uruyaの日記: 童貞 / 酒見賢一 2
童貞 / 酒見賢一
★★★☆☆
シャのシィのユウはシャのシィのグンの処刑を見ていた。
シャは地名、シィは部族をあらわす。女が支配する母系社会の邑である。
氾濫を繰り返す大河に面するこの邑では、河の神を鎮めるため、幾度となく男が生贄として捧げられてきた。あるとき生贄として選ばれたシャのシィのグンは、生贄よりも治水事業を行うことを説き、領袖の反対にあいながらも、その外貌の美しさからか女たちの支持を得て、六年の月日を治水工事の期間として預けられる。
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これも短いお話。正味1時間ちょいで読める。
ファンタジーなのでどうでもいいことだが、モデルは夏の禹である。堯舜に続き禅譲を受け夏王朝を作ったとされる、中国神話時代の伝説の王。もちろんその頃に文字があったわけではなく、口伝の神話が残っているだけのものであり、加えて著者が描くところなどはすべてが創作、要するに嘘八百であって、いやあこの酒見賢一という大嘘吐きが吐く嘘は面白くてしょうがない。
舞台は古代的母系社会で、中国神話において人間を作ったとされる神・女媧になぞらえて女が人間を作ると信じられ、男の精は必ずしも必要ではないと考えられている。男はひとつ所に集団で住んでおり、女が男を選び、子を産み、生まれた子は成人するまで女のもとで育てられる。
そういう社会から、シャのシィのグンは逸脱を図る。英いでた雄として、女の支配から脱け出そうとしたのだ。まだ少年だったシャのシィのユウは、シャのシィのグンの姿を見て、彼に憧れるようになる。母系社会から父系社会への変革を表しているわけだ。
もちろん、社会体制の変化も、禹王の治水工事も、真偽はともかく実際にあったとされることなわけだが、それをもとにして作られたこのファンタジー世界設定は、酒見賢一が吹いた法螺である。要素を再構成して気宇壮大なドラマに仕立て上げてみせたのは、その大法螺の力なのだ。
話の短さとは逆に大きなスケール感を持った良作であり、とてつもない法螺話である。なにせ「○○が○○をレイプしてできたのが中国四千年」という話なわけで。「クラウザーさんを超えた…」とか思ってひとり爆笑した。いやあ面白い。
大嘘つき (スコア:1)
酒見さん孔子とか孔明もいいけど、元ネタがあると、どうもウソが小さくなってるので、完全フィクションで大法螺吹いて欲しいです。
Re:大嘘つき (スコア:1)
孔子と孔明は未読なんですが、わりと優先度高く積読スタックに積まれてます。