uruyaの日記: 灰の迷宮 / 島田荘司
灰の迷宮 / 島田荘司
★★★☆☆
突如現れた浮浪者風の男がバスに放火、炎上させた。事件に巻き込まれ、逃げようと飛び出した男がタクシーにはねられて死亡する。鹿児島県のエリートサラリーマンだった死亡者、佐々木徳郎の自宅からは、新聞の切り抜きが発見された。それは二年前に吉敷がかかわり迷宮入りした、壺井という男の転落死事件にはっきりとつながる証拠品だった。
続々と浮かび上がる、佐々木の不審な行動の数々。また、この事件が七年前に起こったバス放火事件とそっくりの展開を見せていることや、佐々木が犯人の男と顔見知りのようだったという証言、さらにはヤクザ者と付き合いがあったような壺井とエリート意識の強い佐々木の間に、鹿児島という地以外の接点がないことなど、数々の謎が吉敷の前に立ちふさがる。
脈絡もなく、バラバラに展開しているような事件には、いったいどのような関係があるのか。もつれた糸をほどくための手がかりをつかむべく、吉敷は鹿児島入りを決意する。
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吉敷シリーズ。
今回もまた、トラベルミステリの土俵で本格ミステリの論理を展開しています。どう判断したらいいのだろうか。考えられることとしては
- 好意的に見れば 本格と社会派の融合を目指して試行錯誤中
- 悪意的に見れば 本格的方法論を社会派に持ち込もうとして失敗している
- うがって見れば 社会派しか注文がこない当時のミステリ出版界に対する反抗
こんなところでしょうか。
この先の展開はほとんど情報として持っていないけど、今のところの感触では、全部の要素が交じり合ってるんじゃないかなあ、とか考えたり。
とりあえず今回の話は、よくできていると思います。もしこれが本格と社会派の融合を目指しているとすれば、一定の成功を収めているのではないかと。謎が謎を呼ぶ展開の末に名探偵が「さて」と言い、すべての疑問が氷解していく本格の手法をうまく取り入れ、多少強引ではあっても納得のいく(かな?)落ちがつきました。
ただし、本格ではある程度許される「多少強引」な部分が社会派では興ざめの原因となってしまうことについては、まだ課題を残しているのではないでしょうか。それに、証拠品を勝手に破損するような行動などを島田君はいつも無邪気に書いてるけども、社会派の刑事はそんなことしない。飛影はそんなこと言わない。
まあ感想としては良い面も悪い面もいろいろありますけども、端的に言えば面白かったですよ。今後の展開への興味が膨らんだことも含めてね。シリーズ中でも出来のよい作品のひとつ。
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