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uruyaの日記: カラマーゾフの兄弟 1 / ドストエーフスキイ・著 米川正夫・訳

日記 by uruya

河出書房世界文学全集19 カラマーゾフの兄弟 1 / ドストエーフスキイ・著 米川正夫・訳
★★★☆☆

フョードル・パーヴロヴィチ・カラマーゾフは好色な放蕩人でクズのような人間であったが、小金を稼ぐ才には恵まれていた。その先妻との間に一男を生し、後妻との間に二人の男子があったが、妻が生別・死別するといずれもネグレクトし、兄弟は互いの顔も知らずに成長する。
長男のドミートリィ・フョードロヴィチは先妻の従兄弟ミウーソフの伝手で育ち、学校も出ずに陸軍士官となる。浪費癖があり粗暴な熱情家で単純な男である。
次男のイヴァン・フョードロヴィチは亡母の育ての親に引き取られ、最終的に篤志家の貴族ポレーノフの手により成長する。頭脳明晰な論客で無神論者。
三男のアレクセイ・フョードロヴィチ(アリョーシャ)はイヴァンと共に育つ。人を愛し愛される博愛主義者であり、物静かであるのに不思議に注目され、誰からも好かれる純真な青年だった。

いちはやくフョードルの元へ帰っていたアリョーシャは、僧院の長老ゾシマに信服し、僧院で暮らしていた。そこへ二人の兄が帰省してくる。ドミートリィは財産に関してフョードルと揉めており、イヴァンはその仲介役のような役割を果たしていた。たまたま逗留していたミウーソフも交えて一同が会見すると、ゾシマ長老を訪ね仲介を頼もうという案が浮上する。放蕩人の父、直情径行の長兄、無神論者の次兄、そして当時僧院との訴訟を抱えていたミウーソフを交えて師と対面することに、アリョーシャは不安を覚える。

カラマーゾフ一同は僧院へ集うが、ドミートリィのみが姿を見せない。先約の夫人方との会合へ行く長老につきそったアリョーシャは、ホフラコーヴァ夫人とその娘リーズからカチェリーナの呼び出し状を受け取る。
その後ドミートリィが遅参してカラマーゾフ家の会合が始まるとアリョーシャの不安は的中し、一同は長老の前で醜い罵り合いをする。罵倒が最高潮に達したとき、長老はなぜか、ドミートリィの前で深々と礼をし席を立つ。下がった後、長老はアリョーシャに、自分が死んだ後は僧院を去り、俗界に出よと告げる。
昼餐の場に向かうアリョーシャを待ち構えていた神学学生ラキーチンは、軽薄なからかいを始める。その話によると、ドミートリィは許婚者の中佐令嬢カチェリーナをイヴァンに押し付け、淫奔な女グルーシェンカに夢中になっており、そしてフョードルもまたグルーシェンカを求めているらしい。
そしてその頃、昼餐会場では帰ったはずのフョードルが舞い戻り、前代未聞の暴言を吐いていた。そしてその暴言の中で、アリョーシャを僧院から帰させることを父親として宣言する。

フョードルにはまた、もう一人の子がいる。白痴の女に生ませた子で、スメルジャコフという癲癇病みであり、家僕のグリゴーリイ夫妻に育てられて、料理人役の下男として離れに住んでいた。
カチェリーナの家へ向かっていたアリョーシャはその途上、ドミートリィに呼び止められる。ドミートリィはカチェリーナとの関係、三千ルーブルの金を使い込んだ顛末を告白し、カチェリーナへ「よろしく」と伝えるように頼む。そして、カチェリーナの家に行く前に、父親に三千ルーブルの用立てを頼むように言う。ドミートリィは、フョードルがグルーシェンカのために金を用意していることを、スメルジャコフから聞いて知っていたのだ。

アリョーシャはフョードルの家に入るが、しばらくするとグルーシェンカがここに来ただろうと喚き立てながらドミートリィが乱入し、フョードルを殴りつけて去る。騒ぎのおかげで金どころではなくなったため、そのままカチェリーナの家へ行くと、カチェリーナは金についての事情をすでに知っているらしかった。アリョーシャが伝言を伝えると、そこにグルーシェンカも入ってくる。そしてその場でグルーシェンカが周到にカチェリーナを侮辱したために話を続けるのが不可能になり、明日また来るという約束でそこを辞去する。

僧院へ帰る途中、またしても待ち伏せしていたドミートリィは、カチェリーナとの会見の話を聞いた後、なんらかの決意をにおわせながら、アリョーシャに別れの言葉を告げるのだった。
そしてやっと一日が終わり、アリョーシャはカチェリーナの家で言付かったリーズからの手紙を読む。それはラブレターだった。

次の日。長老は死の床についている。
アリョーシャはまず父の家に立ち寄り、次にホフラコーヴァ夫人の家に向かう。その途中、六対一で石合戦をしている子供たちを見とがめる。一人抵抗している子の肩を持つアリョーシャに、その子は、カラマーゾフ家の者だということから石を投げつけ、指を噛んで逃げる。

