uruyaの日記: 世界の中心で愛を叫んだけもの / ハーラン・エリスン
世界の中心で愛を叫んだけもの / ハーラン・エリスン
★★★☆☆
世界の中心で愛を叫んだけもの
交叉時空「クロスホエン」にて、狂気にとりつかれた七頭の竜が捕らえられた。その世界に住む種族、代訴官への昇進を狙っているライナは、竜の狂気を平行世界へ「排出」するよう、排出法の発見者である科学者センフに要求する。
101号線の決闘
真っ赤なマーキュリーに追い抜かれたジョージは頭に血が上り、妻の制止も聞かずに交通管制局を呼び出して、決闘を申し入れる。オプションで仕込んだ秘密兵器による車同士の決闘だ。
不死鳥
親友のタブが開発した時間地震計により、失われた伝説の大陸を砂漠から浮上させる計画。資金を出したのはマーガの亭主。しかし探検隊は遭難し、タブは熱射病で死んでしまった。
眠れ、安らかに
サルガッソーの海底に眠る〈睡眠者〉は、人々の思考を読み、戦争に関わることを打ち消してしまう。そのため六百年の間人類は戦争を忘れていた。しかしロレインとリーフという二人の男が現れて、思考を不透明化する技術を手に入れ、戦争の復活を目指して互いに戦いつつ〈睡眠者〉を無力化しようとする。
サンタ・クロース対スパイダー
エージェント、クリスは九月半に電話で起こされた。S.P.I.D.E.Rが現れたのだ。大量のおもちゃを生産し続ける工場をポポとコーロにまかせ、クリスはヒルトップ基地へ向かう。
S.P.I.D.E.Rが何者で目的は何なのか、誰も知らない。それが何の略称かさえも。奴らは黒い霧状の生物で、人間の脳にとりついて宿主を思いのままに操る。今回は大統領候補やシカゴ市長をはじめ、八人の人物に憑いたということだ。
鈍いナイフで
エディ・バーマは、ナイフによる傷を負って場末のキャバレーに逃げ込んでいた。彼は社交的でユーモアに富んで賢く、ある種の人たちに必要とされるカリスマ性を備えた人物だった。ある種の──空虚な、何も持たぬ人たちに。
ピトル・ポーウォブ課
またあれが送られてきた。モーグはうんざりする。付属肢を振り回し、顔面の開口部からはいつもと同じ音が発せられている。「助けてくれ!」
名前のない土地
女がパクられて食い詰めてしまったポン引きでジャンキーのノーマン・モガードは、行きがかりで殺人を犯して逃走する途中「脱出は店内へ」と書かれた看板を目にして店に飛び込む。店の主人に脱出を頼んだノーマンは、次の瞬間ジャングルの中にいた。
雪よりも白く
男めかけのポールは今の金づるである伯爵夫人とエベレストに来ていたが、嵐に襲われて遭難してしまう。
星々への脱出
殖民星〈ディラードの星〉に現れたキバ星の大艦隊は、その星に住む地球人たちを虐殺していた。その騒ぎの中、麻薬中毒のこそ泥ベント・タラントは地球人レジスタンスに捕らえて、ある手術を施される。「歩く爆弾」の役目を果たす、なりふり構わず逃げ回るだけの人間と見込まれたのだ。星と艦隊をまるごと消滅させる爆弾の存在によってキバ星人たちと取引し、逃げる時間を稼ぐためのおとりである。
聞いてますか?
ある朝起きると、アルバート・ウインソーキはその存在を誰からも知覚できないようになっていた。彼の姿は誰にも見えず、彼の声は誰にも聞こえない。
満員御礼
ニューヨークに円盤が現れた。中から出てきた生き物たちは、華麗な動きとポーズで観衆たちを魅了する。
殺戮すべき多くの世界
世界殺戮者ジャレッドは、依頼者に雇われて惑星を征服するのが仕事だ。リーフという世界をイカ型ヒューマノイドに受け渡したジャレッドは、次の依頼を彼のマシーンに選抜させる。女権世界ケインの征服が依頼内容だが、マシーンは征服の前にケインの統治者イリーナを生け捕ることを指示した。
ガラスの小鬼が砕けるように
ルーディは〈丘の家〉を突き止めた。徴兵中に、婚約者クリスからジョーナと一緒に〈丘の家〉で暮らします、という手紙が届き、除隊してからその家を探し回っていたのだ。〈丘の家〉ではクリスら十一人の男女がドラッグにまみれて暮らしていた。
少年と犬
第三次世界大戦後の荒廃した世界には、ぐれん隊や、組に属さないソロが闊歩していた。ソロの中には犬とのペアを組んでいるものも少なくない。大戦前に生み出された犬にテレパシー能力をもたせる技術により、彼らは犬と会話し共存関係を築いていたのだ。
アルバートと相棒の犬ブラッドは、アワー・ギャングが仕切る映画館に入るが、その中でブラッドは「女」の臭いを嗅ぎつける。地下にもぐっているミドルクラスの連中が、ときおりポルノに惹かれてやってくるというアレかもしれない。
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エヴァンゲリオンTVシリーズ最終話のタイトルに引用され、さらにセカチューが二次引用したことでタイトルだけは非常に有名な作品。関係ないけど「さいしゅうわ」で変換すると最終倭と出た。辞書が荒山脳に。
全編がバイオレンスに彩られてるわけで、日本で言うとそうだな、永井豪あたりのイメージが近いか。呼吸をするように暴力を扱い、淡々と殺戮したりする。そんな収録作の中で心を惹かれたのは、やはり表題作と『少年と犬』の二編。
『世界の中心で愛を叫んだけもの』
非常に難解。一読では意味がわからず、丹念に読み返した。時間と空間が交叉する「世界の中心」から排出された狂気と愛が他の時空に影響を及ぼすという話。
『少年と犬』
要するに世紀末救世主伝説な世界ですよ。何が気を惹くかというと、落ちに尽きる。ブラック極まるのになぜか爽快。この読後感はたぶん男にしかわからない。ごちゃごちゃとメンドクセェ場合ってのは、あるわなあ。
しかし、本書で一番おもしろいのは訳者解説かもしれない。SF界きっての武闘派ハーラン・エリスンに関する逸話の紹介をちょっと抜粋。
・十歳くらいのころ、地元新聞の子供欄で小説を連載。
・SFにはまったのは十六歳ころ。しかし一方で手のつけられない不良でもあった。
・SF入門書を万引きしようとして説教されたことから、作家になることを決意。
・最初に売れた小説は「SF史はじまって以来の駄作」と評される。
・傲岸不遜な人物としてSFファンダムで名を売る。
・非行少年もの執筆のため、偽名を使って非行少年グループに潜入取材を敢行。
・兵役に出るも、反攻的態度で上官から目をつけられ三回も軍法会議にかけられそうになる。
・SF大会で初対面のアシモフに対し「なってねえなあ!」と言い放ったのはあまりにも有名。
・グッとガッツポーズしただけでヒューゴー賞四回。
などなど、まあとにかく破天荒な人物らしく、エピソードには事欠かないようだ。記憶に新しいところではターミネーター騒動もあった。設定が自作からの剽窃だと指摘し、ジェームス・キャメロンに詫び入れさせた事件ですな。
作品そのものより著者の人物像の方が楽しいという。日本で言えばそうね、岩井志麻子みたいなもんか。作風が永井豪でキャラが岩井志麻子?うん、いや、違った。岩井志麻子に敵するに能うバケモノはおそらく存在しない。
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