uruyaの日記: 独白するユニバーサル横メルカトル / 平山夢明
C10H14N2(ニコチン)と少年-乞食と老婆
たろうはあいさつのできるよい子です。おとうさんはゆうふくな社長で、おかあさんはいつもにこにこ微笑んで、最近うまれたおとうとを抱いています。しあわせな家族です。しかしたろうは、とつぜんいじめを受けるようになってしまいました。相手は市長のおめかけさんの子で、クラスメートもその少年に同調します。ハブられてひとりで帰るたろうは、こどもの死体がみつかったという池に迷い込み、浮浪者のおじいさんと知り合います。不思議なことに、おじいさんにはチンチンが二本ついていました。
Ωの聖餐
俺はオメガの世話をすることになった。糞尿にまみれ、ぬらぬらとした不潔な皮膚の、象のような巨体をもつ男だ。組で始末した人間の死体を食べるのが役目で、三日でひとつの死体を食べ尽くす。異形の生物であるオメガは、しかし、深い知性を備えてもいた。
俺の仕事は、オメガに供する死体を解体することである。今は組でこんなことをしている俺だが、最初からこの世界にいたわけではない。もともとは、大学で数学を研究していたのだ。
無垢の祈り
ふみは小学校でいじめにあっていた。教師たちも見ないふり。家では義父から虐待を受け、母親は宗教狂い。父親は二年前にガンで死んでいる。そんなふみの住む街では、連続殺人事件が発生していた。人間業とはおもえない膂力で被害者の肉体を破壊する犯人を、いつしかふみは崇拝するようになる。
オペラントの肖像
三次大戦を経験した人類は、人間とは誤りをおかす生物である、という結論に基づき、すべての人間に〈条件付け(オペラント)〉を施すようになった。スキナー省の支配下のもと、あらゆる生活習慣、規範、恋愛、嗜好などを徹底的に条件付けするのである。しかし、ある種の芸術が条件付けを打ち消してしまうことがわかると、スキナー省ではそれを「堕術」と呼び、愛好する「堕術者」ともども徹底的に追放した。その手足となるのが、特務機関オペラントである。
ある堕術者を調査していた私は、カノンという娘と出会い、ひとめで恋に落ちる。
卵男
私は卵男と呼ばれていたシリアルキラーだ。殺害現場でかならずゆで卵を食べたことからその名がついた。捜査官カレンの手によって逮捕され、死刑囚として収監されている。検事局は、まだ発見されていない被害者の遺体情報と、私の命とを取り引きするよう、カレンを通じてもちかけてきているが、私は彼らの言うことを信用していない。私のいる拘置所のとなりの房には、当局がわたしから情報を得るために派遣した、死刑囚をよそおうアンドロイド、205号がいる。
すまじき熱帯
十八年ぶりに再会した父親ドブロクは、いきなり「ヒロ、ひとを殺しにいかないか」と言った。東南アジアの奥地に、シャブの製造工場がある。そこの生産管理責任者、つまり精製したシャブをとりまとめて輸出する役についていた、呉という自衛隊あがりの男が、いきなり連絡がとれなくなった。何度も人を派遣し、ときには軍隊規模の部隊を潜入させるが、ひとりとして戻ってくるものはなく、呉は王国を築いた、という噂だけが帰ってくる。そこで組は、呉の首に一億円の公開懸賞金をかけたのである。
独白するユニバーサル横メルカトル
私は国土地理院発行ユニバーサル横メルカトル図法の、一介の地図でございます。地図の仕事というのは〈遮蔽〉と〈誇張〉、ほんの少し表現に強弱をつけ、人間の選択に影響を与えることでございます。お坊ちゃまのご先代はタクシーの運転手をしておられましたが、あるとき、口汚くののしって侮辱する女を乗せてしまいます。私が人気のない山奥へ誘うと、ご先代は女とともに車をはなれて奥へ踏み入り、しばらくのちにひとりで帰ってきました。それ以来、ご先代は私に印をつけるようになりました。不慮の事故により私がお坊ちゃまに受けつがれたのは、印が八つにまで増えたときのことでございます。
怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男
数字のカウントに対する強迫神経症をもつ男、MCは、拷問のプロである。多くのものが精神を崩壊させるこの職業で、かろうじて理性のかけらを保っている秘密は、夢にあった。MCは毎回おなじ夢を見るように固定化することができたのだ。いま見ている夢は、清浄な大自然の中、ログハウスでゆったり暮らす自分の姿である。
今回の獲物ココは、顔に無数の傷をもつ醜い女だった。いつもの獲物と違って自由な手足で入ってきたココは、怖がる様子もなく、ロマンスを求めて自分から来たのだ、という。
─────
これはいい。キチガイのキチガイによるキチガイのための、気の狂ったおはなし。
『C10H14N2(ニコチン)と少年-乞食と老婆』
「まともじゃない」感じがビシバシと伝わってくる。もしも連続殺人鬼が小説を書いたら、こんなものを書くんじゃないだろか。
『Ωの聖餐』
怪物、食人、数学者で三題噺、といった風情。徹底的にグロテスクな中でかわされる、知的な会話。すばらしく頭がおかしい。落ちも効いてる。
『無垢の祈り』
逃げ場のない閉塞状況から解放してくれる存在を求める少女。母親が宗教にはまりこんでいるのと、本質的にかわらないところがおもしろい。連続殺人鬼教の信者だ。
『オペラントの肖像』
ディストピアもの。きれいに落とした。おみごと。
『卵男』
これはイマイチ。なぜここに配置。別の位置のほうがよさげ。
『すまじき熱帯』
とんだ『地獄の黙示録』なわけだが、途中からぶっとんだ展開に。うはwwwラムちゃんwwwwwおっと、おもわず草が生えてしまった。とっても頭のわるい小説です。アホすぎる。
『独白するユニバーサル横メルカトル』
地図の一人称という異色作。おさえた語り口で、背後の猟奇事件をほのめかす。グロ分がなく読みやすくてよろしいと思われる。
『怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男』
ここまで読んできた、気が狂っていてグロテスクなお話の集大成。これでもかというほどグロ。痛い痛い。グロいグロい。頭おかしい。
最低最悪の読後感で、とてもよろしいんじゃないでしょうか。狂気が伝わってきます。おいしゅうございました。
独白するユニバーサル横メルカトル / 平山夢明 More ログイン