uruyaの日記: 死神の精度 / 伊坂幸太郎
死神の精度 / 伊坂幸太郎
★★★☆☆
この世に生きる人たち、すべての人が寿命を全うするわけではない。事件や事故にまきこまれ、寿命を待たずに死ぬ人たちがいる。そういう人は、私たち死神に選ばれたのだ。情報部が候補を選択し、調査部が一週間前から接触して本人が死ぬべきか否かを判断し「可」か「見送り」のどちらかを答える。「可」といえば本人は死に、「見送り」とすれば死は見送られるわけだ。が、この制度は形骸化しており、よほどのことがなければ「可」と答えるのが常だった。
私は調査部に属している。若い優男になったり中年のヤクザ風になったりケースごとに見た目は変わるが、呼び名だけは一貫している。千葉というのが私の名だ。
死神の精度
さえない地味なOL藤木一恵がターゲット。彼女は大手企業で苦情処理係をしているが、妙なクレーマーにつきまとわれているという。クレーマーは彼女を名指しで呼び出して、電話口で歌を歌わせたりなど、どんどん行動がエスカレート。最近は外で会おうとまでしているらしい。
死神と藤田
抗争事件の最中にある藤田というヤクザ。藤田と共に行動している阿久津が言うには、藤田は「ロックンロール」なのだそうだ。現在では少なくなった任侠の男で、阿久津は心酔しているようだ。しかし今どきのヤクザの世界では、そういう男は煙たがられるようである。
吹雪に死神
雪の山荘にて中年夫婦の妻田村聡江に接触。この山荘にはすでに「可」とされた者たちが多数集まっている。つまり、これからここで連続殺人事件が起こるというわけだ。たとえば彼女の夫は明日死ぬことになっている。一週間後、彼女が死ぬかどうかを決めるのが私の役割である。
恋愛で死神
ブティックに勤める萩原は、異性に好かれる外見をしているが、いつも野暮ったい眼鏡でそれを隠している。彼は向かいのマンションに住んでいる古川朝美が気にかかっているようで、つまり恋をしていた。最近悪質なストーカーにつきまとわれているらしい彼女の相談に乗るうちに、ふたりはどんどんお互いの距離を縮めていく。
旅路を死神
渋谷で人を刺し殺した青年森岡耕介を乗せて、私は車を北へ走らせていた。目的地は十和田湖、奥入瀬渓流である。森岡は逃亡の途中で私の車をジャックして奥入瀬へ向かえと指示したわけだが、旅を共にする私に対して、そこへ行こうとしている理由を問わず語りに語りだす。
死神対老女
美容院を経営している老女は、私が死神であることを見抜いた。むかしから、彼女の周囲の人間は次々に死んでいった、ついに自分の番だと言い、少しも怖がりも悲しみもしない。そんな老女が、私に頼みごとをしてきた。明後日、十代後半の客を四人、男女混合して連れて来てくれという。
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えるしっているかしにがみはおんがくがすきだ
死神を主人公にした六編の連作短編。ひとつひとつが異なる趣向で書かれており、順にシンデレラストーリー、ハードボイルド、本格推理、恋愛小説、ロードノベルの形をとっている。ラストのお話は、まとめみたいなものか。
オフビートという言葉は伊坂幸太郎のためにあるようなものだと思うんだが、今回も奇妙な味わいにあふれている。人間の価値基準とは違うものを持つ死神は、人間からみれば冷徹であるが、ミュージックが大好きという意外な一面を持っている。レトリックが通じず、ずけずけとものを言うところはお茶目に見える。その死神から見た人間たちの生と死。突き放しているようでもあり、包み込むようでもあり。なんだろね、この読後感はうまく言えんです。
ともすれば陳腐になりがちな死神という設定を使って、爽やかなラストを演出するのはさすが。
でも、この爽やかさは反則ではあるけどな。ストーリーと無関係だもの。伏線の回収も、他長編のようにストンときれいに落としているわけではないが、まずまずの出来かと。後付けだけどね。
映画は金城武?まあヒットするんじゃなかろうか。わかりやすくて読みやすい作品なので、原作もスイーツ(笑)な方々に読まれそう。
しかし、東野と伊坂は売れてるなあ。
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