uruyaの日記: 黒祠の島 / 小野不由美
黒祠の島 / 小野不由美
★★★☆☆
ノンフィクション作家葛木志保が、帰省すると言い残し姿を消した。ライターなどの取材を請け負う調査事務所を主宰し、彼女とは長い間相棒のような間柄であった式部剛は、その行方を追って葛木の故郷夜叉島へ渡航する。
家々に飾られた無数の風車と風鈴で埋め尽くされているその島は、明治政府の廃仏毀釈政策により一統に統合された神道から漏れた神社「黒祠」を奉じる人々の島であった。閉鎖的な村人たちは葛木を探す式部に対して決して真実を話そうとはしなかったが、はじめは表面上だけは穏やかにとりつくろっていた。しかし、葛木の本名羽瀬川志保の名を口にし、村の支配者神領家に乗り込んでいった式部に、露骨な拒絶反応を示しはじめる。その雰囲気から、かえって帰る気をなくした式部は、村人たちの白眼の中、島に留まって葛木の探索を続ける。
葛城の生家らしい廃虚を探索し多量の血痕を発見した式部は、前に羽瀬川の名を出したとき顔を真っ青にして動揺していた島外出身の診療医秦田を絞め上げ、葛城は殺されて死んだのだ、という言葉を聞き出す。
葛木らしき二人連れが到着した二日後嵐の夜、腹部を切り裂かれ顔を焼け焦がされた女の死体が、神社の木の幹に逆さ磔にされた状態で発見された。それ以降、その旅行者たちは姿を消す。旅行者惨殺事件である。秦田は医者として殺害現場におり全てを目撃していたのだが、村の者達は全員が口裏をあわせ、事件をなかったことにしてしまったのだ。よそ者の秦田をかやの外にして…
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煽り文には本格推理とありますが、これはまさしく伝奇小説であります。民俗学的要素が強い、伝奇推理。
序盤は独特の雰囲気があって良いですね。絶海の孤島で現代に至るまで淫祠邪教を守り続ける古来よりの家系。心の奥底で因習にとらわれつづけ、島の支配者に盲従する村人たち。なんていう設定で、いつ屍鬼のようなホラー展開への飛躍を始めるのか、はたまたいつ"古き者"旧支配者がその禍々しい姿を現すのか、非常にドキドキしました。
しかし、雰囲気たっぷりに始まった序盤に対し、中盤以降は「会話文だけによる状況説明」が延々と続けられ、退屈なことこの上ない。長くなってもいいからもっと書き込めば、すごく面白くなると思うんですが、状況的に無理だったのかなあ。予定枚数とプロットが釣り合ってなかったということでしょうか。
以下細かい突っ込み。
・式部が民俗学に詳しすぎるのはどういうことなんでしょうか。その理由になるような記述を読み落としたかな?
・島民問い詰められるとペラペラしゃべる。それじゃ閉鎖的というより人見知り 笑
・◯◯をなぜもっと早く出さない。キャラの持ちぐされだ。もったいない。
・メイントリックはたぶん多数の読者が想像つく。ちょっと弱い。
まあミステリというより奇譚ですが、きちんと成立してるし、民俗学的舞台装置や薀蓄も非常に楽しく、そこそこ面白く読めた。けど、たるい中盤もじっくり描いて読み物としての完成度を上げると、もっとずっと良かったのになあ、と思った。もちろんその時は◯◯を存分に使ってね。
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