uruyaの日記: 失われた探険家 / パトリック・マグラア
失われた探険家 / パトリック・マグラア
★★★☆☆
天使
ハリーという老人と親しくなった小説家。天使を知っているという老人から、その話を聞き出そうとする。
失われた探険家
十二歳の少女イヴリンは、ロンドンの自宅の庭で、熱病に冒された探検家を発見する。探検家は一九六〇年以前のコンゴ=ザイールで食人族に追われていたようだ。
黒い手の呪い
十九世紀末、インドへ赴任している婚約者セシルを訪ねたルーシーは、彼の様子がおかしいことに気づく。セシルは驚くべき呪いを受けていた。
酔いどれの夢
「波止場」という題の絵に取り組んでいる酔いどれ画家は、男娼の少年からインスピレーションを受ける。
アンブローズ・サイム
抑圧された性欲を爆発させた青年神父アンブローズ・サイムは、清掃人が雨どいの掃除をしているのを見て動揺する。
アーノルド・クロンベックの話
当時駆け出しの女性記者だったわたしは、絞首刑を間近に控えた殺人鬼アーノルド・クロンベックのインタビューを志願する。アーノルドは自分の死を恐れる気配もなく、絞首についての詳細な考察を披露する。
血の病
アフリカでマラリアに罹患し廃人同様になった学者が帰国。出迎えた妻と子と共に〈ブルー・バット亭〉という宿屋に宿泊する。偶然そこに宿泊していた旧知の男と不具者の妻は不倫の恋に落ち、子供は宿屋の娘と知り合う。だが、その宿屋には異様な人々が巣食っていた。
串の一突き
首を吊って自殺した叔父は、フロイトら精神分析医の姿が小人となって見える幻覚にとらわれていた。叔父の死因をフロイト流の男根思想にからめて訳知り顔に語る主治医に、私は反発を感じている。
マーミリオン
猿の撮影を得意としている女性写真家のわたしは、スパイダー・モンキーの撮影のために踏み込んだルイジアナ州で、マーミリオンという屋敷の廃墟に踏み込む。そして、そこに棲む何者かの気配を感じたわたしは、かつてその屋敷に住んでいた家族の歴史を追う。
オナニストの手
いかれた連中の集まるバー〈バビロニア〉に、動く右手が現れた。手は、バンドのボーカルの首を絞めたり、トイレで女の尻をなでたり、やりたい放題。
長靴の物語
にわかに核戦争が勃発。農夫ハーブの夫婦と子供たちはシェルターに入るが、放射能は意外に長く残留し、食糧不足の危機に。
蠱惑の聖餐
蠅の俺はトンボのアリアドネに誘われて〈蠱惑の聖餐〉に向かう。
血と水
狂気と正気の境界にいるサー・ノーマン・パーシー。彼の妻もまた、鬱病を患っている。レディ・ノーマンを診察している医師キャッドウォーラダーは、彼女のある身体的特徴を指摘していた。
監視
刑務官志望の学生が、専門学校教授のパーキンズをストーキングする。パーキンズには妻子がいるが、それとは別に、若い女とつきあっているようだった。
吸血鬼クリーヴあるいはゴシック風味の田園曲
レディ・ホックは、息子のチャールズが家に招待しているクリケットチームの中に、吸血鬼クリーヴが紛れ込んでいるのを発見する。
悪臭
家の悪臭に気づいた男は妻子を咎めるが、臭いはきつくなっていくばかり。
もう一人の精神科医
ウィルスンが着任した精神病院にはスピーゲルという前時代的フロイト主義の精神科医がいた。二人ははすぐに対立する。
オマリーとシュウォーツ
オマリーは恋人のシュウォーツを陰惨な事故で亡くした後精神に変調をきたし、駅でストリートミュージシャンを始めた。
ミセス・ヴォーン
不倫の恋にのめりこむ男。
長編の一部。
─────
奇想コレクション。
ポストモダンゴシックという触れ込みの作家。怪奇と幻想のゴシックホラーの使い手ですね。不気味でグロテスクで、でも、グロテスクなんだけど何故か笑ってしまうような、妙な皮肉っぷりやブラックユーモアが感じられる、面白い作風でした。構成に凝っているものが多いけど、ショートショートと言ってもいいくらいの短い話が揃っているので、読み疲れない。
十九編の感想なんていちいち書けないけど、総体として特徴をあげれば、精神病(医|者)あるいは両方、ひねった一人称、叙述トリック。最後のは叙述というより解説の表現をパクった方がわかりやすい→「信頼できない語り手」。特に狂気を扱ったものは読んでてとても面白いです。ちょっとした表現から、語り手が正常ではないことがじわじわとわかってくる。さすが精神科医揃いの家族の中で育っただけはある、といいますか。訳者解説では精神科医の父親のエピソードにも触れられてて、なかなか興味深いお話が書かれてました。すごい家族ですな。
あとまあ蛇足なんですが、一部訳語に、あれ?これ使っていいの?という単語が使われてて、少し気になりました。俺自身は安直な言葉狩りには反対の立場ですが、かなり面倒な団体がいる単語だったので…うーん、あれはいいのだろうか…
失われた探険家 / パトリック・マグラア More ログイン