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uruyaの日記: 砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない / 桜庭一樹

日記 by uruya

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない / 桜庭一樹
★★★★☆

日本海に面した中国地方のうらさびれた町に、あたし山田なぎさ十三歳は住んでいる。お父さんが死んだあと、お母さんとお兄ちゃんとの三人暮らしだが、お兄ちゃんの友彦は引きこもりってやつで、女手ひとつに頼る生活は、とても苦しい。あたしはいつも実弾を追い求めていた。社会に出て生きていける力、大人たちに対抗する武器を。

ある日あたしの学校に、転校生がやってくる。海野藻屑という変な名前のその子は、有名な歌手の子供であるらしいが、自分のことを人魚であると言いはってミネラルウォーターをぐびぐびと大量に飲んでいた。奇妙な言動を繰り返すその子のことを友彦に話すと、友彦は、藻屑は砂糖菓子の弾丸を撃っているんだ、と言った。けして撃ちぬけない、甘くてもろい弾丸を。

─────

今をときめく直木賞作家桜庭一樹の出世作で、ライトノベルとして出版されたもの。後に一般書としても再発行された。

暗黒の結末がしょっぱなに提示されて、避けようのない方向へ、物語はどんどんどんどん走り出してゆく。行き先が袋小路であることを知りながら、逃れることができない。これは、子供であるという理由で閉塞状況にあるものたちと大人が作る世界との、戦いの記録だ。抗いようの無い流れの中で必死に砂糖菓子の弾丸を撃ち続ける子供たちを、淡々とした視線で描いた、壮絶な戦記。

しかしこの話は、単に暗く救いのない話だというわけではない。やりきれない結末を迎えた後、それを勝利への希望、戦いへの意志へと昇華させている。この変化は、子供の視点から大人の視点への変化だろう。かつてなぎさの担任もたどったであろう変化だ。これは、なぎさと友彦の成長をつづった物語でもあるわけだ。特に友彦においては象徴的で、弾丸を撃つどころか飴玉の塹壕にもぐっている、読者に苛立ちしか与えない(少なくとも俺には)このキャラクターの存在意義が、最後においてはじめてわかった。

手放しで褒める。この小説はすごい。一級の青春成長小説だった。

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