ホフラコーヴァ家には、イヴァンとカチェリーナがいて、話し合っていた。カチェリーナは、何があろうと決してドミートリィを見捨てないと宣言する。そしてイヴァンが、自分は近々モスクワへ去る予定であると告げると、カチェリーナは一瞬間だけゆがんだ表情を見せた後、ことさらに喜んでみせる。アリョーシャは、カチェリーナがドミートリィに対する愛とイヴァンに対する愛を混同していると指摘する。
そしてイヴァンは去り、カチェリーナは先日ドミートリィが侮辱した二等大尉へ金を届けるようアリョーシャに頼む。
アリョーシャは二等大尉ニコライの家を訪ねた。アリョーシャの指を噛んだ子は、ニコライの子であった。ニコライは金を受け取らず、付き返す。アリョーシャはむなしくホフラコーヴァ家に戻る。ここでアリョーシャはリーズに求婚する。

アリョーシャはドミートリィを探し、フョードルの家に向かった。スメルジャコフから、イヴァンがドミートリィを広場の料理屋に読んだことを聞き、料理屋へ向かう。アリョーシャは料理屋でイヴァンに呼び止められた。ドミートリィはおらず、イヴァンは一人で食事をしていた。イヴァンは、責め苛まれる子供たちを引き合いに出し、神が作りしこの世界を否定してみせる。そして自作の詩劇「大審問官」をアリョーシャに語る。スペイン異端審問を舞台に、大審問官が顕現したキリストを捕縛し火刑にしようとする話だ。

語り終えたイヴァンはフョードル家へ戻り、スメルジャコフと話す。スメルジャコフは、次の日の夜、フョードルがグルーシェンカのために取り置いている金をドミートリィが奪いに来ることを示唆し、暗に手引きをしていることをにおわせる。イヴァンは結局何も言わず、次の日モスクワに向けて旅立った。

その日、ゾシマ長老が死ぬ。
アリョーシャは長老の遺骸から腐敗臭が漂ってきたことにショックを受ける。それは生物としては当然のことであったが、聖人は腐敗しないものとする見方があったためだ。
ラキーチンはアリョーシャをグルーシェンカの家に連れて行った。グルーシェンカは昔の恋人である「将校」からの手紙を受け取り、その求めに応じモークロエへ向かうのだった。

アリョーシャは僧院へ戻り、大地を抱擁する。アリョーシャが僧院を出たのは、その三日後だった。

─────

結論。俺程度の読み手がこれに手を出すのは百万年早かった。

自信を持って断言しますが、これを面白いと紹介している人がいたら、それは本物の知者/文学者/宗教者か、「おれは頭がいい」とアピールしたい似非知識人。
もしくは「こちら側」に引き込みたい人間の欺瞞。抗議すると、ニヤニヤしながらこう言うだろう。「うそはついてないだろ?」うむ、うそではないよ、うそではないけど…

とにかく難解極まるこの作品。何がどう難解かというと、解説の一文を引用しましょう。

正直のところ、「大審問官」は、二、三度読んだだけではよくわからぬ。キリスト教の事情に通じていないためだけではない。ドストエーフスキイの執拗きわまりない弁証法に耐えられぬからである。真意がどこにあるかわからなくなる。

「執拗きわまりない弁証法」これにつきる。
なにも「大審問官」だけじゃないのだ。ほぼ全編、すべてがそれによって埋めつくされているわけで、ほとんどが会話文による宗教哲学問答に終始。一読した程度でわかるようなレベルじゃないコムズカシイ話が延々と続いていくのだ。てこずるてこずる。
さらに「キリスト教の事情に通じていない」こともかなり大きい。これを理解するにはまず前提としてキリスト教、正確に言うとギリシャ正教の知識がかなり必要になると思われる。さらに当時のロシアおよび西欧の歴史、宗教史の知識があったほうがよいだろう。
加えて、読書理解力というものも相当に要求される。大衆娯楽小説しか読んでない俺程度に理解など到底不可能である。というか、一生涯かけて研究するほどの文学的素材を一読二読で理解しようという方がおこがましいわな。

しかしながら、それでも前半を読み通すことができたのは、難解さを上回る人間ドラマが展開されているからである。フョードル・カラマーゾフのクズっぷりと三兄弟の人格構成の面白さ、欲望をむき出しにして相克する父子の図、家族を巻き込んだ三角関係、四角関係。とりあえず宗教哲学なんかを棚にあげてストーリーだけ追っていくと、通俗な娯楽小説が浮かび上がる。
メンドクセェ宗教的命題やらなんやらすっ飛ばして読むのが正しいのかもしれんなあ。理解は学者にまかせ、われわれ大衆は面白いところだけを楽しんでいきたい。

とにかく相当の読書パワーを要求されることが判明したため、後半はじっくり読めるときを見計らってあたためておきたい。久々の難物。

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犯人はmoriwaka -- Anonymous Coward

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