uruyaの日記: 覆面作家の愛の歌 / 北村薫
覆面作家の愛の歌 / 北村薫
★★★☆☆
姓は<<覆面>>名は<<作家>>。覆面作家の正体は、知性と美貌と巨万の富と、探偵の才能も合わせ持つ深窓の令嬢・新妻千秋。彼女にはもうひとつ秘密があった。一歩屋敷を出たとたん、お嬢様人格から活発なおてんば人格へとチェンジしてしまうのだ。担当編集者岡部良介はもとより、双子の兄の岡部刑事も翻弄されっぱなし。
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覆面作家のお茶の会
千秋さんのもとに、岡部が所属する『推理世界』のライバル誌『小説わるつ』の編集者・静美奈子が現われた。やきもきする岡部をよそに、今評判の菓子を差し出してお茶会に加わる静さん。そのお菓子屋さんのことに話題が移る。嫁に来た娘の天才に驚愕した父親が、修行と称して山に籠ってしまったそうなのだ。
覆面作家と溶ける男
接待に行ったカラオケ屋で、偶然千秋さんと静さんの二人連れに出くわした岡部は、静さんから写真を見せられる。兄の優介が、静さんとその甥っ子と一緒に、まるで家族のように写っているのである。後日事情を聞いた岡部は、兄から静さんの甥っ子について注意を受ける。最近連続して発生した幼児誘拐殺人事件の被害者と、その子が似ているというのだ。念のために調べてみると、確かに最近妙な男がつきまとっているらしい。
覆面作家の愛の歌
とうとう覆面先生の原稿を頂けたお祝いとご報告にと、静さんに誘われて、千秋さんと三人で行った観劇の会。たいへん素晴らしいシェイクスピア劇だったのだが、それから二週間と経たぬうちに、その劇団の看板女優が殺された。
河合由李というその女優は、劇団の主催者で演出家の南条弘高に見出され、育て上げられた。そして彼らは男女の関係でもあったのだが、最近になって別れ、今は同じ劇団の製作にいる中丸と交際していたらしい。当然のように南条と中丸が疑われたが、二人は当日の夜、一緒に飲み明かしていたのである。お互いのアリバイを、お互いが証明していたのだ。
覆面先生が名探偵だという話を聞きつけた中丸に調査を頼まれた千秋さんは、南条と接触するのだが…
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「覆面作家は二人いる」の続編にあたる、連作短編集。
浮世離れした設定でさらりと読ませる、軽やかな、あくまでも軽やかな推理コメディ。少女漫画チックでありながら、豊かな知識の上に構築されている世界は、基調に流れる知性に裏打ちされたウィットが随所にちりばめられ、まことに端正に仕上がった小説となっております。
基本的にファンタジーですので、全てを受け入れてあははと笑い楽しむのが吉。また、気持ちよくそれをさせる力が北村薫の文章にはある。頭がいい人のお話は面白いですね。
幼女誘拐殺人とか、思いのままに人を動かすことにとり憑かれた男とか、決して聞き心地のよい話ではないネタも扱ってるのに、全く厭らしさを感じさせないところが不思議。
ドス黒い怨念渦巻くような重厚な小説を読んだ後の箸休めなんかには最適の一冊です。
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