の前置として behind-the-scene negotiation のようなものを出しているけど、 これは比喩的な意味が固定されてすでに一語化によって形容詞扱いになっているせい。 形容詞の位置で (p.238) the worst scenario imaginable のようなものを出しているが、 これ the worst imaginable scenario と言うほうが普通 (ただし、 後置していると "この時点で" というニュアンスが加わる。 こっちの方がむしろ限定っぽいよね) なのに、どうして限定と説明の違いがあるっつんだ。 それに姉妹が1人でも my beloved sister と言えるけど、 こっちの方が説明っぽいよね。
前置か後置かが問題になる修飾語句で、 談話の流れで変わるものと、統語論的に決められるものがあるだけで、 既存の理論の方が説明能力が高い。 それに省略できない補語と省略できるものを区別した方がやっぱり 説明能力が高い。
他の問題点をいくつか。
不可算名詞のところで、物質名詞と抽象名詞は説明しているのに、 furniture や baggage のような集合名詞は説明せずに、 間違え易いと投げ出している。
They left the theater disappointed [p.253] で、 disappointed が副詞っぽく修飾と言ってるけど、 They left the theater sad and angry のように言えるので、 形容詞っぽい役割。
[ここのパラグラフは表現が変だったので、削除。2014-09-07]
他にもあれこれあるけど、まあいいや。
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