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日記

taggaの日記: 方針はそうだろうけど出題形式的にはきつい、日本学術会議の大学入試歴史系提言

日記 by tagga

「歴史総合」という科目の追加で、地歴の入試をどうするか。 「世界史B」「日本史B」の後継科目である「世界史探求」「日本史探求」(のいずれか)を入試に課すのではなく、 「歴史総合+世界史探求」「歴史総合+日本史探求」にしろという提言。

;; 入試業務をやった上での話は書けないので、 元予備校講師+大学100番台科目(地域研究系)担当者としての感想。

このオプションぐらいしかないとは思う。 ただ、「多様な教員」がどこかからか求められた結果、 入試業務に不向きな教員の割合が増える傾向にあるはずなので、 ヒューマンリソースの限界で、 やっぱり「世界史探求」「日本史探求」でとか、「歴史総合」だけとか、いっそ地歴撤退というところが出てくるとは思う。 範囲的に「歴史総合」単体で毎年出題を続けるのはかなり厳しいはず。

今回の提言でめっさ評価したいのは、次の部分 (p.3):

各小問が完全に独立して解答可能でなくてもよい。 また、正解が重ならないよう注意を払えば、別の設問、同時に実施される他教科・他科目の問題などが、 解答の際にヒントになることを妨げない。

同時間帯の問題が同じ冊子になっている大学も多い。 これが常識になると、他教科の問題がヒントになるやんみたいな意味不明なツッコミを右から左に受け流すことができるようになる。

あとここ (p.6):

[E]互いに無関係な個々の小問ごとに唯 一の正解を答えさせるのではない出題が求められるので、(1)正解が複数ある(場合 によっては「いくつあるかわからない」「どちらも正しくない」)設問や、(2)小問同 士が連鎖した問題

とはいえ、これ採点者に技量が必要なので、実現は難しい。 条件つきで採点が変わるもののダブルチェックとかは、時間との戦いでかなり無茶。

その一方で、教科書会社に言ってください案件 (p.5):

また文化史では単なる作者と作品の名称ではなく、時代背景や作者の立場、 作品の含意などにかかわる出題が奨励される。

文化史は、本文に名前がほぼ羅列、へたをすると表、なので、そういう出題をすると、どの教科書にもないことを出したという攻撃が来る可能性がある。

地歴だけに言われても困る話 (p.5):

[B]史資料を 深くまたは総合的に読むことを要求する出題(記述資料、絵画・写真などの図像資料、 地図・年表・グラフ・統計、系図...)、

そういうことを言われても、そういう読み方の訓練をしてない受験生にいきなり問題を出しても悲惨なことになりかねない。 史料をまるっきり無視して思い込みを語られてしまう。 それを減点していくと、点数に差が出ないよ。

あと、著作権が……。入試に出すのは法的に認められているのだけど、 法的に存在しない権利を主張する方々がいて、後の処理が面倒。

個人的にはこれは止めて欲しい (p.5):

[C]アクティブラーニングを想定した問題文 (教師・生徒の問答や、資料を探して研究する過程、発表するパネルやレポートなど を問題文や資料に使うもの。

文章が長いのでちゃんと読めずに単語をつないで内容を妄想するんだよ。 選択肢問題ならいいんだけど、それを論述でやると採点者のメンタルがやられるよ。

方針とはしては、まあ、そうだろうねなのだけど、実をいうと少し怖い。 論述で論じずに価値観を延々と書く学生はいる(というより、高校までの作文や小論文の指導により、 それが評価されるものと思い込んでいる人たちは多い)。 「近代わっしょい、明治維新万歳」みたいの書かれて、 説明になってないからと減点したときに、 攻撃される可能性があるのではないかと心配。

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コンピュータは旧約聖書の神に似ている、規則は多く、慈悲は無い -- Joseph Campbell

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