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uruyaの日記: 江戸川乱歩全集 第3巻 陰獣 / 江戸川乱歩

日記 by uruya

江戸川乱歩全集 第3巻 陰獣 / 江戸川乱歩
★★★☆☆

踊る一寸法師
見世物小屋の宴会で、他のメンバーからいじめられている小人の男が、手品師の出し物「美女の串刺し」の真似を、座興に演ずる。

毒草
堕胎に使うという毒草の話をしていると、思い出したのは郵便配達夫の家族のこと。貧乏人の子沢山で、今も妻の腹に赤子がいるのだ。

覆面の舞踏者
好事家が集まる秘密クラブ「二十日会」の、今回の会合は仮面舞踏会である。十七人の会員それぞれに誰が誰だか見分けがつかぬ扮装をし、同数の婦人方を用意して、くじ引きでカップルを作ろうという趣向。

灰神楽
パトロンであり恋敵でもある男を、勢いあまって殺してしまった貧乏絵描き。犯罪を隠蔽するための計略を立てるが…

火星の運河
暗い森を彷徨う男の物語。幻想ショートストーリー。

五階の窓
社長が五階の窓から転落死。その直前、セクハラ社長はタイピストを社長室に呼び出していた。
リレー小説の端緒。続きは未収録。

モノグラム
互いにどこかで知っているような気がするのだが、話をしてみても全く接点が見つからない、二人の男。その意外な接点は、一人の女だった。

お勢登場
不倫に励む妻のお勢を咎められない、気の弱い病気がちの亭主がいた。いつものようにお勢がいそいそと出かけた後、子供たちと隠れん坊の遊びを始める。

人でなしの恋
新婚半年の夫が、夜な夜な書見をすると言って蔵にこもり、実は女と会っていることに気づいた新妻は、蔵の中を探ろうとする。

鏡地獄
レンズやプリズム、鏡などに異様な執着を示す男は、学校を卒業すると就職もせず自宅の裏庭に研究室を建てて引きこもり、奇妙な実験を繰り返していた。

空中紳士
東欧のR国から亡命中のルール皇太子を招いていた巽小路侯爵が殺され、ルール殿下が失踪した。夫には内緒の借金を作っていた巽小路夫人、夫人と親しい園部男爵、公爵がパトロンをしていた美少年画家白樺清児、謎の人物響晰(ひびき・あきら)、そして「この世におさらばを告げた男」など、怪しい人々が関係する中、婦人新聞記者星野龍子が事件を追う。果たしてこれは公爵の財産を目当ての凶行か、はたまたR国の政争による陰謀か。謎の阿片窟、逃亡した獅子、数々の冒険が龍子の前に立ちふさがる。果たして事の真相やいかに。

陰獣
探偵小説家の私は、実業家の妻小山田静子と知り合って相談を持ちかけられる。
現在の夫と結婚するより以前につきあっていた平田一郎は、今は大江春泥というペンネームでやはり探偵小説を書いているのだが、静子の婚前に交際があったことをタネに、脅迫状を届けてきたという。手紙には、静子が家で何をしていたかを、実に詳細に、仔細もらさず記してあるのだ。小山田家に潜み、一部始終を監視しているとしか思えない…まるで春泥の著作「屋根裏の遊戯」の主人公のように。
陰鬱で変態的な作風の厭世家大江春泥は、正反対に明るい話を得意とする私とは、以前よりライバル関係であった。編集者などの伝手をたより、失踪しているという春泥の後を追うが、その行方は一向に知れない。そうこうするうちに、静子の夫である小山田六郎の刺殺体が発見される。

芋虫
戦争で負傷して両手両足を失い、まるっきり芋虫のような姿になってしまった男と二人、田舎へ引き払ってきた妻は、異形な情欲に取り憑かれる。

─────

光文社文庫の江戸川乱歩全集の全三十巻、だいぶ前に買い揃えてたんですが、まあ見事に積読になっておりまして、とりあえず読もう、ということで続きの三巻から。『鏡地獄』『陰獣』『芋虫』は再読。再読ものや短編に関しては今さら感想もクソもないです。初期乱歩らしい変格ものの短編が揃ってて面白く、特に『陰獣』は代表作のひとつに数えられる傑作です。

唯一の長編『空中紳士』
江戸川乱歩、小酒井不木、国枝史郎、長谷川伸、土師清二の五人の合作。小酒井不木と国枝史郎は言わずと知れた探偵小説伝奇小説の巨人、長谷川伸は代表作『瞼の母』など、土師清二は捕物帳などを書いていた人。このメンバーが設立した「耽綺社」という同人会の作品です。詳しい時代背景はこのあたり。
新・読前読後 | 探偵小説の合作・リレー

内容は冒険ミステリー小説でありまして、まだ読んでないので想像だけど、おそらく怪人二十面相のシリーズなんかと同じ路線だと思います。なかなかうまく構成されててラストの意外な真相などもあり、面白いんだけど、乱歩自身が自作解説で指摘しているとおり、複数の人物の考案によってストーリー展開の波乱万丈さは出ているが、個性が失われている。秀作ではあるけれど、印象にはあまり残らない。二箇所ほど子供だましの仕掛けがあるのも、ちょっとなぁ…

たぶん、ここに収録されていなかったら一生読むことはなかった作品。そういう作品に触れるのは、全集で読む面白さのひとつでしょうか。

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身近な人の偉大さは半減する -- あるアレゲ人

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