uruyaの日記: 秋の花 / 北村薫
秋の花 / 北村薫
★★★☆☆
正ちゃんが泊まりに来た日、私の母校の文化祭が中止になった話が出た。文化祭直前に、人が死んだのだ。
津田さんというその子は、小中高と私の後輩にあたる。津田さんには和泉さんというとても仲のよい友人がおり、二人と私は家も近所で、顔見知りだった。津田さんは生徒会に属していたのだが、生徒会には文化祭の前に合宿を行う伝統がある。その合宿の最中、夜中に、津田さんは屋上から転落したのだ。事故だと思われた。
次の朝、正ちゃんと一緒に家を出た私は、郵便受けの中に、高校の教科書見開きのコピーが入っているのを見つける。中身はアダム・スミスの国富論。神の「見えざる手」という部分に赤のマークがついていた。
その後、私の家に突然和泉さんが訪ねてくる。和泉さんはショックのためか様子がおかしかったが、教科書のコピーを示すと、それが津田さんの教科書のものだということを証言してくれた。教科書自体は津田さんと一緒の棺で焼かれてしまったらしく、つまりそれは、すでにこの世に無い教科書のコピーだった。
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円紫師匠と《私》シリーズの三作目。どういうわけか四作目の『六の宮の姫君』だけが既読だったのだが、これでようやく追いついた。といっても残る未読作は『朝霧』だけだけど。
素晴らしい作品です。なんとも痛ましい真相と、それを消化して生きていかなければならない者への許し。解説を読んで冒頭「母へ───」の献辞との関連性を指摘されたときには思わずうなった。重苦しく救いのないテーマを扱いながら、きちんと再生への希望を見せて収束する。読了後、いろんな感情が渾然一体となって、少し呆けてしまった。見事な手並みだと思う。
物語運びの途中で描かれる、卒業生である大学生の目を通した高校生活というのも、これまた郷愁を誘う視点。このあたりには教職一家に生まれ自らも高校教師をしていた北村薫の経歴が生かされているのだろう。
と、物語については手放しで褒めますが、やはり登場人物が浮世離れしている感はある。どうなんすかね、文学部系のジョシダイセーってあんなアカデミックな会話を楽しんでいるものかしら。まあ大衆娯楽読むのに忙しくてブンガクは華麗にスルーしてた俺が無教養なだけなんだけど、あいかわらず文学評論的なコネタが満載に詰まっておりまして、せいぜい芥川くらいまでならまだしも、欧米文学の話になると名前すら聞いたことないレベルでさっぱりついていけない。
次作の『六の宮の姫君』になると全編が文学論という大技に出てくるわけで、順番どおりに読んでたらたぶん俺ゲラゲラ笑ったと思う。「とうとうすべて文学論で埋めちゃったよこの人(笑)」今さらながら失敗したなあ。順番に読むんだった。
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