taggaの日記: 高木貞治の別教科書
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tagga
高木貞治が書いた師範学校用の教科書。 小学校教員を養成するためのものなので、整数計算を重視している。 それもあって掛け算の部分の展開が、少し風変り。
- 高木貞治. 1911. 『数学教科書 : 師範教育. 算術及代数』東京: 開成館. http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/826333
掛け算の定義の部分「12.倍すること」(p.17):
或数Aを倍すること、 即ちAをn個加え合することを、 Aにnを掛ける(乗ず)という。 加え合せらるる数を被乗数、 加え合する個数nを乗数、 加え合せて得たる和 A+A+……+Aを積といい、 此積を式にて表すには
A×n
と書く。
この下に公式が出てくる (pp.18-19)
- (A+B+C+……)×n=A×n+B×n+C×n+……
- A×m×n = A×n×m
- A×p+A×q+A×r = A×(p+q+r)
- A×m×n = A×(m×n)
被乗数と乗数の区別があるせいで、右分配則(1)と左分配則(3)が区別される。 結合則(4)もある。 ところが、交換則のかわりに(2)がある。 交換則は「14.整数の積」(p.23)を待たなければならない:
第12節の公式(2)を被乗数が1なる場合に適用するときは
(1×m)×n = (1×n)×m
即ち m×n=n×m
を得。即ち2つの整数の乗法にて被乗数と乗数とを交換しても積は変らず。
掛け算の意味を離れて、 唯其結果のみを考うるときには、被乗数と乗数とを区別する必要なきなり。 是故に被乗数及び乗数と共に因数という。
というふうに、高木はかけ算で、意味と順序にこだわっている。
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