uruyaの日記: 魔岩伝説 / 荒山徹
魔岩伝説 / 荒山徹
着手 12/19
読了 12/23
感想 ★★★★☆
文化八年、一八一一年のこと。四十七年ぶりに朝鮮通信使を迎えようかという時期、対馬藩邸において鈴木伝蔵を名乗る謎の人物が出没。「ハクセキトウ」と騒ぎ立てては、姿を消すことを繰り返していた。鈴木伝蔵という人物は、前回の朝鮮通信使を迎えたとき、朝鮮使の一人を打擲したとして処刑された人物なのである。
これは亡霊か?それとも白石党の残党か?時の勘定奉行柳生主膳正と儒者の林大学頭は謀議し、主膳の息子にして柳生新陰流の達人柳生卍兵衛を派遣して伝蔵を捕らえさせようとする。
一方、目付遠山左衛門尉景晋の無頼の息子遠山景元は、伝蔵の亡霊のうわさを聞きつけ、独自に対馬藩邸を見張っていた。景元が見守る中、果たして伝蔵が姿を現わすと、そこへ卍兵衛ら柳生軍団も現れ、捕り物劇が展開。伝蔵の危機を思わず援けてしまった景元に、卍兵衛の剣が襲いかかった。
と、さらにそこへ現れたのは遠山左衛門尉。公儀目付として場を押さえ、景元と共に伝蔵を連れ帰ってしまう。屋敷へ帰り改めてニセ鈴木伝蔵を見た景元は目を見張った。その正体は、金春香という美しい娘であったのだ。春香は、朝鮮通信使の派遣に反対する朝鮮国内の一派として、やはり朝鮮通信使に反対している日本の白石党と渡りをつけるために騒ぎを起こしていたのである。
そして景元は父景晋の告白を聞く。実は鈴木伝蔵の遺児こそ、景晋である。つまり鈴木伝蔵は景元の祖父であったのだ。鈴木伝蔵は罪を犯したにあらず、朝鮮通信使反対派・白石党に加担する一人として謀殺されたのである。その首謀者は柳生・林ら推進派なのだ。
朝鮮通信使の派遣をめぐって様々な陰謀が繰り返されていることを知った景元は、その裏に巨大な思惑が蠢いていることを感じとり、その秘密を探るため春香の求めに応じて朝鮮へ渡ることを決意する。
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これはひどい(枕詞
朝鮮通信使をめぐる謎。秀吉出兵以後、国交回復第一使の松雲大師と家康との間で交わされた密約とは何か?日本と朝鮮、双方の国で、朝鮮通信使を派遣したい理由のある者たちが張り巡らす陰謀に、若き日の遠山金四郎が迫る!そこに立ちはだかるはオレ柳生・卍兵衛、そして後のあの人・林耀蔵!朝鮮、日本を又にかけて剣が、妖術が、乱れ飛ぶ!奇才・荒山徹が放つ正統派伝奇!
正統派伝奇と思っていました、途中まで。
めきめき狂ってくのな、朝鮮に場を移してから。朝鮮ってのはどれだけ暗黒波動に満ちた魔界なんだ。召喚魔法は飛び出すわ人外とエンカウントするわ、それなんてファイナルファンタジー?あげくの果てに相輪塔から○○○ってどうよ。そんで、なにその天下一武道会。もはやSFの域。
そんでさあ、これだけ最低にひどい小説なのに、相変わらずむちゃくちゃ面白いのな。すじがき自体は本当に王道なんだよね。遠山金四郎が巨大な謎と陰謀を追う一大冒険活劇で、ライバルの最強剣士や悪辣な朝鮮妖術師たちと迫力のバトルが展開され、続々と訪れるピンチを秘密の仕掛けや仲間の援けによって辛くも切り抜け、さらにヒロインと織り成される恋模様もきっちり盛り込まれる。ミステリ・アクション・ラヴの各要素が絶妙のバランスで構成されてストーリーにも破綻がない。ただしかし、一点だけ、ネタの着想と使い方が最凶に狂ってる。
これだけ面白い小説書く人なんだから、抑えて書けば万人受けする伝奇小説を余裕で作れると思うんですが、このはっちゃけぶり。書いてる本人が楽しくて楽しくてたまらんのだろうなあ。
まあ今さらマトモなもの書かれても荒山徹にハマった読者からしたら「そんなの徹ちゃんじゃないやい!」って感じになるだろうけれども。もはや「○○は朝鮮人だった!」とか言われてもすんなり受け入れている自分がいるし。困ったことに。
まあ本書を要約するとですね、"これが面白い自分が怖い"という気分が味わえる、本当に困った傑作活劇です。いやあ困った。
2006累計 106冊/94タイトル