uruyaの日記: 殺しの掟 / 池波正太郎
殺しの掟 / 池波正太郎
★★★☆☆
おっ母、すまねえ
むかし女郎屋にいた二人の女が、十年ぶりで偶然に再会した。店にいるときからおぬいに目をかけていた姉御肌のお米が様子を聞くと、まじめな大工に落籍されたおぬいだったが、夫とは死別し、今は煙管師の村田屋と再婚しているらしい。しかし、実の子として育てていた前夫の連れ子が嫉妬してぐれはじめ、悪い仲間とつきあって村田屋に金をせびり、手がつけられない状態だという。
夜狐
夜狐の弥吉という二つ名を持つ、女を食い物にすることで評判のよろしくない阿呆烏(あほうがらす:店を持たない女郎屋のこと)が、あるとき侍同士の殺し合いを目撃する。大身旗本のお家騒動に絡む殺しだと知った弥吉は、黒幕である奥方を強請ろうとするが…
顔
木村十蔵は金づくで殺しを請け負う稼業をしていたが、悪人しか殺さないことを信条としていた。あるとき、十蔵と同業である仏具屋の和助の殺しを依頼されるが、どうも気が進まない。元締めである音羽の半右衛門からは、善人もかまわず殺す非道な男だと聞かされていたのだが、そうとは思えないのだ。
梅雨の湯豆腐
楊枝作りの彦次郎のもとに、別の元締めから同時にふたつの殺しの依頼が入る。ひとつは万吉という中年の大工、もうひとつは蝋燭問屋の後妻として入り込んだ色っぽい大年増がターゲットである。仕事にかかろうとした彦次郎がふたりの身辺を調べると、このふたり、以前彦次郎もかかわっていた盗賊団にいた者たちだった。
強請
旗本川窪家四百石の用人内田勘兵衛は、昔の仕事をたてにして音羽の半右衛門を強請り、毒薬を手に入れる。川窪家当主の後妻として自分の娘を送り込んでいた勘兵衛は、娘が妊娠したのを知ると、跡取り息子を毒殺して生まれてくる子供を嫡子に仕立て上げ、川窪家を乗っ取ろうとしていたのだ。
殺しの掟
以前にも依頼を受けたことのある蝋燭問屋の主人が、再度音羽の半右衛門へ依頼をしてきた。松永彦四郎という、腕は立つが酒乱で無頼な男が、主家を退転した後に頼ってきた先で、ある医者の妻を見初めて付け狙い、手篭めにした上にさらにストーカー行為を繰り返しているという。半右衛門からこの仕事を請け負った西村左内は、さっそく彦四郎の周囲を調べはじめるが、どうも話が違っている。
恋文
硯問屋の手代音松は、ひそかに恋焦がれていた足袋屋の娘おそのから恋文をもらい、呼び出される。しかしこの恋文、主人が音松を目にかけて信頼していることに嫉妬した先輩手代平次郎の、悪質ないたずらだった。そうとは知るよしもない音松は、駆け落ちを持ちかけられたことで思いつめてしまい、店の金を持ち逃げして出奔した上で、待ち合わせ場所へ来てしまった。このいたずらに手を貸していた新七は、音松が大金を持っていることを知り、恐ろしい考えを抱いて実行に移す。
夢の茶屋
奥御祐筆飯沼新右衛門は山城屋に紹介された「夢の茶屋」で遊んでいた。茶屋娘や素人の町屋の女房などを、求めに応じて斡旋する、一種の売春宿である。ところが、その新右衛門の姿を見ていた一人の男がいる。矢口仁三郎といって、かつて飯沼家で若党奉公をしていたが、女中と通じて叩き出された者であった。仁三郎は、新右衛門が置き忘れて行った煙草入れをかたにとり、強請りをはじめる。
不忍池暮色
小間物問屋伏見屋の女房お孝はもともと小店の娘だったが、伏見屋主人長次郎に見初められ、いわば玉の輿に乗っていた。しかし、幼馴染だった大工の伊太郎と偶然再会したお孝は、それ以降不倫の逢瀬を重ねている。それを知った長次郎は可愛さあまって憎さ百倍、お孝の殺しを依頼する。
一方、伊太郎の妻であるお清もまた、伊太郎の不倫を知って心乱れる日々を送っていた。
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仕掛人シリーズの原型となった作品群。
俺の読書傾向からしてかなり初期の段階で読んでいて当然であり、実際に何度も読もうと思いつつ常にタイミングを逸していた仕掛人シリーズに、ついに手をつける。鬼平も剣客商売も読んでるのになぜ仕掛人が未読かって話だ。こっちが先だろ常考。
内容はもう面白いに決まってるので今さら感想とかねぇ…という感じです。面白くないわけがない。ただこの本の場合、『殺しの掟』などの評判がよかったため「仕掛人」という形でシリーズ化したという、いわばプレ仕掛人という位置にある作品集なので、「仕掛」という言葉はまだでてこないし、さらに『夜狐』『恋文』の二編はワルの始末を描いた話ではあるけれど、殺し屋家業のキャラクターは登場しない。
仕掛人シリーズと共通の出演者としては、まず『梅雨の湯豆腐』に梅安の相棒である彦次郎(ただしここでは平行世界のお話)。そして『顔』『強請』『殺しの掟』の三編に元締の音羽の半右衛門が出演。半右衛門の場合、もともと仕掛人シリーズには出ていなかったらしい。テレビシリーズの『必殺仕掛人』で、『殺しの掟』のキャラである半右衛門と西村左内を登場させていたのだが、それが好評だったため原作シリーズに逆輸入されたとのこと。
さて、というわけでシリーズ全七巻への布石は打った。非常に楽しみだ。
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