パスワードを忘れた? アカウント作成
505941 journal

uruyaの日記: ねこのばば / 畠中恵

日記 by uruya

ねこのばば / 畠中恵
★★★☆☆

齢三千年の大妖を祖母に持つ、廻船問屋兼薬種屋の大商人長崎屋の若旦那、一太郎。体の弱い若旦那を囲むのは、おばあさんに孫を託された大妖白沢・犬神を筆頭に小鬼の鳴家、付喪神の屏風のぞきなどなどの妖怪たち。彼ら妖たちに力を借りたり邪魔されたりしながら、若旦那がいろいろな謎を解く捕り物シリーズの第三弾。

───

茶巾たまご
体の弱い若旦那が、ここ数日元気である。それだけではなく、買った古道具から五十両の切餅が出てきたり、砂糖の中から金粒が出てきたりと、妙に運がよい。松之助との縁談話が出ていた海苔屋から貧相な下男金次をひきとったときからツキだしたようなのだ。
そんな折、その縁談相手の娘が殺された。

花かんざし
迷子の女の子を拾ってきた若旦那。その子於りんは深川の材木問屋の子らしいことがわかったのだが、「帰ったら殺される」と口にしているらしい。若旦那らは於りんを送りに行くが、そこにはやはりいろいろと不審な点が見える。旦那夫婦が姿を見せないことや、この店に狐憑きの噂が出ていることなどなど。
そしてその場で、於りんの乳母が殺される事件が起きる。

ねこのばば
若旦那の身に、三つの事件が立て続けに起こった。ひとつは、大事にしていた夕焼け雲のかけら「桃色の雲」をなくしてしまったこと。ひとつは、広徳寺に捕らわれている猫又になりかけの老猫を救出するよう、猫又に頼まれたこと。そして最後に、坊主が縄もないのに首をくくった事件にかかわったこと。
この三題話の中心にいたのは、以前お札で世話になった、妖退治で高名な僧、寛朝だった。

産土
このところ取引先の倒産があいついで、金の工面に困りだした店のために心をくだく佐助だったが、そんな矢先、店の旦那が妙な信心を始めたらしいことを耳にする。どういうことなのか、信心に行くたびに「鬼も仏も手づくねにして」と書いてある紙切れと一緒に五十両の切餅があらわれるというのである。背後に妖の存在を感じた佐助は旦那の後をつけ、最近評判の見せ物小屋の中で、何かが行われているらしいことをつきとめる。

たまやたまや
手代らに内緒で外出した若旦那。何やら庄蔵という男の評判をいろいろな所で聞き込んでいる。どうもその男、侍から追われているらしく、仕官志望の浪人者とその妹のお園という女と親しいらしい。
実はこの庄蔵は、三春屋のお春の縁談相手なのである。兄栄吉から頼まれて、若旦那が素行調査に乗り出したのだった。勇躍調査に望んだ若旦那だったが、庄蔵が抱えていたトラブルに巻き込まれてしまう。

─────

「ねこのばば」ってねこのうんこのことかと思ってたら、「猫の婆」でした。ねこまたになりかけのねこ。ぬこかわいいよぬこ。鳴家かわいいよ鳴家。いやあ濃い小説ばかり読んでいるこの汚れきった心が洗われるかのようだ。ありがたいねえ。この杉のようにまっすぐありたいねえ。パンは盗み食いしてないけどねえ。

表題作はぬこ好き必読、と言っておきましょう。シリーズでなければ某まとめサイトのおすすめ猫本wikiに登録するところだ。いやあ愛らしい。萌えーぬこ萌えー鳴家萌えー
すみませんちょっと取り乱しました。

「茶巾たまご」と「花かんざし」が小説新潮での発表。残る三作が書き下ろしという構成ですが、この書き下ろしの完成度が高い。「ねこのばば」は上にも書いたとおりぬこ好き必読萌え萌え短篇、「産土」は前作「ぬしさまへ」での仁吉=白沢の来歴語りに続く佐助=犬神の過去語り、「たまやたまや」は重要な脇役で幼なじみであるお春の婚礼話。
素晴らしくまとまった短篇集だと思います。この人は数を重ねるごとにうまくなる。なんてえらそうに言う俺は何様だと言う話ですけど、まあ要するに、スゲェ面白かった。

軽いユーモアですらりと読ませ、でも人が死んだりしているわけで悪意もきっちり描かれて、読後感のさわやかさもある。一言で言えば宮部みゆきテイストのお江戸ファンタジーという感じですけども、本当に徐々に完成度が上がってきていると思います。本書は自信を持って「面白い」と言える。
後は「宮部みゆきみたいな」の冠が取れれば本物ですよね。オンリーワンになれるか否か。強く期待したい。

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
typodupeerror

192.168.0.1は、私が使っている IPアドレスですので勝手に使わないでください --- ある通りすがり

読み込み中...