uruyaの日記: 月刊 J-novel 2008年12月号
月刊 J-novel 2008年12月号
注) 連載もののあらすじはそこまでのネタバレを含む。
主よ、永遠の休息を / 誉田哲也
鶴田吉郎は共有通信の若手記者。ケータイで記事を打ってメールで入稿したりする、イマドキの記者である。池袋署記者クラブに詰めて、警察発表を記事にするのが仕事だ。退屈な毎日を送る中、なにかおもしろい事件はないかと常に考えていた鶴田は、ぐうぜんコンビニ強盗の現場に出くわした。
芳賀桐江はフリーター。モニター恐怖症のためローテクな仕事しかできず、コンビニ店員などをしている。その日コンビニ強盗に襲われた桐江は、居合わせた客たちの活躍により事なきを得る。その中のひとり、新聞記者と、被害者としてちょっとした取材を受けることになった。
次の日桐江と再会した鶴田は、彼女の左耳にちょっと欠けたような傷があることに気づく。
白銀ジャック / 東野圭吾
第三回
パトロール隊では根津昇平、藤崎絵留、桐林祐介の三人が、脅迫の内容を知らされることになった。脅迫状に指定されている場所を調べると、たしかに時計のような機械が見つかる。
オヤジ・エイジ・ロックンロール / 熊谷達也
第六回
新生オレンジ・ブルーは学園祭でも大成功をおさめ、また、そのころには拓也と薫の関係は、公然のものとなっていた。しかし、学園祭を見ていた関係者からの申し出で、出演バンドのオーディションが行なわれ、薫と澤口だけが合格してプロの道へ進むことになると、薫は拓也のもとを去ってしまう。
蜘蛛の糸 / 石持浅海
国家転覆をたくらむ非合法組織に属する輪島の、今回の任務は、井駒美緒と交際することである。美緒は農学部の現役学生で、鹿畑教授が主催するNPO法人「緑の沃野」の重要な構成員。「緑の沃野」は最新の農業技術を啓蒙する活動を行なっており、特に無農薬農業に関して、合鴨や蜘蛛を使った農法のノウハウを持っていた。内部情報調査の任務を受けた輪島、久米、宮古の「細胞」のうち、輪島が美緒に接近し、彼女の口から情報を入手する役目を負ったのである。しかし不思議なのは、この任務が政府を倒すために何の役にたつのか、ということだった。
Don't stop the dance / 柴田よしき
第十二回
内野の話で、彼らが暮らしていた施設は焼失していることがわかった。あかね園は家庭的でいい施設だったが、事務長が変わったころから職員の質がわるくなり、こどもたちに懲罰などが科されるようになった。そんなとき、火災が起こり、園長と事務長が焼死したのである。内野がまだ小学生のころで、それ以降こどもたちは別々の場所で暮らすことになったのだ。
裏をとると、事情が見えてくる。あかね園の創業者田代郁太郎から事業を受けつぎ二代目園長になったのが、園内で田代の信頼あつかった岩佐園子。彼女が事故死すると、夫の岩佐秀一がその後をつぐ。それと前後し、事務長を勤めていた園子の義妹前山佳代子が罷免され、井上行男という男が後任になる。岩佐秀一、井上行男というのは土建屋で、おそらく福祉施設の経営などには興味がなく、土地売買で利益を得ようとしていたに違いない。そのふたりが焼死したのだ。
マンションにもどると、杉坂夫人が帰宅していた。久美は適当なことを言って居候していたようだが、夫人はそれが嘘だとうすうす気づいていたという。わかっていてなぜ、と俺が問うと、わたしたちは共犯者だから、と夫人は答えた。
東京から来た男 / 永瀬隼介
五ヶ月後に定年を控えた、しがない交番勤務警官小松隆二は、妻の英子につきあわされて郊外のショッピングセンターへゆく。駐車場に入ったところ、中国人らしい男が後部座席に乗り込んできて拳銃をつきつけ、カージャックされてしまった。主婦になる前は婦人警官をしていた英子は、拳銃にも臆せず、隆二と違い社交的ではつらつとしたところを発揮し、中国人青年と意気投合して身の上話をひきだす。
