uruyaの日記: 夜光虫 / 馳星周
夜光虫 / 馳星周
★★★☆☆
加倉昭彦はかつてノーヒットノーランを記録したほどの速球投手だったが、肩をこわして以降は鳴かず飛ばず。戦力外を通告され、引退してはじめた事業には失敗し、女房には逃げられ、残ったのは莫大な借金のみ。台湾球界の誘いをうけ、技工派投手として復帰した加倉が、黒道(台湾マフィア)と接触し放水(八百長)に手を染めるのに、そう長い時間はかからなかった。
加倉には俊郎という弟分がいる。日本にあこがれて社会人リーグへ留学したことがあって、日本語ができ、加倉を兄のように慕っている。加倉も、両親の離婚により生き別れになった、実の弟のおもかげを俊郎に重ねていた。また、俊郎の妻である麗芬に、加倉は惚れていた。
その俊郎が、放水をめぐるトラブルに巻きこまれたことから、事件ははじまった。おぼっちゃんじみた正義感を持っている俊郎は、警察へ通報し放水を告発。台湾球界に蔓延する八百長の発覚は、一大スキャンダルに発展する。加倉は俊郎のなだめ役になるが、やがて自分が放水に関与していることを知られると、俊郎を自分の手で殺してしまった…加倉はそれから、底なしの泥沼に嵌り込んでゆく。
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馳星周といえばアジア趣味のノワール。ワンパターンという声も聞こえるが、読めばふつうにおもしろい。主人公がクソ野郎すぎてステキ。
台湾球界が舞台ということで、もうすこし内部事情に踏み込んだ描写があるのかな、と思っていたが、そこは正直期待はずれだった。球界あまり関係ない。丹念に描かれるのは暗黒街のほう。若くして黒道のボスに成り上がった徐栄一という男に、ずるずると取り込まれていく加倉の姿。場当たり的に殺したり脅したりしてるうちにどんどん身動きがとれなくなっていく。アホだ。
あと重要なテーマとしては家族相克(ふつうに読んでいったらすぐにわかるだろうから伏せない)ね。弟に罵倒される加倉のヘタレ具合といったら。マヌケだ。
そんなアホでマヌケな加倉くんが、俊郎殺してちゃっかり麗芬モノにするわけ。もうね、死ねばいいと思うよ。こんなド汚ねえウジ虫野郎の主人公はじめて見た。笑った。ふつうノワールを読む場合、悪と知りつつ主人公側に肩入れする感情がわくもんだが、一切おこらない。この主人公使って最後までおもしろく読ませるんだから、たいしたもの。変な感心をしてしまった。
あと、台湾は八百長だらけですよーなんていう書きかたして、怒られないのか。大丈夫か。
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