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targzの日記: ビルアトキンソン講演会

日記 by targz

今日 (厳密には昨日)、ビル・アトキンソンさんの講演会に行ってきました。アトキンソン氏は、初代Macのソフト開発にかかわっていたことは有名な話で、QuickDraw, MacPaint, HyperCard など著名なソフトを書いています。現在は自然写真家をされていて、初めて出版する写真集の完成記念の講演なのです。しかし、内容は「Mac と私」だそうで。

参加費が15,000円と、とんでもなく高いのですが、主催の帆風と協力して作ってきた写真集の値段 (9,800円) が含まれているのです。それを引くと 5,200 円ですから、立食パーティー付きなら許せる値段ではないかと。

本を全員に押し付けるというのはある意味あくどいですが、この写真集がすばらしいのはすでに知っていたので、本を手に入れるついでに話を聞ければ、と思っって参加したのでした。

で、会場に行ってみると、抽選会用の iPod mini が15台も積まれています!! 抽選会があるのは知っていましたが、なんと15台とは!! 5段重ねのピラミッド状態は壮観です。写真集も受けとりましたが、207ページの豊富な内容です。ちらりと見てみましたが、岩石の写真集であるにかかわず、あたかも抽象画のような雰囲気があります。しかも、4色印刷にかかわらず、濃いインクと新開発のカラーマッチング技術を駆使したため、鮮かで正確な発色ができています。

さて、話が始まりました。前半は、Mac の基礎となった Lisa のインターフェース開発の裏話でした。いかにして、Lisa の GUI を構築していったかを、開発中のプロトタイプの写真を見せつつ説明されていきます。アトキンソン氏は、Apple社内では集中力が保てなかったので、自宅に仕事を持って帰ることが多く、Apple社のメンバーと意思疏通を図るため、製作中のインターフェース画面をポラロイド写真に取り、送付していたようです。で、この貴重なポラロイド写真をスライドで見せていました。

GUI の元祖は Xerox の Alto であり、Apple の開発者も Alto を見学したことは有名ですが、Apple 社内では Alto のインターフェースをそのまま真似たのではなく、一から構築したようです。可変ピッチのフォントをどう描画・制御するか、ウィンドウの部品をどう構成するか、ダイアログの文言をどうするか、などなど。
スライドでは、インターフェースのプロトタイプが次々と出てきます。後から考えれば、一発で没と分かるアイディアでも、当時は時間をかけて検討していったとのこと。

特筆すべきは、開発中のプロトタイプを、コンピュータに疎い人に実際に使わせるというユーザテストを徹底して実施した、ということでしょう。実際にユーザに使わせることで、インターフェースのまずい点が荒い出されるからです。これによって、

    ・保存ダイアログのボタンは、Cancel と OK にする
        (当初は、Cancel と "Do It" だったが、Do It が分からず Calcel にしてしまうテスターが続出した)
    ・メニューバーは画面の一番上にする
        (各ウィンドウの下端や上端に置くことも試みたが、画面上部にすれば、
        どこにメニューがあるか探さなくてよく、ウィンドウのサイズによって
        メニューが隠れることもない)
    ・デスクトップメタファー (フォルダとゴミ箱) を採用したファイル管理 (Finderのこと)
    ・スクロールバーは右辺と下辺。ウィンドウリサイズボックスは右下にする。

など、Lisaのインターフェース部品が定まっていきました。そして、このインターフェースはMacに引き継がれ、現在のMac OS Xでも残っているものばかりです。

これらの部品は、一見当り前に見えますが、実は、試行錯誤の末に決定されたものだというのは、驚くべきことでした。だからこそ、Mac のインターフェースは使いやすいと言えるのです。Mac を真似した Windows や その他の Window Maneger の使い勝手がイマイチなのは、ユーザテストが不十分だからでしょう。

後半は、今持っているMacの使い道 (取った写真の情報管理は今だに HyperCard をお使いだとか!)、今回開発したカラーマネジメントシステムの話などでした。

最後は、アトキンソン氏の次の言葉でしめくくられました。
「わたしは、今まで、創造性を高めるためのツールを開発してきた。今後も、そのようなツールを提供していきたい」
今回開発したカラーマネジメント手法は、確かに、4色印刷の業界に一石を投じるものでしょう。入力デバイスとして TouchPlate というアイディアもお持ちのようですから、今後もアトキンソン氏には注目しなければ…。

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私はプログラマです。1040 formに私の職業としてそう書いています -- Ken Thompson

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