taggaの日記: 前に貼った高木貞治の教科書のかけ算の部分 14
「母数」がらみのを漁っていたときに貼った高木貞治の中学教科書のかけ算の部分 (高木は文部省系なので「母数」のところで「元高」)。
- 高木 貞治. 1911. 『新式算術教科書』東京: 開成館. http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1087461/16
以下、カタカナをひらがなに、舊字體を新字体に、歴史的仮名遣ひを新仮名遣いに、〈,.〉を〈、。〉に。
pp.21-22:
例えば、一時間に十二里ずつ行く汽車は、 四時間に幾里行くべきか。
12里を四度加え合わせて、 48里を得。
かように同じ数を幾度も加え合わすることを掛ける(乗ずる)といい、 加え合わせらるる数を被乗数、 加え合わすべき度数を乗数、 加え合わせて得たる和を積という。
上の例にては、十二里(被乗数)に 四(乗数)を掛け、積
急きとして 四十八里を得たるなり (之を十二理に四時間を掛けたりとは言うべからず。)乗数は必ず不名数なり。 積は被乗数が被乗数が名数なるときは、 亦必ず同種の名数なり。
これは、19世紀までのヨーロッパの教科書ならば普通の書き方。
もちろん交換法則も出てくるけど少しあとで、p.28:
被乗数及び乗数を共に因数という。
因数の順序を変えても積は変らず。
こういうの(高木や藤沢の文部省よりのもの)が、被乗数と乗数の区別に小煩いのや、 「サンドイッチ」(12里×4=48里、のように被乗数と積にのみ単位がつく)の元ネタのはず。 当時の教員向けのものや、師範学校の教科書を読むとそうとしか考えられない。 なのに、小学校の先生が勝手にとか言う人たちは歴史を「修正」して何が楽しいの。 それ以上に、数教協のせいだとか言う人がいるのが理解できない。 遠山先生だと微妙なところがあるけど、量の抽象化としての数を考える、あとの世代はこういうのに反対したよね。
;; 2019-12-04 21h15: <u> が効かなくなっていたので、<i> に変更。
単位量あたり (スコア:2)
12里は12里/時なので、4時をかけると時/時が消しあって48里が残る。
48里を4時で割れば12里/時になる。
では48里を12里/時で割れば... 4時になるはず...
何が何だか分からない。
数と量の区別 (スコア:2)
公理系が違えば、数学の展開が違うように、 算術でも立場で何が違えば、なにができるかは違います。
民間教育団体の数教協の立場では《数は量の抽象化》です。 それによれば、
(全体量) = (1あたり量) × (いくつ分) なので、次のように書けます。
48里 = 12里/時 × 4時.
それに対して、藤沢、高木、塩野、……の伝統的な立場では、 かけ算を累加で定義し、 それの乗数を拡張しています。 類似の、
(単位量あたりの大きさ)×(幾つ分) = (全体の大きさ)
とまとめられていても、(幾つ分)は回数の拡張なので無名数だけです。 つまり、許されるのは、次の2つのパターンだけです。
(有名数) × (無名数) = (有名数)
(無名数) × (無名数) = (無名数)
高木が言っているのは、4時間は量で回数ではないので、掛けられないということです。
この立場は、高等数学を意識した19世紀の算術教科書のふつうの立場です。 数学が分からない人の意見ではなく、 初期の解析学により区別が不明確になった量と数を分離し、 定義に従って、ストイックに数学を展開しようというものです。
これが現在も踏襲されているので、 ふつうの国内のK12の算数・数学の教科書では、最初の式のように全部に単位がつくことはありません。 許されるのは、次の2つです。
12里 × 4 = 48里
12 × 4 = 48 (里)
補足 (スコア:1)
「名数」「不名数」の方がふつうの表現かもしれない。
Re:単位量あたり (スコア:1)
Re:単位量あたり (スコア:2)
48に1/12を掛けたらあら不思議、4になる。
Re: (スコア:0)
筆者の説明している12里は12里であって、そこに12里/時という概念を持ち込めばわからなくなるのは当然なのでは。
乗算とはなんぞやをこれから説明する段階なのに、単位あたりなんて割り算の世界の話じゃないですか
文中にある通り、12里を4回足すから48里。これを12x4=48とする、この時点ではここまで
48里を4時で割って1時間あたり12里、すなわち12里/時っていうのは話の順番としてはもっと後でしょう
しかし、実際問題こんなのまだるっこしくて、説明を聞くのもバカバカしいですが、
こういう風に物事を勉強する子供もいるって事なんですかね?
センセーがたの方が色々な子供を知ってんでしょうから、素人が口を出すことじゃないんですが
Re: (スコア:0)
長方形の面積を求める時に縦と横の長さを掛け算するけど、その時にどちらを縦にするか横にするかは自由に決められるから、掛け算の順序は関係ないと言って、一般的な掛け算において乗数と被乗数を区別する必要がないように考える人が多い。でも、そもそも、面積を求める時に、長さの単位がcmであったとして、cm同士を掛け合わせることは正しいのか?と言う問いに対しては、「公式だから」程度の答えしか持っていないのではないだろうか。
乗数と被乗数を区別すれば、結果的にcm同士の掛け算になっているだけというのは(自然数の範囲内なら)幾何学的に説明できる。まず、単位が同じであれば面積
Re:単位量あたり (スコア:1)
逆じゃないかな
距離を時間で割って速度という概念(の数値化や単位)が後でできた気がする
それ以前はAからBまで徒歩3日、馬1日、早船半日、のような。
それ以後は、速度と時間を掛ければ距離になるので、日がくれる前に手前の宿場で早めに止まるとか、速度上げて急ぐとか。
Re:単位量あたり (スコア:1)
説明不足かも知れないので念のため追記
速度と時間を掛ければ距離になるように速度の単位を決めた、ってことね
Re: (スコア:0)
>ところで、速度と時間を掛ければ距離になるのは正しいのか?
正しくないという仮説を示してくれ。
Re:単位量あたり (スコア:1)
最近の教科書や学参は、 速さ×時間 = 道のり。 まっすぐ進んでいないと距離にならない。
Re: (スコア:0)
一般化するなら乗算じゃなくて積分だな。そもそも、その例題では「1時間に12里ずつ」とあるだけで、一定の速度などとは書いてない。10分毎に速くなったり遅くなったりして、結果として1時間に12里の可能性もある。そこを安易に時間を掛ければいいなどと決めつけるのは正しくない。
12[里/時]×時間[時]が進んだ距離になる、というのが正しいとすると、時間は連続量だから0.5時間でも良いわけだが、条件が曖昧なので6里とは言えない。
この例題に従った式を書くなら、
n
∑dk
k = 0
1時間に進む距離(里):di = 0 (i = 0); 12 (i > 0)
時間(時):n = 4
が正しい。速度や速さという概念は要らない。もっとも、現実の問題としては、こんなことにこだわらなくて良いと思うが、理解はしておいてもらいたいところ。
Re: (スコア:0)
掛け算の順序に拘るなら、割り算も右割り算と左割り算を分けるべきでしょうな。
さらにはn項掛け算を全て区別して、それぞれに対応した割り算を区別して…
Re:単位量あたり (スコア:1)
算数教育では、等分除(単位量あたりを求める)と包含除(幾つ分を求める) というのがあって区別されている。 算数の指導要領解説には当然、書いてある。