uruyaの日記: 吉川英治幕末維新小説名作選集7 飢えたる彰義隊 / 吉川英治
吉川英治幕末維新小説名作選集7 飢えたる彰義隊 / 吉川英治
★★★☆☆
脚
圧政に苦しむ信州松代藩の百姓たちは今日も一揆の相談をしている。とはいえ、一揆など一度も成功したことはないのだ。いずれ斬罪が待つだけである。小庄屋の息子彦太は、かつての仲間が上方の尊皇攘夷にかぶれて吐いた言葉に惑わされ、どうせ一揆で死ぬよりはと、侍になって一暴れを志し、仕出屋の叔父を頼って江戸へ出る。
松風みやげ
絵に書いたような不逞浪人、ごろつき二人組。さらに輪をかけたような悪旗本にそそのかされ、強請りの思案をする。女郎屋の身売り時に兄として名義貸しした女が、江戸の大商人津の国屋藤兵衛に落籍されて、妾になっている。もう何度も金をたかって、いいかげん敷居も高いのだが、そこをもうひとふんばり吸い上げようとの魂胆。
飢えたる彰義隊
江戸開城後、上野山に篭って散った彰義隊の生き残りは、旧将軍家を慕って静岡にいた。しかし新政府に気兼ねして城下へは入らず、沼津の荒地で食うや食わずの開墾生活。飢えと戦う日々を送る。
函館病院
婚約者を連れて帰ると息巻いて、芸妓のお銀は函館に乗り込んできた。顔なじみの総帥榎本武揚にねじ込んで談判するも不調に終わり、それでも帰らずにがんばっているところを、戦闘に巻き込まれて負傷する。軍医の高松凌雲に助けられたお銀は函館病院に移り、傷が治った後は看護婦のような仕事をするようになる。
退屈兵学者
甲府の田舎兵学者、菅沼自治斎の家には、先祖の手によって彫られた、埋蔵軍資金のありかを示す銅板が伝わっていた。つい口をすべらした自治斎からその話を聞いた飛脚層二人組みと、京で新撰組に入ったものの脱走してきた弟子の十太郎、そして十太郎に恋する自治斎の娘お弦。総勢四人が埋蔵金をめぐるドタバタ騒ぎを巻き起こす。
慶応の朝
根性悪の田舎百姓どもに囲まれた暮らしに嫌気がさした小助は、江戸に出て金を稼いで帰り、自分を虐めた奴らを見返してやるのだと決意して、越後の村を出奔し三国峠にさしかかる。そこで小助は、ひょんなことから、やはり江戸へ落ちて行く江吉良勘十とお桑のカップルに合流し、共に江戸を目指すこととなる。
旗岡巡査
桜田門外にて井伊大老を斬った後。水戸勤皇党海後嵯岐之助は醤油舟の船頭とその娘に助けられ、辛くも故郷へ帰り着いた。故郷では兄にかくまわれて過ごすが、嵯岐之助を想っていたことを知っているくせに、帰っていることを知らせてもらえなかったことに怒ったお那珂が嵯岐之助を密告する。嵯岐之助は再び身を隠し、お那珂は別口の縁談に乗って豪商へ嫁ぐ。
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もとはといえば、水滸伝を読み返したくなったのだ。理由は伏せたい。水滸伝といえば俺の中では当然ながら吉川水滸伝である。しかし過去に二読はしているはず。未完作の三読めに入るか…それとも北方水滸伝…いやいや北方謙三に手を出すときっと新宿鮫を読んだとき以来の「ついに手を出してしまった」という軽い後悔に陥るに違いない…などと思案しつつ図書館の棚を眺めていたら、目に飛び込んできたのがこれでした。
考えてみれば、吉川英治の代表的超大作、全何巻にも及ぶようなタイトルはほぼ読破して、特に吉川三国志なぞは俺のバイブルといってよく、むさぼるように読み尽くしているわけだけども、その他の単独長編や短編はほとんど手付かずのままだったのだ。いやあ、気づかんでもなことに気づいてしまった。これで我が軍はあと10年は戦える。10年も。
そんな具合に出会いの稲妻が走っちゃったので、勢いで借りて早速読んだ本書。吉川英治の維新ものは、これまた初体験なわけですが、かなりよろしいです。面白い。全編を通して、革命前夜の熱病のような空気の中で、英雄ではない人々が翻弄される姿を描いています。ところどころに誰でも知ってる有名人が出てくるあたりもサービス満点。鉄舟キター!ちょw土方ちょい役w と、こういうテンションで読んでいった。
大長編とは違い、あくまで市井の人を描いた小編ぞろいですが、作品を通して当時の熱狂が伝わってくるのはさすがの一言。物凄くうまい。平易でテンポのよい読みやすい文章もかわらず、やはり吉川英治という人はエンタテインメントの巨人であることを再認識した次第。
なんだか藪蛇にいろいろ読み返したくなってきたのだが、ぐっと我慢。再読スパイラルに入ると出口が見えなくなるからな。しかし水滸伝はどうすんべえ。ちょお読みてえ。
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