uruyaの日記: 江戸川乱歩全集 第10巻 大暗室
江戸川乱歩全集 第10巻 大暗室
★★★☆☆
怪人二十面相
近頃帝都は怪人二十面相の噂でもちきりであった。変装の名人で、正体はまったく不明。血を見るのが嫌いで、殺しなどは一切しない。高価な宝石などばかり狙って、現金には興味がない。そして、犯行前にはかならず予告状を送りつけるのである。
実業家羽柴壮太郎のもとに二十面相から予告状が届いた。氏の所蔵する、ロマノフ家宝冠のダイヤを頂戴するという。壮太郎は厳重な警戒をしくが、ダイヤはまんまと二十面相の手におち、さらに息子の壮二少年が誘拐されてしまった。秘蔵している仏像とひきかえに壮二の身柄を交換しよう、という提案が入ると、壮太郎は明智小五郎へ探偵を依頼することにした。しかし明智小五郎、このとき満州に渡っており留守である。かわりに羽柴家にのりこんだのは、明智の助手、小林少年であった。
大暗室
世界的旅行家有明友定男爵と親友の大曾根五郎、家扶久留須左門は海難事故にあい漂流した。熱病のため弱気になった男爵は、妻の京子を譲る旨の遺言状を大曾根に渡す。このまま全滅すれば意味のない遺言状であったが、しかし、彼らの乗るボートから陸地が見えたとき、それが大曾根に非情な行動をおこさせる契機になった。大曾根はもともと、男爵と京子を争った男である。恋に破れてからもつきあいを続けたのは、いつか復讐をはたすためであった。このまま陸地に上陸すれば男爵は病から回復し、京子も、財産も手に入らないではないか。大曾根は男爵を拳銃で撃ち殺し、久留須は海に転落して姿を消してしまった。
その五年後、有明男爵邸には友之助と龍次という兄弟の姿があった。友之助は友定男爵のわすれ形見。龍次は大曾根の子である。そこに現れた久留須は、大曾根の旧悪をあばきたてて糾弾。窮した大曾根は屋敷に火を放ち、財産を盗み取ったうえに龍次をともなって姿を消す。その火事で京子以下おおくの下僕たちが焼死するが、久留須は奇跡的に脱出をはたし、以後友之助は久留須の手ではぐくみ育てられることになる。
悪魔の子大曾根龍次と正義の騎士有明友之助の因縁は、以上のことに端を発する。彼らが相まみえるのは、それから二十年あまりのちのことであった。
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『怪人二十面相』
少年冒険小説作家江戸川乱歩。エログロ乱歩のもうひとつの顔だ。ついにジュブナイルシリーズがはじまった。怪人二十面相の初登場、少年探偵団の結成。当時の少年たちはむさぼるように読んだのだろう。その興奮はこどもの特権。大人になってから読んでもふーんとしか思えない。かなしいことだ。
大人むけ冒険小説作品だと、どうしても奇をてらったり趣向を凝らそうとする部分が見えかくれするんだが、こちらはこども向けだけに、単純明快勧善懲悪のシンプルなストーリー運び。そこがかえってよろしい。ごく軽い娯楽として楽しめる内容かと思われる。
北村想『完全版 怪人二十面相・伝』を原作にした映画『K-20 怪人二十面相・伝』というのが近く公開されるらしく、なんとなくタイムリーではある。観ないけど。
『大暗室』
異父兄弟の美青年が悪と正義にわかれて対決する。単純明朗。「大暗室」とは大曾根龍次のアジトで、帝都の地下に築かれた窖である。乱歩お得意の、パノラマ島的猟奇趣味と地下密室のネタ。プロローグ+三部構成で、なかなかのボリュームだが、物語構造が単純なために長さは感じない。三部といっても、要するに対決が三度あるだけだ。ラストシーンはなかなかよかった。
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