uruyaの日記: さかしま砂絵 / 都筑道夫
さかしま砂絵 / 都筑道夫
着手 12/6
読了 12/8
感想 ★★★☆☆
シリーズあらすじ。
雨の日は仕事にならない大道芸人たちが住んでいるため、雨になると男たちが暇そうにのたくっている、ということから名がついた「なめくじ長屋」。ここに住むのは、軽業曲芸師でセンセーの右腕マメゾー、願人坊主のガンニン、熊のものまねのアラクマ、その名の通りのカッパ、大道女形のオヤマ、お札売りのテンノー、幽霊姿で練り歩くユータなどの面々。
そして砂絵描きのセンセーは、もとは二本差しらしいのだが、腕も頭もめっぽう切れて、謎解きに非凡な才がある。十手持ちの下駄常に担ぎ出されて、なめくじ連を手足に使い、難事件を解決していくセンセーだが、なにせアウトローの非人連中、社会正義などのために働いているわけじゃない。ひたすら金のためである。
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第一席 白魚なべ
橋の上から突き落とされた女が水に落ちるまで一昼夜かかったという話。
ある寒い夜、橋番のおやじが男女の争い声を聞きつけた。駆けつけてみると、橋の上で手を合わせている男を発見。男はすぐに逃走してしまう。女の姿はどこにも見えず、これは突き落とされたに違いないと考えたおやじはすぐに自身番に届け、総出で女を捜索するが、女は見つからない。おやじの勘違いだろうということでその場は終わった。
ところがその二日後に、百本杭から女の遺体が上がった。女は胸を刺されて死んでいたのだが、死亡推定時刻は発見前日とみられた。
第二席 置いてけ堀
本堂改修の借金返済のため、寺から値打ちものの茶碗が放出された。道具屋の旦那と若旦那が連れ立って、五十両の大金でその茶碗を買いつけた帰り道。下駄の鼻緒が切れて立ち往生した旦那の耳に、妙な声が聞こえてくる。
「おいてけえ」
そして提灯の火がふっと消え、茶碗とともに、若旦那の姿もなくなった。
第三席 はて恐ろしき
ユータが殺された。
といってもなめくじ連のユータではなく、近頃評判で大繁盛の怪談芝居の幽霊役の幽太である。芝居の趣向で観客の中に潜んでいた役者が、その場で刺されて死んでいたのだ。
第四席 六根清浄
富士山の山開きの日に「六根清浄」を唱えながら富士登山する、富士山信仰があった。金の無いものたちは富士神社に小山を作りそれに登ったりするのだが、その神社の名物に、麦藁で編んだ蛇の作り物がある。
さて、ある呉服屋の主人が、六尺棒にくくりつけられた麦藁の大蛇に喰い殺されたという。まさか実際に喰われたわけではなく、棒の先に結わえられた匕首で刺し殺されていたのだ。
第五席 がらがら煎餅
瓦せんべいを折りたたんだ中に玩具を封じ込めた食玩があった。振るとがらがら音がするので、がらがら煎餅という。そのがらがら煎餅の中から、女の小指が出てきたという事件が起こった。
いつものように下駄常に引っ張り出されたセンセーは、そのせんべいを売った駄菓子屋で聞き込みを行うが、売れ残りの商品の中から、今度は薬指が発見される。
第六席 蚊帳ひとはり
商家の旦那が妾の家に着いたところ、侵入していた怪しげな浪人者が、蚊帳の内に寝ていた妾を刺し殺して逃走する現場を目撃したという。しかし、確かに蚊帳の外から中に向けて刀を刺したのだが、蚊帳には傷ひとつついていない。浪人者の身元を調べたところ、妾のもと愛人だったらしい。
この話を聞いたセンセーは、内通を知った旦那が妾を殺したのだと、たちどころに見抜いてしまう。ところがしばらくして、今度はその旦那が何者かに殺された。
第七席 びいどろ障子
浄玻璃の鏡にうつしたごとく何もかもお見通し、浄玻璃進藤の二つ名を持つ筆頭与力が、センセーとマメゾーを連れて来いと下駄常に命じたらしい。
何事かといぶかしみながら進藤方を訪問した二人は、障子にはめ込んだびいどろに反射した自分の姿を見て、離魂病だと思い悩み首をくくってしまった女中の、幽霊が出るのを解決してくれと依頼される。
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なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ全十一冊、読了いたしました。第一作の発表が1967(昭42)年、十年越しの最終巻発行が1997(平9)年、実に三十年の歳月をかけて書き続けられた、ほとんどライフワークと言っていい都筑道夫の代表作。
初期の頃は、パロディや実験的試み、落語の本歌取りなどなど、本当に都筑道夫らしい趣向が凝らされており、すばらしいできばえでした。しかし中期以降になると、失速の感が否めない。めだってマンネリ感が出てきたのは8冊めの「おもしろ砂絵」くらいからか。江戸庶民話と怪談風にして半七踏襲しとけばいいだろ、のようなやっつけ空気が漂い始めます。
10冊めの「いなずま砂絵」にもなると、いよいよネタが尽きたのかセンセー本人が長いの振り回しちゃったりしてて、ちょっとゲンメツ。そういうのは池波正太郎あたりにまかせときゃいいんです。振ればめちゃくちゃ強いだろうけど、振らない。センセーのようなタイプのアンチヒーローはそこが良いわけで、振っちゃあいけません。
文句の方が先に出ちゃったわけだが、だから後半以後はつまらないという話でもなくて、それはそれで十分読める。
けれど、初期の数冊、特に「からくり砂絵」あたりまではこれぞ都筑道夫!という風情の作品が目白押しなわけで、徐々に卑小化して小ぢんまりしてくるのはね、やはり寂しいですよ。
最終作の11冊目、この「さかしま砂絵」は補遺的な意味合いが強く、未収録作四本と新・顎十郎の書き直しが二本、書き下ろしが一本という構成。都筑道夫はあとがきで「これで最後にするつもりはない」と書いていたけれど、結局最後になってしまいました。Wikipediaには2003年11月27日没とあります。新作がかかれることはありませんでした。
一人の作家の生涯を駆け足で追いかけたような気がしており、まことに感無量です。
あと、たいへん参考になったリストへのリンクを挙げておきます。
なめくじ長屋捕物さわぎ・リスト
2006累計 102冊/90タイトル