uruyaの日記: 皆月 / 花村萬月
皆月 / 花村萬月
★★★☆☆
諏訪徳雄はまじめ一方のサラリーマンであり、分不相応な高性能パソコンを持っていることだけが唯一の趣味であった。見合い結婚した沙夜子と爪に火をともすような生活をして住宅資金を溜めており、先日やっと貯金が一千万の大台を超えたところである。
そんなある日「みんな、月でした」という謎の書置きを残して、貯金と共に沙夜子が失踪してしまう。徳雄は何も手につかなくなり、腑抜けて、仕事も無断欠勤して辞めてしまう始末。義弟のヤクザ者アキラを頼り沙夜子の捜索を始めるのだが、アキラに連れられて行ったソープで、徳雄は由美に出会う。
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なんだか普通の小説だなあ。
花村萬月の魅力といえば、研ぎ澄まされた暴力と性、そしてそれらと表裏一体に描かれる愛を、なんら包み隠そうとせずあるがままの姿で「全力で」読者にぶつけてくる迫力にあると思うのだが、なんだか牙を抜かれたような印象を受けるなあ。良く言えば、洗練されたとも表現できるけど、そんな洗練は求めていない。
とはいえ濃厚な性と暴力の描写は健在であり、もし花村萬月を知らない人が読んだらまあ驚くだろうけども、しかしね、こんなもんじゃないっすよ。ブルースを100マイルのストレートと例えれば、笑う山崎は殺人カミソリシュート、二進法の犬は段差の激しい消えるフォーク。しかし、皆月はしょんべんカーブ。ぬるっ!中途半端で、おざなりに読者サービス入れときました、的な。
話の構造としては二進法の犬と似ていて、カタギの、どちらかといえば弱々しいタイプのヲタク的人間がヤクザ者に関わることで再生していく…というお話しですけども、まあかの名作には遠く及びませんねえ。いっそ下書きと思えばよいか。
とにかく覇気が伝わってこない一作でした。
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