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uruyaの日記: 風林火山 / 井上靖

日記 by uruya

風林火山 / 井上靖

着手 12/17
読了 12/18
感想 ★★★☆☆

山本勘助。齢五十にもなる、矮躯で斜視跛行、中指欠損という容貌醜悪な異相の人である。諸国風俗に精通し兵法を極め、剣は行流の使い手であると評判の人物であるが、実戦は経ず、誰も真偽を知らない。今川領で食客として過ごしていた勘助は、あるとき武田家の重臣板垣信方に計略を持って近づき、武田家へ仕官することに成功する。
勘助には夢があった。己の力量をもって、城をいくつもとってやること。その実現の場として、彼は武田家を選んだのである。
武田晴信に信頼され、その智謀・軍略により徐々に頭角を現していく勘助は、その過程で、外には越後・長尾影虎との決戦に、内には諏訪家の遺女・由布姫とその子勝頼の庇護に、心を砕いていくのであった。

─────

2007年大河原作!とデカデカと本屋に平積みされてるのを見て、図書館で借りました。DISられそうな行動。
出版年1981年の新潮文庫ってデータベースにあったから閉架図書を予約したら、昭和33年の版だった。どういうことだ…旧漢字じゃないか…orz 井上靖はわりあい脳内イメージに変換しやすい文体だし、短い話だからまだマシですが、意図しない場面で旧漢字にあたると少し面食らう。

井上靖の歴史ものといえば、史実ベースに創作を混ぜ、まるで見てきたかのような嘘をついて人物を活写する列伝です。つまり司馬遼太郎メソッド。というか司馬遼太郎が井上靖メソッドなわけですが、山本勘助を取り上げたこの作品なんてまさに象徴的ですよね、実在したのかどうか判然としない人だもの。
判然としないどころの話ではなくて、おそらく高い確率で実在しない創作上の人物なんですが、本当に見てきたかのように描写する井上靖の手にかかると、目の前にいるとしか思えないほど生き生きとした人物像が脳内に浮かび上がり、すんなりと信じ込まされます。

まず卑怯。いきなり卑怯。ベッタベタな「おねえちゃんに絡むチンピラを通りかかった男が撃退する茶番劇」で武田家重臣に取り入って一緒に仕官しようと持ちかけた男を、芝居じゃなくて本当に斬っちゃう。ちょお卑怯。ここでぐっと引き込まれます。この人が描こうとしているのはヒーローではなく、ナマな人間であるということに気づかされる。
あとはもう、人間・山本勘助に同調して物語世界に連れ込まれ、ぐいぐい読まされていく。由布姫や於琴姫に心惹かれ、強敵長尾影虎と相対し、ストーリー展開に一喜一憂するうちに、気づいたときには読み終わっている感覚。実際のところ、旧漢字でもまったく問題なくスラスラ読めました。

由布姫の存在が際立ってキャラ立ちしていて、テレビドラマ原作としてはかなりよろしいんじゃないでしょうかね。短い話をどうやって一年引き伸ばすのかは気がかりですが。まあオンタイムでテレビ番組を見ることなんてビタイチないので大して関心もないですけど。
あと井上靖にしては女をクローズアップしてるなあと思ったけど、それは俺がおろしや国酔夢譚(大傑作)とか蒼き狼とか徹底して女が出てこないものしか読んでないからだと思われ、現代小説などはまた違うのだろう。あ、楊貴妃伝を読んだっけ。けどあれはロマンスって感じじゃない。次は額田女王あたりを読んでみようか。

とここまで書いて、額田女王は朝鮮がらみだよなあ…などと考えていた自分に驚く。嫌韓でも嫌・嫌韓でもなくまったく無関心だった俺が朝鮮という単語にひっかかるとは…
荒山脳の恐怖…

2006累計 105冊/93タイトル

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