男は楊民波と名のる。三十二歳。婚約者の謝梨明を追って、新宿からわざわざこの田舎町にやってきた。謝梨明が消えたのは、中国人研修生制度という、現代の奴隷制度のためである。
蟻地獄の子 / 雀野日名子
大阪の学園都市に進学したわたしは、ふとしたことからアパートの隣人Kさんと知り合いになる。KさんはX県の出身で、姉の指示で大阪へ出てきたのだという。Kさんが育った土地では、そこで生まれた女は「土地の鎖」に縛りつけられ、たとえ死んだとしても逃れることができない。女は男衆に搾取され、過酷な労働を課せられて、だいたい三十三歳で死ぬ。そして、Kさんを逃がしてくれたお姉さんは、ことし三十三歳になるのだ。
同県出身の同級生にきいたところ、たしかにそのような噂がX県に伝わっており、「蟻地獄の集落」と呼ばれているらしかった。
Kさんは、勉強もアルバイトも積極的にこなして結果を出し、集落を出てはじめて知る「生」を謳歌する。それは「土地の鎖」から必死に逃れようとする姿だった。
翔る少年 / 乾ルカ
みしらぬ道路の上で、元は気がついた。額から血が流れていて、両手はまっかに染まっている。ハンカチをとろうとポケットを探ると、数枚の紙きれが手にふれる。家族をテーマに書いた作文だった。若くてきれいなあたらしいお母さんのことを書いた元を、お父さんはしかった。この書き方じゃ、あの人がかわいそうだろうと言って。
しばらく道なりに歩いていくと、徳洋記念緑地公園(時空翔)と名のついた広々とした公園に出る。碑には数多くの花束が捧げられ、ひとりの太ったおばさんが、その前で手をあわせていた。元の姿をみたおばさんは、あんぐりと口をあけてひどく驚いた様子をみせる。なにくれと世話してくれるおばさんから手当を受けながら、元は、お父さんたちといっしょに逃げたときのことを思い出していた。
徳川家康 / 荒山徹
第十一章 大坂冬ノ陣に臨んだ男(承前)
大坂の処分に発言権を得るために秀忠も出陣するが、すでに指揮権は元信ににぎられていた。大坂方の軍勢は、あるいは一蹴され、あるいは奮戦をみせるが、敗勢はかくれもない。そんな折、元信側から講和が持ちかけられた。宗矩は、これが晋州城の戦いで二次にわたる攻城戦がおこなわれたことの、見立てであることを見抜く。必ずや第二次攻撃が行われるにちがいない。そして秀忠は、詐術により裸城にされてしまった大坂城を見るにいたり、心を決める。家康の存在に対するインパクトを鑑みて控えてきた暗殺計画を、次の出兵時に実行に移すのだ。
一方の元信もまた、秀忠の暗殺を降魔衆に指示していた。
アリスメトリック! 算数宇宙の冒険 / 川端裕人
第七回
二回戦も勝利したが、あいかわらず空良はまったく役に立たない。そんな空良を、ユーキはなじる。やればできる子なんだからもっとがんばれ、という。ユーキは旧家の子で、大人になってもこの町から出られない。ほんとうは遠くにいきたいのに、行けない自分。なのに、自由なはずの空良がのほほんとしている。それがもどかしい。そういう感情が、ユーキの中にはある。いっぽうそのころ宝物殿にいた那由は、一冊の和算の本を発見して、めずらしくあわてていた。
じっちゃんが倒れた。大事はなかったのだが、それから元気をなくして寝込んでしまっている。じっちゃんは、お前に渡しておきたいものがあるといい、空良に鍵をわたした。父さんの机の鍵だ。鍵をあけると一冊のノートがあり、その内容から、父さんが算数宇宙杯の勉強をしていたことと、最近このノートに書き込んだものがいることがわかった。
そこにユーキが訪ねてきて、じっちゃんに古文書と写真をみせる。するとじっちゃんはみるみる元気を回復。そこには、綺羅寿司の製法に関する決定的な情報が示されていたのだ。
