パスワードを忘れた? アカウント作成
496075 journal

uruyaの日記: 前巷説百物語 / 京極夏彦

日記 by uruya

前巷説百物語 / 京極夏彦
★★★☆☆

根岸町損料屋ゑんま屋は布団などを貸し出す損料屋であるが、別の損も請け負っていた。依頼人が被ったどんな損でも、その損に見合った額さえ頂けば、きっちりと埋める。それがゑんま屋のもうひとつの顔である。

───

第一話 寝肥
四度も身請けされた女郎がいる。いずれの場合も、請け出した旦那が数ヶ月ももたずに死んでしまう。さらに不思議なのは、四度身請けされるには、四度女郎屋に売られなければならないのだ。その金はどこへ行ったのか?
この話には、女釣りの音吉という男がからんでいた。この男、地方へ行ってはその容姿で女を釣る。女は音吉を慕ってついてくるのだが、実は音吉には女房がいる。結果、いたたまれず、今さら故郷にも帰れない女は自分から女郎屋に売られるのだ。
又市と長耳の仲蔵、削掛の林蔵の三人は、件の女郎・お葉が首をくくりかけた現場に行き会った。その場に居合わせたゑんま屋の角助は、一同に、損料を出さないかともちかける。

第二話 周防の大蟆
山崎寅之介は、腰のものはとっくに売ってしまったとうそぶき、沈黙が怖いと言ってのべつまくなし喋っている、瓢々とした浪人者である。しかし山崎は、ゑんま屋の仕事では荒事を担当する、相当の腕利きであった。
今回の仕事は、仇討ちの助勢である。といっても助太刀をするわけではない。
川津藩士岩見平七の兄、岩見左門は勘定方吟味役であったが配下の者に謀殺された。藩は下手人疋田伊織を捕らえた上に九人の腕利きを助太刀として用意。万全の態勢である。これらは全て、川津藩世継の声がかりによるものであった。が、平七は疋田の冤罪を知っている。兄が謀殺されたとき、平七は疋田と共にいたのである。

第三話 二口女
西川某という旗本の妻が乳飲み子を遺して産褥で亡くなり、後添いに嫁いで来たお縫は、器量は劣るものの気立てのよい働き者で、姑との折り合いもよく、とても評判がよかった。そうこうするうちにお縫にも子ができて、次男が生まれる。さて腹違いの兄弟で跡目争い…とはならない。長男は、次男が生まれてすぐに死んでいたのだ。
しかし、この長男は折檻の上に餓死したのだと、ゑんま屋に訴えてきた者がいる。他でもない、お縫いである。折檻死が露見しているわけでもないし、むしろ今さら告白すればお家に迷惑がかかる。しかし夢見が悪いし、何とかしてくれという依頼であった。

第四話 かみなり
ゑんま屋の女将と角助が拐わかされ、半死半生の角助だけが戻される事件が発生。角助の懐には、夜這い家老の瓦版があった。先に仕掛けた仕事の件である。
常陸の小藩・立木藩留守居役土田左門は女癖が悪く、領民の娘女房に片っ端から手をつけてもてあそんでいた。これを始末するための仕掛けであったが、恨みに思った土田家縁者の者が玄人衆に依頼したのである。
善後策を図る一同だが、玄人衆に完全に制圧され絶対絶命の危機に陥いる。又市は、口八丁の本領を発揮し、仲間を人質に預けるのと引き換えに5日間の猶予を取り付けた。

第五話 山地乳
道玄坂の縁切り堂の絵馬の裏に名前を書いて奉納すると、名を書かれた者が死ぬ、という。確かに誰が名を書いて誰が死んだという明確な話はいくつかあるものの、まさかに神仏の力などではあるまい。死んだのならば、殺されたのだ。しかし、誰が何の目的で殺すのか?
絵馬の噂を聞いた同心志方兵庫は堂に乗り込み、ある思い切った策に出る。
一方、又市のもとには上方で小悪党を束ねている一文字狸こと一文字屋仁蔵からの使者、祭文語りの文作と玉泉坊が訪れ、ゑんま屋に六百両の損料仕事を持ちかける。関東の裏家業の元締め、稲荷坂の祇右衛門の外道仕事を潰そうというのである。

第六話 旧鼠
又市は事あるごとに祇右衛門の影を感じ、不気味さを覚える日々を送っている。
「まかしょう」という札売りがあった。子供相手に絵入りのお札を巻いて宣伝し、きちんとした札を売る、願人坊主の類いである。季節外れの時期にその「まかしょう」があらわれ、比叡山七不思議ゆかりの札を巻いているという。比叡山は、上方の一文字屋仁蔵一党の二つ名に使われているものだ…一文字狸が、ひそかに又市らに渡りをつけようとしているらしい。ゑんま屋をはずしての謎かけは、祇右衛門の目を避けているのだ。
そして、ゑんま屋ゆかりの四人の死体が、無惨な姿で自身番の櫓にくくりつけられ、ぶら下がっているのが発見される…

─────

巷説百物語シリーズのエピソードゼロ。あらすじを端的に言えば、青臭い青年又市が、小股くぐりの異名を取り、御行の又市となるまでの成長を描いた物語。当然ながら、シリーズ全てを読んだ人向けのおまけのようなお話であり、もしこれから読もうとする人がいたら全力で止めたいような作品であります。

京極デブ彦に関しては、俺としてはすでに信者の域に入っているわけなので、京極肉彦の新作であるからにはもちろんマンセー感想しか出てこないわけです。しかしまあ今回に関しては、最終話以外を一度連載で読んでいるわけで、読んで時間が経つと感想レベルではそこで消化しきってしまうのは人の性であり、特に書くような感想もないよなあ、と思っていましたよ。最終話を読むまでは。

いやいやいや、エピソードゼロ的な面白要素を最終話に全て凝縮してきましたなあ。おいしゅうございます。ご馳走様でした。巷説百物語シリーズといえば必殺シリーズのオマージュであることはすでに常識ですが、何かの必殺の最終回でこんなカタストロフな話がなかったっけかな。前巷説の五話で築きあげたものと以後の巷説とをつなぐお話であり、そしてシリーズのファンのための最終話でもある。逆に言うと、この最終話がなければ中身がスカスカな作品になってしまうところだったけど、さすがに京極ぷよ彦はそんなものは書かない。

しかし、これは全編を通してだけど、仕掛けに関してはどうかな…という感じも。又市の青臭さを強調するためもあるだろうけど、多少むりやり感があるのでは。

ラストに多少含みを残してますが、まあさすがにこれで終わりでしょう。少年ジャンプじゃないんだから。京極豚彦先生の次回作にご期待ください。

追記:まだ続くらしい。怪が続く限り続くんだそうだ。つまり水木御大の寿my…ゲフンゲフン

この議論は賞味期限が切れたので、アーカイブ化されています。 新たにコメントを付けることはできません。
typodupeerror

物事のやり方は一つではない -- Perlな人

読み込み中...