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uruyaの日記: 二人阿国 / 皆川博子

日記 by uruya

二人阿国 / 皆川博子
★★★☆☆

豊臣から徳川へと世が移ろうとしている頃、京都五条河原には笠屋舞の犬太夫一座、ややこ踊のお国一座、狂言師のとっぱなどの芸人たちが連日興行を行っていた。犬太夫一座の少女お丹は以前見た能に魅せられており、目をかけられている遊女屋の主、原三郎左衛門から金を工面してもらって面を手に入れる。しかし、面の使用は能楽家四座にしか認められておらず、咎められた犬太夫一座は京を追われることになった。
一座はとっぱと共に京を落ちるが、その途中でいくさに巻き込まれ、座長の犬太夫とはぐれてしまう。そこへ通りかかったお国一座が彼らを吸収合併して、新生お国一座が誕生する。一座は佐渡へ渡って二年を過ごした後に京へ戻るが、その年月のあいだにお丹は少女から娘になり、逆にお国の容色には翳りが見え始める。しかしお国は、新考案のかぶき踊りによって天下一の評判を取る。

─────

歌舞伎の創始者とされる「出雲の阿国」を題材に取った小説だけど、爽快感のある出世劇とか、おもしろおかしい話では、もちろんない。皆川博子が書くからには当然のように陰鬱。当時の芸人たちの風俗や、流行していた「かぶき者」たちの生き様を淡々と描き、そのキャンパスの上に、少女から女になっていくお丹、最後まで芸人として生きるお国の、ふたりの女の姿を重ねて映し出していく。

これは「女」の物語である。天下のかぶき者なごさんさま=名古屋山三郎も猪熊少将もちょい役程度。名古屋山三郎に至っては名前しか出てこないほど小さい扱いだし、その他登場するすべての男は、原三郎左衛門以外はスパイス程度の扱いしかされない。

押さえた筆致の中から女の情念が吹き上がってくるような凄み。そこが読みどころである。皆川博子の手腕が冴えている。

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