月光の刺客(ボランティア) / 森村誠一
第六回
実は串本は、奥が壮絶ないじめを受けていた中学時代、番長グループの参謀役をしていた男であった。番長を陰であやつってうまい汁を吸っていた男であり、奥にとっては仇敵である。潤子、クライアント、そして自分のためにも、徹底的にたたきつぶさなければならない。奥は自分をおとりにして、罠を張った。
本堂らは奥を襲撃した。串本は反対したが、本堂に押しきられた形だ。奥の罠は完璧に機能し、事態は警察の手にゆだねられることになる。アパートを襲撃した兵隊たちは逮捕され、本堂の関与も疑われる。父親の本堂政方はもみ消しにかかるが、インターネットにリークされ、マスコミの餌食に。暴力団との関係まで暴露され、最終的に本堂政方は失脚。本堂派は事実上解体することになった。親の威光を失った本堂は、もはや無力である。串本も親組織での勢威を失うが、こちらはまだ串本組の組長としての立場は維持している。
一連の報道を知った棟居は、ボランティアの手腕に舌を巻いた。
怖くない / 高橋克彦
素人芝居の仲間どうしの飲み会。私は歳をとることの功罪を語る。いいところは、小説の登場人物として、いろんな年齢層を書き分けられることだ。三十代の作家が五十代六十代の心理を描くことはむずかしいが、逆はたやすい。わるいところは、心の動きが弱まることである。特に私のようなホラー作家が困るのは、怖いという感情がわかないことである。怖いものがないから、ストーリーが浮かばないのだ。
そう話す私に、若い作家が言う。この芝居にかかわる失踪事件、あれ書いたらどうですか。
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『主よ、永遠の休息を』
ごめんなさい、著者の名前をまったく知らなかった。警察小説の新鋭だそうで。
『白銀ジャック』
登場人物はだいたい出そろったのかな?
『オヤジ・エイジ・ロックンロール』
なんだ、魔性の女じゃないんだ、ふつうに苦い恋の思い出じゃん。もっとドロドロしてないとものたりん。
『蜘蛛の糸』
久米、宮古、輪島と、「細胞」のメンバーひとりずつのエピソードが一回りしたけど、連作にするなら中編で締めるのがセオリーでは。どうなるのだろう。
『Don't stop the dance』
過去の事件が明かされてすこし見えてきたか。しかしまだまだ謎は多い。
『東京から来た男』
ごめんなさい、著者の名前をまったく知らなかった。ノンフィクションライターから転向、犯罪小説がテリトリーらしい。徐々にあかされる夫婦の人となりが興味をつなぎ、いままでくすぶっていた正義に火がつく、なんて展開もよろし。経歴に違わぬネタえらびもいい感じ。短編のせいか、人物造型が薄い気がするので、もう少し書き込んだ中編か長編で読みたかった。
『蟻地獄の子』
ごめんなさい、著者の名前をまったく知らなかった。ホラー作家で『幽』寄稿者。最後のオチ、書きたいことはわかるけど、こわさがあまり伝わってこないなあ。そこまでの経過が、いい感じで不気味なだけに、残念。
『翔る少年』
ごめんなさい、著者の名前をまったく知らなかった。新人ホラー作家。この短編は、ホラーというより幻想小説。多少土地鑑のある地名がでてきたので、すぐに題材はわかった。
『徳川家康』
今回はまともだな。晋州城冬ノ陣という非常に頭のわるい単語が出てきたくらいか。
『算数宇宙の冒険』
だから設定多いって!まだあるか。
『月光の刺客』
本堂が退場。奥VS串本の構図に変わった。普通におもしろい。
『怖くない』
それなり。大ベテランは安定感がある。
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